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昔のツイートの呪縛

映画の祭典、アカデミー賞授賞式が今年は約1ヶ月後の2月24日に迫っているが、司会者がまだ決まらない。何人かがグループで仕切るとか、司会者を立てずに行うかもという報道もある。いったんは昨年12月にコメディアン、ケビン・ハートが司会者として発表されたが、その直後に降板する騒ぎになった。

発表当初は「ずっと目標にしていた」と喜びいっぱいのコメントをしたケビン・ハートが降板せざるをえなかったのは、2009年から2011年、ツイッターやスタンドアップのジョークで、同性愛について差別的な発言を繰り返していたことが明るみに出たから。古いツイートを掘り起こされた直後には自身のSNSアカウントで、昔のことだし、自分は変わったと主張するビデオを投稿し、もう済んだことと押し通そうとしていた。ところが騒動がおさまらないと一転して謝罪し、司会を降りてしまった。

ケビンはコメディ界のスーパースターだ。インスタグラムのフォロワーは6800万人以上、ものすごい数のファンがついている。そもそも、視聴率を上げるためにファン層拡大に必死なアカデミー賞がケビンに司会を依頼したのもそれが大きな理由だったはず。依頼する前に問題になりそうな過去の発言チェックをしなかったのか、したけれどもこれぐらいなら大丈夫だと思ったのか。

#metooの動きで 、何年も何十年も前の犯罪行為が明るみに出て失脚する人が後を絶たない。犯罪行為が追及されるのは当然だ。犯罪・違法行為ではなくても、人を傷つけるツイートやジョークにも厳しい目が向けられている。

アカデミー賞授賞式というハリウッド最大のお祭りは晴れがましい舞台のはずなのに、司会を引き受けるタレントがいないという。過去の行動の一つ一つがチェックされ、不注意にしたツイートや、うっかり無神経なことをしゃべっているビデオまで掘り起こされてはたまらないのだろう。

ケビンが司会を降板せざるをえなかったのは、古いツイートが表面化したとき、時代が違った「昔のツイート」だ、と言い張り、謝らなかったからだという説もある。10年前、未熟だった自分のツイートとはいえ申し訳なかった、と誠意を込めて謝罪すれば事態が収拾できたのかどうか。

過去の問題発言が無いことがアカデミー賞の司会に課せられた条件(の一部)なら、他の場合はどうなのだろう。アカデミー賞授賞式の司会ほど注目される存在でなければいいのか。あるいはさらにもっと注目を集める重要な立場に置かれることになったらーーたとえば、極端な例だが、アメリカ大統領選挙に出馬しようと思ったら。

アカデミー賞の話から飛躍するようだが、来年秋の大統領選挙にむけて立候補を表明している野党民主党の政治家たち、何人かが既に、かつての発言について釈明や謝罪を迫られている。ハワイのトゥルシ・ガバード下院議員は、出馬を表明した直後に、過去、同性愛者の権利拡大に反対してきたことを謝罪した。

大統領選挙どころか、あらゆる選挙に打って出る際には、あるいは大きな舞台に出る際には、以前の不注意なツイートや無神経な発言すべてが人目にさらされるのを覚悟しなければならないのが現状だ。ツイートやビデオは削除しても、必ずどこかに残っている。

参考にしました


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