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おいしく生きるヒントになる本、5冊

あっという間に2月。年始に抱負をたてたわけではないものの、私は相変わらず食、料理に関する本を続々と読んでいます。最近は図書館でたくさん借りているため、貸出期限に追われるように、あるいは追い越されながら(ダメ)もりもりと、黙々と。
4冊の食エッセイと、毎年バレンタイン頃に手に取る本について書きました。


1.『日々ごはん➀』/高山なおみ


高山なおみさんの日記。高山さんってどなた?という人も、どうかあまりググらずに読んでみてほしい。もちろん私もお会いできたことはないけれど、きっと下の一文が放つオーラが高山さんをよく表しているのでは、と勝手に妄想。

軽い二日酔いだが、さわやかに起きました。けどもう二時だ、晴れ渡っている。

2時に起きても動じない、強い心の持ち主。

本書は2002年の2月の日記から始まるので、19年前の様子ではあるけど、読むうちに、東京の西側で日々せっせとごはんを作っている高山さん像が、うかびあがってくる。

本を作ったり、何か作品を作って表現することももちろんすンばらしいのですが、日々を過ごし重ねてゆく日常の中には、とんでもない密度で何かがつまっている。(あとがきより)

今もブログが更新され続けている。私は、たまに読んでは救われたような気持になっている。ちょうど味噌汁を一口飲んだ後みたいな感じ。


2.『かぼちゃを塩で煮る」/牧野伊三夫


牧野伊三夫さんという画家の方の、食エッセイ(と、いう風に本を分類して簡単に説明してしまいがちだけど、本当はそんな簡単に分けられるものじゃないよ、と思っている頑固おやじみたいな自分もいる)。

編集者・鈴木るみこさんの言葉を借りれば、牧野さんの「個人的ごちそう」が次から次に出てきて、お腹がへる本とはまさにこのこと。

私は先日、健康診断のため朝食抜きでクリニックに向かっていて、電車の中でこの本を読んでいた。あまりの空腹に眩暈がして、ふらふらしながら到着し、血を抜かれ、一層ふらふらし、夕方までずっと頭痛が続いた。
何が言いたいかというと、つまり、それくらいの強い空腹をもたらす本なので、タイトルのゆるさには油断なされぬよう。


3.『聡明な女は料理がうまい』/桐島洋子

図書館ではじめにタイトルを見たときは「わたしはそんなに立派な料理できないし、聡明な女でもないし」といじけたけど、桐島さんの明快&洒脱な文章を読んで、変な力が抜けた。

今の時代、ジェンダー要素のある話はとても緊張感を伴う(と私は感じる。)でも、そもそも料理とか家事が「女子力」なんてことはないので、もっと性別関係なく話されるようになっていくといいな、と思う。

ともかく、台所仕事はわずらわしいものであってはならないのである。のべつくまなしにつきまとうシガラミとしての台所仕事に、創造の喜びはない。シガラミをバッサバッサと断ち切って、自由な人間として、みずからの意欲で積極的に料理を楽しんでこそ、ゆたかな収穫も望めると思う。

凛々しい文章だなあ…


4.『コーヒーと恋愛』/獅子文六

ちょうど去年のバレンタインシーズンに読んでいた本。買ったのは、そのさらに1年前のバレンタインの頃。

著者の獅子文六(しし・ぶんろく)さん。変な名前だナーと思ったけれど(失礼)NHK連続テレビ小説の1作目「娘と私」の作者だと聞いて驚いた。

そんなわけで、『コーヒーと恋愛』もずいぶん昔の本で、インスタント・コーヒーがこれから流行ろうかという時代。

出てくるカタカナ言葉が、今からすると少し変わっていて
「キリマンジャイロ(キリマンジャロ)」
「マトラス(マットレス)」
「ハンケチ(ハンカチ)」などなど。
読んでいるうちに少し言葉使いがうつッてしまう。

初めての場所になぜか落ち着く、昔ながらの喫茶店にいるような心地になれる本。そしてユーモアもたっぷり。甘ったるいバレンタインの雰囲気にやや苦しくなった人にこそ、いいのかも。ぜひコーヒー片手に。


5.『職業としての小説家』/村上春樹


最後に村上春樹さんのエッセイ。長年小説家として活動してきた村上さんが、時間について、メンタルと身体の強さの関係について、オリジナリティについて、などを語ってそのいる本。その考察が深い深いところにある普遍性に到達していて、小説家という存在に興味がない人にとっても、希望の光のように感じられる記述がたくさん出てくる。

これも自分自身の経験から言いますと、すごく単純な話ですが、「それをしているとき、あなたは楽しい気持ちになれますか?」というのが一つの基準になるだろうと思います。もしあなたが何か自分にとって重要だと思える行為に従事していて、もしそこに自然発生的な楽しさや喜びを見出すことができなければ、それをやりながら胸がわくわくしてこなければ、そこには何か間違ったもの、不調和なものがあるということになりそうです。

ごはんの本ではないけど、’おいしく’生きるヒントは多い。


・・・・・

こうやって食に関する本を中心に読んでいると、いかにこの「食・料理」に関する書籍の幅が広いか思い知らされる。レシピ本、食エッセイ、食事法・・・。書店によっても、エッセイの棚にあったり、暮らし・実用の棚にあったり、境目を迷子になっている本は多い。

この「食の本のカオスワールド」についても、自分なりに深ぼってみたいと思う今日この頃。







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