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北緯43度のSapporoにやって来てもう50年になりました。1972年の冬季オリンピ…

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北緯43度のSapporoにやって来てもう50年になりました。1972年の冬季オリンピックからこの北の街に住んでいることになります。いろんなことを経験しいろんな思いを持ちながら生きてきました。その一端をここに記していこうと思っています。

最近の記事

『ガンプロ』            ~みんな!今年はガンダムつくろうぜ~

<あらすじ>                                 新型インフルエンザが流行した2009年。中学校生活最後の夏。私の学級の40人の生徒たちは昨年叶わなかった学校祭での演劇発表の為にほぼ一年をかけて準備を続けて来た。しかしその準備が結局無駄になってしまった。最後の学校祭を何とか思い出に残るものへと考えた結果……。最後の学校祭へ向けた生徒たちの活動を思い出すたびに、私はいつもずいぶんと昔に聞いたはずの、あのドストエフスキーの言葉を思い出してしまうのです。

    • 『天使のスクリーン』

      あらすじ:  二度の世界大戦を終え、経済的な繁栄だけを大切にした地球の各国は自らの繁栄富国のため、自然環境への配慮を二の次にして経済活動に邁進してきた。その結果として現れた温暖化現象や環境破壊をも他国の原因と糾弾し、自らは対策など取ることなく過ごしていた。  温暖化が原因とされる異常気象に襲われることさえもが常態化していた20XX年のある時、そんな「地球の危機」をすべて解決してくれるという宇宙人Mが現れたのである。その宇宙人Mがとった政策というのが……。     「天使のス

      • 「祖父の死んだ日に階段を上って来たものは」 

                   あらすじ:  今からもう50年以上も前のこと。私が小学校6年生の時に祖父は亡くなった。2年生の時までは一緒に暮らしていた祖父からはいろんなことを教えてもらい、いろんなところに連れて行ってもらった。そして一緒に遊んでくれた。そしていろんなところで遊ばせてくれた。  北海道の積丹町に生まれ岩内町で育った私が、海に山に遊び、周辺の町であるニセコ町なども含め、今でも強烈な印象に残る思い出の場所には必ず祖父の姿が一緒にあったのだ。積丹ブルーの海への道も、パウダー

        • 「南風の頃に」第3部  6全道大会(後編)

          田上先生がいつも以上に興奮した早口になっていた。ただでさえ分かりにくいしゃべり方をする田上先生なのにと沼田先生は思っていたが、彼はそんなことは気にする人ではなかった。 「ヤバイね沼田さん! あの子、川相さん? ちょっと覚醒してしまってないかい? あそこでパスするなんてさ……どっちの指示なの? 沼田さんかい? 悦ちゃん?」 「田上先生、声が大きすぎますよ。みんな振り返ってますから。ゆっくり、落ち着いて」 「いやー、悦ちゃんさ、ちょっと落ち着けないよー、あのジャンプ凄すぎでし

        『ガンプロ』            ~みんな!今年はガンダムつくろうぜ~

          「南風の頃に」第三部         5 全道大会(前編)

           祖父の葬儀を終え、一週間ぶりに学校に行くと、早くも学校祭の準備を始めている学級が増えていた。まだ一月ほどあるのに学級ごとの企画が生徒会本部から伝えられ、それぞれの学級では準備段階に入っていた。僕の学級では「やりたがり部」とか「あそ部」と自らを称する10名ほどが中心になって全員参加の楽しいことを考えているらしい。 僕はそういうことにはあまり乗っていけない性格なので、去年と同じように誰かの喜んでいる姿を見ているだけの学校祭になりそうだ。そう思っていると、武部が有志でステージに出

          「南風の頃に」第三部         5 全道大会(前編)

          「南風の頃に」 第三部        4 そして……

           野田琢磨の踏切が鋭くなった。助走スピードを上げてもつぶれなくなったタクの高跳びが安定感を増してきた。 札幌地区大会三日目の男子走り高跳びは予選が1m70㎝に設定され、これも女子と同じように設定の低さを感じさせるほど突破者が多くなってしまった。 冬季間にバスケとバドミントン部に鍛えられたタクの動きがシャープになったと言われていた。スラムダンクは達成できなかったが踏切の強さは変わっていた。相変わらずベリーロールにこだわっていても踏切るまでの助走のリズムが速く鋭くなっていた。その

          「南風の頃に」 第三部        4 そして……

          「南風の頃に」 第三部       3 札幌地区大会第二日目

          札幌地区大会の二日目が始まった。 「私は昨日ベストに近いの跳べたから、あとは智子に任せるからね。頼むね!」 山野紗季はこの日に行われる走り高跳び予選を棄権した。 混成競技と単独種目とを掛け持ちするのは難しい。特に今回は同じ日に重なってしまい、五種目目の走り幅跳びとも時間が一部重なってしまった。でもそれ以上に山野紗季は七種競技にハマりかけていたかもしれない。  幅跳びは今まで体育の時間でしか経験はなかった。春からのわずかな時間でノダケンと一緒に助走練習を何度も繰り返してきた

          「南風の頃に」 第三部       3 札幌地区大会第二日目

          「南風の頃に」           第三部 2 高体連札幌地区大会

           サブトラックの白線がクッキリと浮かび上がり、やわらかな日差しが漸くあたりを照らし始めた。6月を迎えたばかりの厚別競技場の上空には薄い雲が広がり、行楽日和を喧伝したテレビの天気予報とは違っていた。8時を過ぎるころからやっと青空がのぞき始めたところだった。高校総体札幌地区予選の初日を迎え、南ヶ丘高校陸上部は新入生の12人を加えて総勢31人による一年間の始まりの日となった。 卒業した大迫さんや山野憲輔さん、そしてオランダへと帰ってしまった隠岐川さんが抜け、坪内キャプテンを中心とす

          「南風の頃に」           第三部 2 高体連札幌地区大会

          「南風の頃に」 第三部   1・覚 醒~陸上部強化大作戦~

          9月中旬に行われた全道新人陸上で、中川健太郎は1500mを4分4秒34で三位になった。小椋高校の外国人留学生が3分台の記録を出し圧倒的に速かった。 何年も前から駅伝を中心に活動しているこの高校では、外国人留学生としてケニアやエチオピアといった長距離王国から高校生の年代の選手を留学生という形で「輸入」していた。日本国籍を持たない彼らの力は記録として残るよりも、勝負としては学校の名を高め、本人たちも恵まれた環境とその後の生活の安定を約束される。受け入れる高校側はその突出した力

          「南風の頃に」 第三部   1・覚 醒~陸上部強化大作戦~

          「南風の頃に」第二部 10川相祥子

          「お前なんでそんなミニスカなんだよ! 普段そんな格好してないだろ!」 「学校じゃないんだからいいじゃん。たまにはこういう格好するのも気分転換で良いんだよー」 「そんなのお前、父さんとか智子とか黙ってるわけないだろう!」 「あのねタケベー、私はあんたの彼女でも何でもないんだからね、そんなことまで言われる必要ないでしょ」 「お前と、いやお前たちと俺はさ、小学校の時からずーっと一緒にいただろう! 家もすぐ近くだしさ、お前となんか小学校から連続4年間も同じクラスだったんだぞ。だからよ

          「南風の頃に」第二部 10川相祥子

          「南風の頃に」第二部 9 悦子と恭一郎

           北園高校での書道パフォが行われた土曜日は、南ヶ丘も清嶺高校も練習を休みにしたので上野悦子と沼田恭一郎夫妻は久しぶりに自宅で昼食をとっていた。 上野監督の清嶺高校は部活動を熱心に推し進める学校方針のもと、たくさんの運動系部活動が全国大会目指して活動している札幌では珍しくなってしまった女子高だ。バスケットボールにバレーボール、バドミントンや水泳、空手なども毎年北海道大会で頂点を争っている。その中で陸上部は長距離を中心とする選手が多かったのが、上野悦子が赴任した5年前からその他

          「南風の頃に」第二部 9 悦子と恭一郎

          「南風の頃に」第二部  8 中鉢誠子 

           川相祥子に勧められた『書道パフォ』の日、野田賢治が武部と川相智子と三人で北園高校体育館についたのは午後1時過ぎのことだった。大きなカメラバッグの中に二台もの一眼レフカメラと大口径レンズを詰めこんだ武部は、筋トレ中のヤセすぎ君の表情をしていた。地下鉄の階段を駆け上ったまでは予定通りだったけれど、三人とも初めての街並みに道順が分かっていなかった。スマホのアプリを睨みながらやっとたどり着いたときには電車を降りてから30分以上も経っていて、1時開始に遅れてしまった。 住宅街と商店街

          「南風の頃に」第二部  8 中鉢誠子 

          「南風の頃に」第二部 7 山野紗季

          山野紗希が珍しくバーを越える練習をしている。いつもは踏切から跳び上がるところまでなのに今日はマットを敷いてクリア練習を熱心にやっている。札幌地区新人戦が近づいて練習の質が変わってきた。いや、練習だけじゃなく、彼女の表情もいつも以上に真剣に感じた。彼女は全道大会で南ヶ丘唯一の全国大会出場資格を得たのだが、全国大会にはいかなかった。上野先生が自分の高校の選手と一緒に引率できるからと翻意を促しても、彼女が一度決めたことを変えるはずはなかった。 「こんなんで出てもしょうがないから。

          「南風の頃に」第二部 7 山野紗季

          「南風の頃に」第二部 6 高松 恵

          「おれさ、新聞部に入ることにした。」 ついこの間テニスの全市大会で活躍できなかった話を教室中にバラまいていた武部がそう話し始めた。 昼休みの教室は慌ただしく人が動き周り、昼食を長い時間かけて食べている女の子達が車座になっておしゃべりに夢中になっている。弁当を食べているのかしゃべっているのかわからないくらいに盛り上がっているいつものメンバーだ。僕の弁当は3時間目が終わる頃にはなくなっていて、さっき武部と一緒に購買で買ったコロッケパンを食べ尽くしたところだ。牛乳の白さをまだ口の周

          「南風の頃に」第二部 6 高松 恵

          「南風の頃に」第二部 5・マンナン

          「あそこ、行ったことある、僕、道案内する」 相変わらずのET言葉を発しながら、珍しく張り切って前を歩いていた健太郎のスピードが落ちた。いつの間にか戻ってきて三人の後ろに隠れるようにしている。みんなが健太郎を振り返るのと同時に声がした。 「オーオ、ナッカガワー、じゃーねーのー」 妙に間延びした、喜びとも驚きとも思えるねばっこいしゃべり方だ。 前に視線を戻すと、両手をポケットに突っ込んで、紺のブレザーの前をだらしなく広げた二人の学生がいた。かかとを踏みつぶした黒の革靴。生え始め

          「南風の頃に」第二部 5・マンナン

          「道産子太郎と花子のジジババ放談」

          「一億総白痴化現象」 太郎:さてー、2回目の「ジジババ放談」ですけどもね、なんか今年が始ま      ってすぐに能登で地震が起こってしまってねー、もう大変な始まり方    だったよねー。 花子:いやー、もうホントにねー、被災地の方たちにはなんて言っていいか    わからないですけど……、お見舞い申し上げます。としか言えなく      て、何にもしてあげられないものねー。 太郎:北陸地方もしっかり雪降るところだからねー。国全体としてさ、何と    か手を尽くして欲しいよね。

          「道産子太郎と花子のジジババ放談」