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創作大賞2024 エッセイ部門「僕の職場のレノンおばちゃん」

みなさまお暑いなか、
毎日お仕事お疲れ様です。

お仕事お疲れ様なのは、
身体的な疲れだけじゃないですよね。

というかむしろ、
精神的な疲労の方が疲れるな~
重くのしかかってるなぁ~
って感じてる人の方が多数ではないでしょうか?

もちろんみなさまの職場環境や
そこでの人間関係、
さまざまな本音は分からないですが、
少なくとも僕は今まで振り返ってみると、
職場の人間関係での
精神的負担の方にお疲れするタイプかなぁと思いました。

「仕事なんか辞めてやる!」

そう毎日夕焼けに向かって
捨て台詞をはいては、
翌日は何ごともなかったかのように
また朝日に向かって出勤していた日々を思い出します笑

でも、
そんな気疲れのある職場でも、

「はぁ~!働くっていいな~」

「もうほんとに有難いなぁ~!」

なんて、
仕事でしか感じられない体感もたくさんありました。

そのなかでも、
楽しかったり、
不思議だったり、
お~ぉ新人類!とも呼べる、
愛すべき同僚たちにも出会えたことは大きかったと思います。

そこで今日は、
僕の心に残っている職場のおばちゃんを
ご紹介していきたいと思います。


(ケース1)靴屋さんのおばちゃんスタッフ

僕が大学時代にアルバイトしていた靴屋さんでのお話。
50代くらいの丸々太ったおばちゃん。

ジョンレノンのようなまあるいメガネを、
まん丸のおめめにかけて、
加えてお顔タプタプ、
お肌プルプルでフワフワパーマ。

初対面ではいわゆる癒し系?おっとり系?と安心するような印象を受けた、
レノンおばちゃんのお話。

バイト初日のこと。
「初めまして~です。今日からよろしくお願いします」と挨拶をすると、

まあるいレノンおばちゃんは
「あら学生さん?奇遇ね、私も学生よ」

「えっ…あ、そうなんですか?」

こちらがキョトンと首をかしげていると、

「おばちゃん大学です~!なぁんちゃってね」と手をたたいて大爆笑。

「…あ、はい」

(お、おばちゃん大学…)

若い僕は意味が分からず、かしげた首をさらにかしげて、観覧車のように一回転しそうだった。

「もう~ジョーダンよ!マイケルジョーダン!こんなおばちゃんでご迷惑なさいね」などと言って1人でさらに爆笑。

「緊張しないで早く慣れてね。気持ちの靴ずれおこさないように、なんかあったらいつでも聞いてね」

レノンおばちゃんは笑顔で言って、
手を振って接客に入っていった。

自虐ネタだったんだ…
あとになって気付いた。

いや、ちょっと言い訳をさせてください!

勘違いしてほしくないのは、
僕は真面目な堅物では全然なくて、むしろ真逆で、なんならレノンおばちゃんと同じ性質の人間だと思っています。

僕もお笑いが好きで、漫才も好きで、
ジョークも言葉遊びも好きなんですけど、
まさか!
まさか、バイトの初日のそれも初対面で
こんなネタをぶっこんでくるとは思わなかったのです~。
だから全く反応が出来ず、首を観覧車にするしかなかった。

また、レノンおばちゃんのまあるい安心するような容姿からも、まさかこーんな自虐ネタや、ジョンレノンからマイケルジョーダンが出るとは思わなかったのだ。
まさに反側技、バスケならダブルドリブルだ。


次のバイトの日に行くと、
レノンおばちゃんはいなかった。
聞いたところによると、
前々から退職は決まっていたらしかった。

一期一会。
レノンおばちゃんは、
きっと最初で最後になるであろう出会いを大切にしてくれたんだ、と感じた。


だから、僕の中には後悔があります。
30を過ぎた今なら、
きっともっとうまく乗れたと思う。

レノンおばちゃんがしたかった一期一会を、僕も同じ波長で形にしたかった。

一緒にあの時出来なかった返しを、
今返してあげたいと思う。


「おばちゃん大学です~!」
「僕もおばちゃん大学です!」

「おばちゃん大学です~!」
「浪人したけど落ちました!」

「おばちゃん大学です~!」
「何学部ですか?どこキャンパスですか?」

「おばちゃん大学です~!」
「母も同じ大学です!」

他にもたくさん思いつくのに、
あの時は…

レノンおばちゃん…
僕はあなたの気遣いが嬉しかったです。
とっても嬉しかったです!!

時間は戻せないけど、
あの時、あの瞬間に言えなかったことを、
今ここに書いて、
あの日のあなたへ送ります。

あなたのおかげで、
あのあともバイトが楽しくなり、
職場の人間関係も
靴ずれを起こしませんでした。

あなたが、心の靴ベラになってくれました。


レノンおばちゃん、元気にしてますか?

僕もあなたと同じくらいになったら、

「おじさん大学です~!」
って、アハハと笑って言えたらと思います。


おばちゃん大学教授
愛しのレノンおばちゃんへ


※次回は、ケース2の愛すべき同僚をご紹介します


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