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のらねこ日記 ⑱

通り道の猫たち part2

  今回は、通勤途中で出会った2匹の猫の話をします。

  職場の敷地内に路線バスのバス停があり、そこには小さな待合所がありました。
  ある冬の日、そこに1匹の猫が現れるようになりました。
とても人懐っこい子で、なでても全然平気で、人がベンチに座っているとその膝に勝手に乗ってくるので、『この子、人で暖をとっているのか?』と、思いました。
  そんなある日、若いお嬢さんがその猫をかまっていました。猫をなでようと、彼女がしゃがむと、猫は、待ってましたとばかりに、彼女のひざにのりましたが、彼女は「キャッ!」と悲鳴をあげ立ち上がりました。真っ白いコートを着ていたので…。
  冬が終わる頃、その猫も姿が見えなくなりました。

バス停の子

  あの子は、最寄駅に程近い坂の上の高級住宅地にいました。
  青い瞳でふさふさの長い毛で可愛らしい顔の、どう見てもお高い猫でした。今思うと、ラグドールだったのかな?
  とにかく、外をフラフラ歩いているような猫ではありませんでした。
『うっかり、外にだしちゃったのかな?』『あんな高そうな猫、盗まれちゃうよ。』なんてことを思いながら、試しに近寄ってみたら逃げられました。
  それからも、時々あの子を見かけるようになりました。住宅のブロック塀の上にいたり、ガレージの車の下にいたり…
  そしてあの子は、少しずつ小汚なくなっていきました。長い毛の下の方が固まってぶらぶらしていました。
   見かけるようになる少し前に、引っ越したお宅があったので、『もしや、あの子は、置いていかれてしまったの?』などと勝手な想像をして悲しくなりました。
  雪のちらつく頃、あの子姿は見えなくなりました。『きっと、いい人に拾われてんだ』と、無理矢理自分を納得させました。
  まだ、保護猫とか地域猫などという言葉がなかった頃のお話です。

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