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ちょっと聞いて~-母と向き合う私のものがたり-

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認知症が進む実母と奮闘する毎日。 幼い頃は憧れだった母の姿。老いてゆくことは当たり前のこと。いつかは来ると覚悟はできていたつもり。私もゆく道なのだから。怒りたくない、理解してあげ…
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2022年7月の記事一覧

NO.10『事件その2「凶器は隠して…」』

前回の事件の後、また事件が起きました。ドキドキしたけど、これまでとは少し違うふれあいが出来たような…。 いいふれあいって何だろう。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 そして、前回の事件から幾日も経たないうちに第二の事件が起こったのだ。その日は私も母も休みで家にいて、主人だけが出勤だった。朝から自分の部屋で何かしていた母が大きな荷物をいくつか抱えて恐ろしい表情で2階に上がってきた。「まったく、全部何にもなくなっちゃうんだから!」と大きな声で怒鳴っている。見ると片方の手に園芸で使う

NO.9『事件①“散らかった部屋…”part3』

前々回からの続き。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 翌日、何事もなかったかのように朝を迎えた。昨日のことを母はどのように思っているだろうか。忘れているのだろうかと思ったが、少し衝撃的な事件だったので、母と話すときもそのことには触れないでおこうと思い、私は腫れ物にさわるかのような優しい言葉かけを意識した。母はいつもと変わらない様子で起きてきたが、会話の中でふと思い出したように「あの人にお詫びにいかなきゃ」と昨日お世話になったおばちゃんのことを言ったので、覚えているんだなと思った

NO.9『事件①“散らかった部屋…”part2』

前回の続き。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 その人は民生委員さんを長年されていた方で、現在もお年寄りが日中遊びに来るようなサロンでボランティアをされている。あの人なら何か力になってくれるかもしれないと思い、嫌がる母を引きずるようにそのお宅まで連れていった。玄関に出てきてくれたおばちゃんに事情を話すと「あらお母さん、どうしたの?少し私とおしゃべりしようか?うちでお茶でも飲んで行かない?」と優しい言葉をかけてくれた。その言葉に私自身が癒され、すごく救われた気持ちになったが、母は

NO.9『事件①“散らかった部屋…”part1』

梅雨に入りジメジメした日がつづくとなんとなく気分も重くなる。それに加え母との毎日は事件だらけ。 こんな事件がありました。長くなったので3週に分けて。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 先日、母と向き合うようになってから最大の事件が起きた。母が2泊3日のショートステイから帰ってきた日のことだ。今思うと迎えに行った時から少し様子がおかしかった気もするが、今までもあまり機嫌よく帰ってきたことがないのと、ステイでの記録にも割と落ち着いて過ごせたと記載されていたので気にも留めていなかった

NO.8『混乱』

日々変化する母の様子。過去と現在がごちゃごちゃしちゃう感じ。どんな感じなのだろう。 こんな事がありました。ちょっと聞いて~。 へっぽこ娘 その日母は、デイサービスから帰ってくるなり玄関で大きな声で私を呼ぶので、慌てて下りていくと、スタッフの方が待っていて、「今日は少し混乱しているようなので、お伝えしておきますね」と耳打ちして帰られた。母を見ると何かを恐れているような表情で「○○さんがね、トイレに行ったまま帰ってこないのよ…」と心配そうにそう言った。部屋に入るとベッドの上に

NO.7『覚悟』

母と共に歩む毎日。向き合うのは母だけじゃない、周りの家族とも色々ありまして。 こんな事がありました。ちょっと聞いて~。 へっぽこ娘 母にとって私は二女で、長女の姉と長男の弟がいる。二女の私が何故母と同居しているかと言うと、それなりの事情があってのことだ。それを書いていると長い話になるので割愛するが、それぞれの配偶者も含めて姉弟はとても仲が良いことだけは伝えておこう。高齢になった母のことも姉を中心に3人で相談しながらここまできている。姉家族も弟家族も私が仕事などで大変なとき

NO.6『イライラメーター』

なるべく穏やかに、優しく、温かくって思うけど…。 私のイライラメーターが段々と上昇していくのを感じたある日の出来事。こんな事がありました。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 その日はケアマネさんの訪問日だったので、午前中30分ほど仕事を抜けさせてもらい、母の近況を報告した。デイサービスが休みだった母も楽しそうに話に加わり、イイ感じだったのだが、午後になると母は「私は何もやることがない」と言い出した。「テレビでも見ていたら?」と言って私は仕事に戻ったが、少しすると「縫い物をしよう

NO.5『骨折 part3』

前々回からの続き。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 3日くらい床に敷いた布団で寝ただろうか。4日目になったら今度はもうあの部屋に行きたくないとまで言い出した。そればかりか、今度は久しぶりに箪笥を動かしてほしいと言い出したのだ。本当にいい加減にして!と思ったが、それを聞いて思い出したことがあった。 母は以前からしょっちゅう部屋の模様替えをしていた。認知症が進み始めた頃は西側の出窓から誰かが覗いているとか誰かが入ってくるとまで言い、その出窓を隠すように箪笥を配置したり、数日でま

NO.5『骨折 part2』

前回の続き。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 そんな中、その後の状態を心配してくれたケアマネさんに母の状況を報告すると、部屋に置ける自立式の手すり、杖や歩行補助具などがレンタルできるというカタログを見せてもらい、レンタルベッドもあることを教えてくれた。足を痛めた母が一番大変だったのが布団から起き上がることだったので、まず思ったのがベッドだった。 でも実はこのベッドには私の苦い思い出があった。同居して間もない頃だったと記憶しているが、母に「これからはベッドの方が寝起きも楽だし

NO.5『骨折 part1』

母が骨折した日。非日常の出来事が日常に溶け込んでくる。過去の苦い思い出も引きだされたり。長くなったので3週に分けて。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 昨年末、母は夜中に布団の上で滑ってしまい、次の日足の痛みがひどくなり歩けなくなってしまった。高齢者は足の骨折から入院して寝たきりになり、そのまま施設入所となることが多いと聞いていた私は「母にもとうとうこの日が来てしまった」と思った。まずは医者に診せなければと病院を探すと同時に、それよりも歩けない母をどうやって連れて行けばいいのか

NO.4『夢』

ゆく道だからと思っていても、優しくできたり、鬼のようになってみたり。母の事が理解できず悩んでしまう毎日。そんなある日、いつもと少し違う形で、母の事を知れた気がした。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 なかなか寝つけなかったある晩、おかしな夢を見た。広い大きな公園でたくさんの人がお弁当を食べたり遊んだりしている。私は何故か姉と長男(夢の中では7~8歳くらいだった)と一緒に何人かのグループで来ていて、時間になって集合場所に戻ろうとしていた。屋外だというのにみんな靴を脱いで遊んでいて

NO.3『記憶』

仲のいい人、大切な人…。ずっと忘れない、忘れたくない。 でも、忘れてしまったり、時々思い出したり。認知症の母はどんな景色がみえているのかな。こんな事がありました。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 母には少し年下のお友達がいる。コロナ禍以来会えなくなったが、母を心配しよく電話をくれる人だ。母がしっかりしていた数年前は今とは逆で、母がいつもその人の生活全般の心配をして電話をしたり、時には会いに行ったりして色々な面で心を遣っていた。その恩も感じてくれているようで今は結構な頻度で電話

NO.2『セーター』

欲しいものが買えた時って、ウキウキと嬉しくなる。 そんな気持ちはいつまでもあるのかな。お買い物大好きな母。 こんな事がありました。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 9月のある日、町会から敬老のお祝いが届いた。地域で使える商品券がたった一枚。 町内のお年寄りの人数を考えると妥当な金額なのかなと思った。数日後今度は社会福祉協議会から米寿のお祝いが届く。少し多い金額の商品券で母は大喜び。「これで何か買ってもいいんだよね」と何度も私に確認する。認知症が進んでから不安なのか、何でもいち

NO.1『リモコン』

物忘れ?私もしょっちゅう。母の事言えないけど…。 大事にしている物ほど無くなっちゃうのよね。段々と寒くなってきたある日のこと、こんな事がありました。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 「ちょっと来てくれる?」と呼ばれ夕飯の支度の手を止めて、1階の母の部屋へ降りて行くと「これが全然つかないのよ」と指差す先にはテレビが。近頃ではテレビという名称すらすぐには言葉に出なくなった母。またかと思いながらコンセントを確認するとやはり抜いてある。「これじゃ付かないよ」と言いながら差し込み「リモ