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NO.5『骨折 part3』

前々回からの続き。ちょっと聞いて~

へっぽこ娘

3日くらい床に敷いた布団で寝ただろうか。4日目になったら今度はもうあの部屋に行きたくないとまで言い出した。そればかりか、今度は久しぶりに箪笥を動かしてほしいと言い出したのだ。本当にいい加減にして!と思ったが、それを聞いて思い出したことがあった。

母は以前からしょっちゅう部屋の模様替えをしていた。認知症が進み始めた頃は西側の出窓から誰かが覗いているとか誰かが入ってくるとまで言い、その出窓を隠すように箪笥を配置したり、数日でまた配置換えをしてみたりしていたことを思い出した。高齢者が動かすような物じゃないのにそれほどまでして不安なのかなあと思いながらも、困った行動だと思い、どうにもならないこととして流していた。今回私は、その出窓の下にベッドを配置したのだった。「あの出窓の下が嫌なの?」と聞くと、わかってくれるの?とでも言いたそうな何とも哀れな表情で母は頷いた。「そうか、どうしても嫌なんだね。じゃあ、もう一方の窓の方にベッドを置いて箪笥で出窓を隠すようにする?そうすればベッドでちゃんと寝る?約束するならもう一度だけベッドと箪笥を動かすよ。でもその後はもう二度と動かさないからね。それでいい?」ベッドでちゃんと寝ることを交換条件に、子どもに言い聞かせるような口調で諭している私だった。そのくらいしないと自分が可哀そう過ぎてやりたくなかったのだ。腰の痛みも癒えていない状態だったが、再度奮起して母の希望通りにベッドと箪笥を動かした。それでようやく安心したのか、その日から現在まで母は「起きるのが楽だわ」と言いながらベッドでちゃんと寝ている。

骨折の経過も、高齢者の骨がこんなにきれいにくっつくものなのかとびっくりするほど回復し、整形外科の先生から「完治したので卒業。今度は転ばないように気をつけてね」と言っていただいた。本当に良かった。ホッとした。初めに想像した、そのまま入院、そして施設という順序にはならなかった。母は、その後購入した歩くときの補助になるシルバーカーも「これ、いらないかも」と言い出すほど?!元気に歩けるようになった。
こりゃ、もうひと頑張りいけそうだな。

聞いてくれてありがとう。


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