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NO.4『夢』

ゆく道だからと思っていても、優しくできたり、鬼のようになってみたり。母の事が理解できず悩んでしまう毎日。そんなある日、いつもと少し違う形で、母の事を知れた気がした。ちょっと聞いて~

へっぽこ娘

なかなか寝つけなかったある晩、おかしな夢を見た。広い大きな公園でたくさんの人がお弁当を食べたり遊んだりしている。私は何故か姉と長男(夢の中では7~8歳くらいだった)と一緒に何人かのグループで来ていて、時間になって集合場所に戻ろうとしていた。屋外だというのにみんな靴を脱いで遊んでいて、そこにはたくさんの靴が無造作に並んでいた。その中から自分の靴を探すが見当たらない。あまりにも靴の数が多く、どの辺りで脱いだのかも分からなくなっていた。

一通り探しても見つからないと「誰かが間違えて履いて行ったのかな?いや、サイズが同じ私の靴を故意に履いていったのかもしれない」と、人を疑う気持ちも湧いてくる。一緒にさがしてくれた姉は「あっちの方を探してくるね」と言って行ってしまった。焦って探しているうちにいつの間にか息子の姿も消えていた。気がつくと今度は持っていたバッグやお土産もない。「あれ?どこに置いたっけ?」辺りを探すがこれも見つからない。きっと誰かに盗まれたんだと夢の中の私は確信していた。

姉も息子もどこに行ったかわからなくなり、とにかくまずは集合場所に戻ろうと思った。誰かが忘れていったまま埃がかかっている靴ならお借りしても大丈夫だろうと思い、探していると「それ、私のよ!何やっているの!あなた取ろうとしたでしょう」とたまたま手にした靴を怒鳴り声と共に奪い取って行った女性がいた。取ろうとした訳じゃないのに…すごく悲しい気持ちになった。姉は先に集合場所に行ったのだろうか。息子は迷子になってしまい大丈夫だろうか。スマホがないので皆んなと連絡もとれない。どうしよう。何だか訳がわからない…夢の中の私は、もの凄い絶望感だった。神さま助けて〜と必死で祈ったところで目が覚めた。

「あー夢だった。良かった。だよね?よく考えたらおかしな話だもの」そう思いながら私は絶望感からようやく解放され、安堵しながらやれやれと起き上がろうとした。

次の瞬間、まだ少しボーっとしている頭の中に浮かんできたのは母のことだった。母がよく物を探しているときはもしかしたらこんな感じなのかなぁ…。どこに置いたのか自分で覚えていない恐怖。大事な物が目の前から急になくなってしまう不安。でも確かにここにあったのだから、きっと誰かが持って行ったに違いない、そうとしか考えられないという確信。母の中ではそんなことが起きていて人を疑うのかもしれない。今何が起きているのか理解できないという夢の中のすべての味わいが母の思いと重なった。そして、状況も理解せずに怒鳴り声と共に靴を奪い取って行った女性はまさに母に対して暴言を吐く私の姿だ。妙に納得してそう思った。

母はこんな思いでいつも物を探しているのかもしれない。私は夢から覚めたから良かったけど、これがずっと続いているとしたらどんなに不安だろう。いつもと違う視点から母の思いを少しだけ理解できた気がした。この気持ちを忘れないようにしたいと思うけど正直あまり自信がない。せめて書き留めて残しておこう。そう思って今これを書いている。

聞いてくれてありがとう。


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