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俺は骨の髄までありきたりだ! #2 日本文学盛衰史

青年団の『日本文学盛衰史』

ところで僕は昔、はるか昔、演劇をやっていたはずである。が、いま舞台に立て、と言われてもなーんにもできんだろう。昔からセリフ覚え悪かったし。そもそも末期は「セリフは少ないほどいい」くらいのまったくやる気のない舞台俳優であった。
ひとまず何事も10年はやってみたほうがいい、と思っている。というか宮本輝先生のエッセイでお父様が言われていたとか(ごめんぼんやりしてる)。10年目にして舞台俳優はやめた。この先の展望もなにもなかった。小説の方はそれから始めて10年以上続いているから、まだ俳優よりは向いているんだと思う。人生短くってやんなっちゃうね! 何事もいつまでできるのかわかんないしね!
で、知り合いの芝居を観にいくことはまだある。みんな長らく続けていて、それぞれ若い頃とは違う味わい深さみたいなものがある。
青年団の『日本文学盛衰史』を観ていて、しみじみと思った。舞台の内容自体も素晴らしく何度も泣き笑いのような気持ちにさせられた。高橋源一郎さんの小説を原作に、ということで一筋縄ではいかない。文学者が集まる機会、お葬式を舞台にして、年月を経ていく筋立て。やってくる人々は故人を偲び、文学の情熱を語り、俗な話題で盛り上がる。次の場面(また違う作家の葬式)で参列者はさまざまな変化を見せる。毎回葬式にいるのは島崎藤村と田山花袋。最後の場では漱石の葬式の場面が描かれる。こう書くと堅苦しいお勉強的話だと思われるかもしれないが、そんなことはない。現代の出来事や言葉が盛り込まれ、樋口一葉がチェルフィッチュみたいな動きで(笑った)「大つごもり」のあらすじを披露したり、突然無頼派(太宰坂口織田)がそのあとの文学を語ったり、ときには「市井の人を描いたとして、それを市井の人は読んでくれるのか?」という現代にも通ずる大問題が話されたりと、見どころがたくさん。帰り戯曲を購入してしまいましたよ。でも戯曲で読むのもいいけど、やっぱりまた舞台で観たいね。

吉祥寺シアター

興奮のあまり、観劇後、横のミニストップでソフトクリームをがつがつ食ってしまった。減量中なのに。

やがて父になる

知り合いの恋愛事情なんてものをわざわざ聞かない。昔からそうで、「え、つきあってたんですか」なんてことがある。
今回たまげたのは、関西にいくとたまにマッサージをしてもらうKくん。万年青年風で、物腰柔らか。それでいてトレーニングをしていてしっかりとした身体つきで、うまい。どうも年配の方々に人気です。「娘だか孫だかの婿にしたい」系? 予約取れると奇跡。
「いやー家に帰らないといけなくって」なんて言われて、「あ〜、お子さんがが」なんて適当な軽口を返したら「そうなんですよ」と言う。結婚していたことにびっくりそして結婚通り越して子供? うっそ?
そう、ちゃんとみんな、「まともな」大人になっているのだ。二十代後半って、そういう時期なんだなあ。そういう「しきたり」をガン無視して生きていた自分としてはショックというか口あんぐり。漫画か? って顔をしていたと思う。
そもそも僕は、大学に年取ってから入学したものだから、同級生はみんな年下。そんななかで四年暮らすと自分も若いまんまと脳が誤解しちゃうんですね。なので実年齢より若いつもりで生きてしまっている。しかしそんな同級生たちも結婚したり子供を産んだりしていて、なんだか自分がどんどん乗り遅れているな〜と背中がぞわぞわするときがある。
いや、もう完全に乗ることすら不可能になっていますけどね。 そしてあんまり気にしていない。でもたまーに、周囲がきちんと階段を上がっていく姿に、ちょっとだけ「ど〜もすみません!」と頭を掻いてしまう。


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