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弱小吹奏楽部を追いかけた軌跡 第14話 壮行演奏会 真っ赤な戦闘服

運命の地区予選を4日後に控えたこの日、学校内の体育館でコンクール曲のお披露目をすることになった。
吹奏楽部にとっては初めて大勢のお客様を前にしたコンクール曲の演奏だ。
体育館を埋め尽くす全校生徒、大半の教職員、保護者たち。
体育館に冷房は無い。全ての窓を全開にしているけど、風は入ってこない。外の気温は35℃を超えている。まさに灼熱の演奏会。

開始予定時刻の10分前、暑さと緊張でヘロヘロになっている子供達が心配になり、カメラやマイクのセッティングをしながら一人一人に励ましの声を掛けてまわってみた。

明らかに緊張している。心ここに在らず、と言った感じ。

もう笑わせて緊張をほぐしてやるしかないと思い、パート毎にミニ写真撮影会をする。笑わせるために私は変顔を連発、顔の筋肉がつりそうになりながらも子供達から笑顔を一杯もらえた。変顔に関しては後で娘から大目玉をくらうことになるが・・。

生徒会の子供がマイクで司会のアナウンスを始めた。私はそそくさと持ち場へ戻る。
生徒会長、校長先生の順番で激励の挨拶が始まる。高まるプレッシャー、子供達はどんな心境になっているのだろう。

そして顧問の先生が指揮者として登場。ド派手で真っ赤っかの半袖ブラウス❗️
いつものざっくばらんなスタイルとはかけ離れた先生の衣装。完全に戦闘服にしか見えない。

先生の挙動も少し変だ。明らかに緊張している。全然笑顔が無い。先生にも変顔撮影会をすれば良かった、なんて後の祭り。
良く言えば集中しているのかもしれないが、緊張しているのが一発で分かる。
真っ赤なブラウス、この戦闘服は知らず知らずのうちに、自分自身を追い込んでいるのではないだろうか笑

演奏が始まった

この暑さの中、多少のミスはあったものの、全体としてはまずまずの演奏だった。
この段階で他の学校の演奏を聞いていないから、手応えのようなものはあまり無かった。でも感じは良かった。
ホール練習ではタテがバラバラだったが、今回は良く修正されていた。

演奏が終わり、撤収中の子供達に感想を聞いてみたが、誰も満足していない様子。
『練習ではできたのに、今回はできなかった・・、悔しい』
『緊張で頭が真っ白になったけど、途中から冷静になれた』
『課題が見つかった』
確実に上達しているにもかかわらず、子供達はさらに前を向いていたことが嬉しかった。

帰宅後、いつもの動画編集スタート。
編集した演奏動画は顧問の先生へメールで送った。メール送信後しばらくして顧問の先生から返信があった。

『暑さと緊張で、何ヶ所も指揮を間違えてしまいました💦 この経験を本番に活かしていきたいと思います』

先生、本当にご苦労様です。こんなにメンバー全員の一生懸命な姿を見せられると、結果なんかどうでも良くなります。少しでも悔いのない演奏をして欲しい。そんな感じの内容で先生にはメールを送りました。

娘のクラリネットの様子を動画でチェックしてみると、演奏開始直前、ニコニコ笑っています。どういう心境なのか。
私『演奏どうだった。緊張しなかった?』
娘『そりゃ緊張したよ!』
私『笑ってたじゃん』
娘『緊張を和らげる方法を本で読んだら、笑顔になることが一つの方法なんだって!』

なるほど〜
私も学生時代にその方法を試してみたかったなぁ。子供は子供なりにしっかりと考えて行動している。

毎日毎日暑い日が続き、コロナ禍真っ只中の厳戒態勢。どうか無事に地区大会本番を迎えてほしい。そう願う日は残りわずかとなった。

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