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I May miss the world -Living Dying Message-

昨日の暴風雨が嘘のように、きれいに晴れ渡った空の下を出発した。
昨晩は新幹線もダイヤが乱れ、長時間カンヅメになった乗客もいたそうだ。
今朝になったらもう正常運行に戻っていて、時間通りにやってきた列車に乗り込む。
最寄りの駅は、ひかりしか停まらない。
途中でのぞみに乗り換えれば早いが、急ぐ旅でもない。
700系車両の一番前の席を指定して電源を確保したら、リクライニングシートを倒して足を伸ばす。

むりやり取らされた代休プラス土日で3連休。
彼女の名前を呼んだあの日、気が変わらないうちにネットでホテルの手配をした。
前日までならいつでもキャンセルできるし、という逃げ道はきちんと意識していた。
昨日も、悪天候が続くようなら日を改めようか…と考えたりもしたが、
今回諦めたら、もう僕が日を改めるなんてことはしないとわかっていた。
歯を食いしばって、折れてしまいそうな細い決心を支えた。

とりあえず、片道の切符と、今日のホテルだけ押さえてある。
延泊したくなったら、そのときになんとかすればいい。
おそらく、それはないはずだ。僕は逃げるように帰っていくだろう。
だったら、帰りの切符も取っておけばいいわけで、
それをしない僕は、何かを期待しているのだろうか。
奇跡が起きて、あのひとにばったり会う瞬間を、少しだけ思い浮かべる。
そんな都合のいいドラマは絶対に起きない。
ただ、人生何が起こるかわからない。
それを強烈に思い知らせてくれたのは、あのひとだった。

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