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ふたつのあとがき

今放送されている、NHK朝ドラ「なつぞら」では主人公のなつがアニメの仕事を続けながら子育てに苦悩する様子が描かれています。
子育て経験がない私ですが、どうやって育てていくんだろうって気になってしまい、出産から子供が大きくなるまでは毎日かかさず見てしまいました。

そして、あ、そうだあの本。と思い出し、引っ張りだしたのがTopに載せた本。スタジオジブリの宮崎駿さんの奥様、朱美さんが1987年に出版された育児絵日記です。

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朱美さんは駿さんと同じ東映動画でアニメーターとして働かれていました。
結婚後、長男のゴローさんを出産され、育児休暇から職場復帰し、保育園に預けるまで育児ノートして"自分のため"とか"将来子供に見てほしい"という目的など何もなく、成長を絵で描かれていたようです。

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そして次男のケイスケさんが生まれたあともしばらく続きます。

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結局、二人が5歳・2歳のときに朱美さんは大好きだったアニメーターの仕事を退職されます。駿さんが忙しくなり、育児と家事がすべて朱美さんの負担になっていました。
”一日中子供と一緒にいるようになってから、子供を描く気がなくなってしまった”、とあとがきでおっしゃってます。

(そのため、ケイスケさんの絵が圧倒的に少ない)

仕事で子供と離れていたからこそ、描けるものだったようです。
子供への愛情が薄くなったわけではないんですよね、きっと。
ある程度の離れている時間があるからこそ、描けるものがあるのでしょう。

駿さんより絵がうまいと言われていた、朱美さん。お子さんの絵がとても豊かな線で描かれてます。その線からたっぷりの愛情が伝わります。
軟体動物のような赤ちゃん時期の動きもちゃんと伝わります。

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私は出産をする予定がないので、この本が役に立つということはないのですが、ある家庭の育児のわずかな時間を共有させてもらうのは、自分の子供時代を思い出させることにもなり、うらやましく思ったり感慨深いものがあります。

家の説明図がすばらしい(お子さんが小さい時はとても小さなおうちだったそうです)

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あとがきですが、
朱美さんと駿さんご夫婦で書かれています。
朱美さんは長男のゴローさんが大好きなのでしょう。本の前書き・後書きはゴローさんのこと、絵の数も圧倒的にゴローさんが多いです。
あとがきのタイトル「巣立ちの日」は
ゴローさんが進学で家を離れる日のこと。

反対に駿さんは、次男ケイスケさんの情報量が少ないことを気にかけています。ご自身も次男であったため、自分の次男が何を感じたかなんとなくわかる気がするとおっしゃってます。
そこからのあとがきのタイトル「連帯の挨拶」
ケイスケさんから、自分の性格が形成される過程をもう一度体験する機会を与えられたと。

対照的なふたつのあとがき。お二人と柔らかな言葉でまっすぐに正直に親としての気持ちを書かれています。このあとがきが好きなので手放したくない本です。

もう絶版でなかなか手に入れることが難しいようですが、気にかけて欲しいです。私は富山県に登山に行った帰り、蚤の市のようなところで見つけました。

朱美さんはプロフィールの欄に
「野草の絵を2000枚ぐらい描きためるのが夢」と書いています。
もう描きためたのでしょうか。
昨年このような本を出版されました。

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監修:駿さんとなっており、ほとんど朱美さんの植物画で構成されています。

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二人の息子さんを描かれたやさしい線は変わりません。
鋭すぎる観察眼で描かれた植物たち。
植物に当たってる光がきれいなので、おそらく一気に描き上げているのではないかと。
私が言うのもひっじょーーーーに、大変失礼なこととはわかっていますが、くらべる必要などないのですが、駿さんより圧倒的に絵がお上手!

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