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映画「モスキート」は名作への優れたオマージュかもしれない(あるいは予算とのせめぎあいの果てに)

宇宙人の血を吸って巨大化した蚊が人を襲うというどうかしている設定の映画について記します。

1.なぜ巨大化するのか

宇宙人の血を吸って巨大化した蚊が人を襲うというのが本作の大筋。B級映画における巨大化の理由は化学物質による汚染や遺伝子工学の失敗などが多く、宇宙人の血を吸って巨大化というのは激レアです。この臭気計が振り切れるほどの地雷臭、これを避けたらB級映画好きの名折れ!死して屍拾う者なし!・・・などと覚悟を決めて観たらこれがまたさまざまな名作映画の影響を感じるなかなかの名編でした。

https://filmarks.com/movies/52180


2.金字塔「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」へのオマージュなのか?

本作は終盤に家屋立てこもり戦が行われます。家屋立てこもり戦はロケーションの準備が容易だったり、狭さを利用して緊迫感を出したりと低予算映画の大いなる味方なのです。また、閉鎖空間ゆえの心理戦を描きやすいという重要な要素があります。ゾンビ映画の金字塔「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」は実は当時の社会情勢が反映された社会派映画だと言われているように、脅威に対して籠城した人々が団結できないことによって内側から瓦解していくという愚かしい末路を描いています。一方、「モスキート」での人間達は即席ながらも妙な連帯感で巨大な蚊に立ち向かうんですね。狭い中で協力しあう姿はB級映画にあるまじき希望や感動を覚えるほど。脅威にいかに対するか、という視点で捉えると「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」へのアンサームービーとして描かれているのでは?とすら思えてきます。


3.「悪魔のいけにえ」へのオマージュなのは確定

なぜなら、レザーフェイスことガンナー・ハンセンが出演していて、なおかつチェーンソーを振り回すシーンがありますから。「これを持つのは20年ぶりだぜ」とかセリフが粋すぎて、ホラー映画マニア感涙です。映画史上に残る最恐の敵が今度は味方になって怪物退治とか、まるで少年漫画みたいな胸アツ展開!

4. 古き良き特殊効果へのオマージュ(あるいは予算とのせめぎあいの果てに)

本作は粗悪なCGに頼らず、パペットを作って撮影しています。ミニチュアや操演、ストップモーションも用いたシーンからは古き良き特殊効果への敬意がヒシヒシと感じられます。ミニチュアストップモーションの先駆者ウィリス・オブライエン、特撮の神レイ・ハリーハウゼン、「ゴッドファーザー」「エクソシスト」「スウィートホーム」などを手掛けた特殊メイクの大御所ディック・スミスといった名匠たちの優れた仕事の轍が見えるようです。「モスキート」が製作された1994年といえば、「ターミネーター2」が製作された年。スケールやネームバリューでは比べ物になりません。しかし、資金に乏しい低予算映画だからこその知恵と工夫が溢れている、それこそが本作の最大の魅力と言えるかもしれません。ぜひどうぞ。

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