見出し画像

映画「ブルーサヴェージ」にみるB級映画と出木杉くんの絶望的な親和性の低さ

太古の巨大ザメが人を襲う映画について記します。

1.メガロドンが出木杉くん

太古に実在した巨大ザメ、メガロドンが人を襲うというのが本作の大筋。メガロドンはB級映画界では知らぬ者のいない、「メガロドン選んだの?安定だなぁ」とちょっとあざけりが入るくらいの鉄板設定です。メキシコの土偶ピニャータが襲ってくるとか、毎年クリスマスに切り倒されまくっているモミの木が人類に復讐するとか、トンデモ設定をひねり出してくる世界においては正直、インパクトに欠けます。

https://filmarks.com/movies/61301

2.ドラマが出木杉くん

妻を奪った海(たぶんサメ)への復讐を誓う主人公の男を中心に、そんな父と反目しあいながらも堅い信頼で結ばれた娘、かつてのライバルである気の合う友人、その友人の妻はガン闘病中、サメはガンの特効薬になるかも・・・と、復讐・恋愛・友情・病気・金銭のドラマに必要なピースが過不足なく入っていて、はっきりいってドラマパートは良く出来ています。サメ映画だったはずなのに、「どんな話だったっけ?」と記憶に残らないのです。

3.CGが出木杉くん

B級映画はCGの出来がひどいことなど日常茶飯事ですが、本作のサメCGはすごくいい出来です。ドイツで製作された映画なので、ものづくり大国のプライドと匠の腕が表れているのかもしれません。 しかし、自動車学校の古いシミュレーター並みのCGを繰り出して私を震え上がらせた「デスパイザー」を筆頭に凶悪な連中がひしめきあうB級映画界においては、その出来の良さがあだとなります。「CGの出来もいいよね」では話題にならないのです。

4.B級映画と出木杉くんの絶望的な親和性の低さ

本作はサメCGも物語も出来がいいんです。いいんですけれど、安定しすぎて面白いのに面白みがないんです。勉強もスポーツも出来て人徳ありの器量よし、出木杉くんなのです。きっと、エリート会社員か官僚になって安定したハイソな生活を手に入れるとは思うんですけどね。そこにはダメの塊のび太、利己の塊ジャイアン、狡猾の塊スネ夫のようなワクワクやドキドキ、あるいは共感が感じられないのです・・・。

何が言いたいかといいますと、B級映画において万能の秀才(安定した内容)では尖った個性(意味不明な設定や振り切れたキャラ)に勝てないということです。なんでもこなせる秀才とは絶望的に親和性が低く、変わり者こそ愛される世界、それがB級映画なのです。そこに出木杉くんでは相性が悪い。

すごくいいのに「B級映画としては」物足りなかった哀しい出来すぎた映画「ブルーサヴェージ」には、個性を活かすことの難しさが見え隠れしているような、していないような、そんな気がするのでした。なお、本作は普通に面白いですよ。ぜひどうぞ。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?