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カオスの向こう側を一緒に見る

つづきがどうなるのか、気になって仕方がない。ページをめくる手が止まらない。

推理小説や冒険小説を読むのが好きだった。小学生の頃から、寝る前に読み始めた小説が面白すぎて寝ないでずっと読み続けるものだから、読み終わるのが朝方になることも多くて、だから学校ではいつも眠かったし、実際授業中によく寝込んでいて叱られた。

生来の性格として、先が予想できてしまうものがあまり好きではなく、逆に次の展開が読めないものに惹かれる。映画館で映画を見るのが好きなんだけど、見に行くときにはできる限り事前情報を入れないことにしている。できることなら、恋愛映画なのかホラーなのか、というジャンル情報すら入れたくないぐらいなので、まったく先が読めなかった『カメラを止めるな!』は大好物だから超楽しかった。

さいきん、複業をする人が増えてきたり、仕事終わりに仕事以外で勉強会に出席したりする人が増えている実感がある。「働き方改革」で少し時間に余裕ができているというのもあるだろうけど、それだけじゃない、社会の気分が全体的にそういう方向に向かっているんだと感じる。本当にそうなのかを確かめようと思って、さいきんいくつかの「コミュニティ」っぽいところに自分自身で参加してみているんだけど、そこで小学生時代のあのワクワク感を思い出したので、忘れないうちにメモしておこうと思う。

この文章を書いているプラットフォームであるnoteと日経新聞が組んで始めた「Nサロン」というコミュニティというかサークルというかがあって、ちょうど数日前にそのキックオフミーティングが開催されたので、参加してきた。彼らにとってもまったく初の試みの「ともに学ぶサロン」だ。

去年の年末のバタバタした時期に申し込んで、年始のバタバタしている時期に事務局の人たちが色々段取りをしてくれていたのだけど、正直色んなことが未定な感じで、もしかして蓋を開けたらカオス、みたいな最悪のシナリオも想定されるような状態に見えていたので、勝手ながら心配していたんだけど、行ってみたらこれが、思いのほか楽しかったのだ。

まだ本番が始まっていないイントロ期なのにすでに楽しいんだけど、理由はどうやらこの時点で2つある。

コミュニティ内でのプロジェクトに関するオリエンテーションのあとに、懇親会があって、そこで色んな参加者と話したんだけど、なんというか自分と同じ匂いを感じて面白かった。つまり、それぞれ程度の違いはあれ、このカオス状況をリスクとして避けるのではなく、「もしかしたら面白くなるかも?」という可能性に賭けてチャレンジしてきている人たちが多かったように思ったからだ。そういう同類が多そうだから楽しそうだ、というのがまずひとつ。

それから、このプロジェクト自体が今回「第一回目」のトライであるということも楽しさ倍増のふたつめ。運営側も参加側もまだ誰も経験していないことを一緒に始めるので、これからトライアンドエラーを一緒に重ねていくことになる。その後の結果が成功であれ失敗であれ、この最初のフェーズを一緒に過ごす仲間がいると感じられるのは大きい。なにごとも、自分たちで考えて主体的に選択して学んでいくしかないので、その結果の是非にかかわらず、その経験の向こう側には何らかの成長が見込める。チャレンジからの成長というのは、自分だけで経験してもうれしいものだが、仲間と一緒に体験するとそのうれしさは倍増するものだから、第一回目のトライアルに一緒に参加する仲間がいるということだけで、そのうれしさを期待できるからである。

大昔、Appleが主催する学生モニターのようなプログラムに参加していた。参加していた学生には新古品のMacが提供され、1年をかけて、班を組み、それぞれの班で、「やりたかった夢」を叶えてみろ、というプログラムだった。そのころ、Macはとても高額で、学生に変えるような代物ではなかったから、当然参加した学生たちのほとんどは、そこで初めてMacの操作を覚える必要があった。100人くらいのMacの素人の学生集団が、しかし1年間をかけて、横並びで互いに試行錯誤しながら、ショートカットキーを教え合い、隠しコマンドを探し出し、アプリの使い方を一緒に覚えていくうちに、プログラムが終わる頃にはみんなで一枚のCD-ROMに作品を残せるまでになった。技術の習得スピードは、おそらく独学でやったときよりもずいぶんと加速していただろうし、なにか問題が起きたときの解決スピードも、100倍早かったように思う。今の例えで言うなら、強力なディープラーニングでAIが超高速計算の結果パターンを見出すような感じ。
その時の、横のつながりの中でともに学ぶ感覚がよみがえってきた。

そうだ。自分で選んで、自分たちで考えて、共につぎのページをめくって、予想外の展開を共に楽しめる予感がする。

先の見えなさをワクワクに変えられるのは、ぼくら自身だ。


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