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恋人たちの小径で

         ~From the lakeside~

その道を足早に駆けていく。
踊る心をなんとか抑えながら
そしてランチボックスをあまり揺らさないように。

湖面に弾ける日差しを見たとき
ほんのその瞬間、アンは心を奪われたのでした。

ゆっくりと歩みを止め
美しい湖畔にたたずんでみる。
透き通った湖の中に
これから起こる素敵な未来を見ているようです。

  「約束まで、もう少し時間はあるかな。」

穏やかに波打つ水面に光は乱反射している。
それは万華鏡のように。

  「きれい。」

はやる心と裏腹に
あまりのまばゆさに息を呑んでしまう。

時間は意外に緩やかに流れました。

どのくらいそこに立ち止まっていたんだろう。
我に返ったアンは慌ててしまいましたが
本当は一瞬の出来事の様でした。

木漏れ日の中をもう一度歩き出す。
恋人たちの小径を抜けて彼の待つ丘へ。
軽くステップを踏むようにかかとを鳴らすアンです。

一度だけ振り返り、心の中で小さくつぶやきました。

  「今度は二人で見たいな。」

この小径へ誘ったら、彼は恥ずかしがるだろうか。
ふとそんな事を考えてしまう。
いたずらっぽく微笑んで駆けだすアン。

湖面は変わらずきらきらと輝いています。


約束の丘まではもう少し。

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