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言葉が手段と音になっても、コミュニケーションが取れていると言えるのだろうか?

12月26日木曜日 昼から夜

ナント駅前のトラムの駅から目的地である遊園地の最寄り駅に到着。遊園地はロワール川を越えた向こう岸。橋へ向かおうと踵を返したとき、四人家族を見かける。二人の子供は幼く、夫婦は微笑んでいる。私はリチャード・リーブ『復活』という短編について思い返す。旅行の一月前くらいに大学の先生に、その短編が収められている本をお貸しした。旅行の前に読み返したいなと思っていたが、そびれた。だが、筋を覚えていたからいいか、とも思っていた。二人の子供が戯れているのを確認してから橋を渡り出す。

昨日見たセーヌ川と同じような土色のロワール川を眺めながら進む。振り替えると見える中心地は、大きな窓が箱入りのチョコレートのように綺麗に並んだデザインの建物、広場、カフェのオープン席、ブルターニュ公爵城。ヨーロッパだね、って写真でも見せたらテレビのある家で育った人なら多くの人が答えそうだ。

地図の道筋に従って行くと広場に着いた。だが、こちらの広場は慣れ親しんだ感じがある。ベンチ、植木、バスケットコート。青森の郊外にもこんな公園ある。ただ、

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これは無かった。いいね。「バスケットは誰でもできる!」みたいなメッセージが表れたアートじゃないかと思った。

遊園地に到着。チケット売り場に行くが、担当者にフランス語が通じなくて英語に変更される。「何したいの?」と訊ねられ、乗りたいマシンを答えると、「behind. behind.」と言われなが、列から外れるようにとジェスチャーをされる。

遊園地の案内板を見て、写真を撮り、目的地に向かう。

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川縁に着いてしまい、もう一度、地図を確認。正反対の方向に歩いていたと分かり、来た道を戻る。右手はルービックキューブみたいな建物が並んでいる。これに似た建物を、八戸の中心地で見たことがあるし、おそらく地方都市にはありそうだ。こちら側は世界的に見て最大公約数のデザインの街なのかな?

穏やかな遊園地だった。刺激的なデザインの乗り物(マシンと呼ばれる)はあった。クローズアップされがちなのはジェットコースターやホラーハウスのようなものかもしれないが、そんなものは一切ない。マシンごとに空間がある。一緒に来た家族との関係性を暖め合うような仕組みがある。刺激で発散するのではなく、じっくり時間を過ごし、関係性を確認し合うようなデザインだと思える。

チケットは全部で二度買った。一度目は見送り(だが、最後には買えたので一回にカウント)、二度目は英語で買えた。しかも、同じ場所で違うアトラクションのチケットを売っていたので、少しやり取りが必要だったが、無事に二枚買えた。その上、片方のアトラクションは時間帯の指定もあり、乗り場の位置もややこしかったが、担当者の説明と他の客の流れを見ながら進めて、なんとか乗れた。

アトラクションに並んでいる間、かわいらしい、というフランス語を覚えた。周りを子供が駆け回ったり、順路を区切るロープをくぐったりしていて、保護者が苦笑いしていた。私の後ろに並んでいた保護者二人が、アトラクションの乗り場で迷った時に頼った人たち(ただ、英語が分からないと言われたので、その時は他をあたった)だと気づいたので、翻訳アプリで調べたのだ。

最後のアトラクションでは日本語が話せる人が案内してくれた。一人は家族連れの女性。日本にいたことがあるらしい。子供がいながらも、出来るところまで案内してくれた。もう一人はアトラクションの係員。帰り際、今日は寒いから気をつけて、とまで言った。辺りがすっかり暗くなっていたせいもあり、安心した。

真っ暗な広場を足早に進む。

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この案内、街灯のようなポールの上から映写機のように写していた。

トラムに乗ってホテル最寄りの駅へ。昼間のファーストフードが多かったので夕食はいらない。真っ直ぐ帰ろうとしたが、徒歩だと真っ直ぐ行けば良いだけにも関わらず、暗くて街の様子も変わっているのも手伝い、遠く感じる。また道を間違えたか? 

一本裏の通りへ、それてみる。飲食店のオープン席でわいわい食事をしている人がたくさん。安いパンスタンドを見つけたので、朝食用にパンと水を買って、地図を確認して、ホテルに戻る。

フランス語のざわめきは苦痛じゃなかった。口にシャボン玉を含むような、よく聞く発音は、ただ鳴っている音だった。関係性をうかがわせるような単語も出来事も挨拶も聞こえなかった。食べ物を買う時も、言葉はそのためだけの手段になってくれた。会話から、こってりしたものが削げ落ちて、気軽だった。同時に、今の私の言葉は動物の鳴き声と重みが大差ないようにも思えてくる。それでも許されてるのは良いことかもしれないけど、でもこれって、言葉が分かるところでも、私自身はこれくらいのことしかしてなかったんじゃないか。

虚ろな気持ちのまま歩き続けた。

部屋でWi-Fiを繋ぎ、YouTubeで日本語のトークバラエティーを流しながら就寝準備を整えた。

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