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常夜燈/joy you're out to

最近じゃずいぶんと夜がなまぬるくなって、すっかり油断した僕に外にでも出てみようかなんて気を起こさせる。

Youtubeで時間を潰し、みんなが寝静まった頃合いを見計らう。シャツの上からダボっとしたパーカーを身に纏い、チェック柄のVANSを履いて玄関のドアをそっと押し開ける。匿名希望のフードをかぶり、立ち入り禁止の夜へ踏み出す。

昼間に雨でも降ったのか、アスファルトの路面はかすかに湿り気を帯びていて、風の匂いもどこか艶めかしい。

おぼつかない足取りで歩く。歩く。
あてのない道行きを歩く。歩く。

整然と立ち並ぶ常夜燈を恨めしげに見上げながら、公園のブランコが揺れている。

そういえば学校にはしばらく行ってないな。
ブランコみたいに行ったり来たりするだけの毎日に倦んでいることに気がついてしまって、別に今日はいいかな、なんてことをある朝に思ったら、そっから全然行けなくなった。

僕は昔っからそうだ。
みんなが当たり前にできることが、どうにも苦手だった。
靴紐を上手に結ぶとか、上を向いてうがいをするとか、みんなどうしていきなり出来るんだろう。

「将来に対する漠然とした不安」なんて格好良いもんじゃないけれど、どうやら僕は大人になるのも苦手みたいだ。

今日みたいな不確かな春の夜には、ちぎれて撒き散らされた雲の隙間から差し込む茫洋とした月の光が、ちょっとだけ世界に明るさを添えていて、まあ、まだ生きていてもいいんじゃないかな、なんて血迷ったりさせてくれる。

それに、天国にも学校があったら、嫌だしな。

気まぐれに常夜燈を掴んで、それを軸にしてストリップダンサーのように回ってみる。

くるくると回る視界と思考で人生を誤魔化して、もう少し外を歩いてみようか、そんなことを思った。



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