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初めてタンポンを使って水着を血まみれにしてしまったあの夏2013

10年前の夏。

同期のみんなと海に行くことになった。

大人になって友達と海に行ったことはなく、
水着も持っていなかった。

水着を買うのは学生の時以来か。

みんなどんな水着を持ってくるのだろう。

男の子の前で水着姿になるのはとても抵抗があった。

『さすがにスクール水着はないよな・・・

かといってフィットネス水着も浮きそうだし・・・』

同期の女の子にどんな水着を持ってくるのか相談する。

みんなビキニだった。

「上からTシャツ着ればいいじゃん」

体型を見られたくなかったので、
私もそうしようと思った。

本当はビキニなんて着たくないが、
自分だけ水着が違うのは恥ずかしい。

水着の上にTシャツと短パンを着ればいい。

自分をそう納得させ、
私は生まれて初めてビキニを買った。

そして、海に行く日の前日。

生理が始まった。

なんでこのタイミングなんだ。

海に行く当日は、一番体がだるく、
経血量が多い2日目となってしまう。

心底落胆していた。

大人になって初めてみんなと行く海なのに。

みんながピチャピチャ泳いでいるのを
一人で黙って見守るしかないのか。

勇気を出してビキニも買ったのに。

「なんで海入らないの?」

「今日生理だから・・・」

「あ、そうなんだ・・・」

そんなしらけた空気になるのはごめんだ。

何としてでも海に入りたい。

私は決心をしていた。

こうなったらタンポンを使うしかない。

私はナプキンしか使ったことがなかった。

自分の体に異物を入れるなんてあり得ないと思っていた。

でも状況が状況だ。

そんなことは言ってられない。

そして当日。

私ははじめてタンポンを買った。

説明書をよく読む。

何度も何度も読み返した。

『痛いのだろうか・・・。

入らなかったらどうしよう・・・。

本当に血は漏れないのだろうか・・・。』

不安と恐怖を抱えながら、ゆっくりとタンポンを
体に入れていく。

なんとか入れきった。

指先が血で汚れている。

そんな不快感はすぐにどうでもよくなり、
タンポンをなんとか挿入できたことに満足していた。

タンポンのパッケージには

『8時間までの吸収力』

と書かれてある。

これで血を気にすることなく、海を満喫できる。

みんなと楽しく最高の夏を過ごせる!

そう前向きにとらえていた。

海に到着し、みんな水着に着替えはじめている。

タンポンのパッケージにあった、

『8時間までの吸収力』

の文句を鵜吞みにし、
海に到着して、私はタンポンを取り換えなかった。

みんなで海に入り、ピチャピチャ、わいわい。

私は心から楽しんでいた。

一方、頭の片隅には血が漏れていないだろうかという
不安もあった。

『8時間の吸収力』とあるんだから、きっと大丈夫。

不安と楽しさが行ったり来たりする中、
トイレに行くこともなく、私はみんなと海で戯れていた。

ふと、また強い不安に襲われる。

こっそり短パンの下の水着を確認した。

私の水着の色は、黒に白のドット柄。

よく見ると、ドットがどす黒い赤に変色していた。

『漏れてる・・・』

強い不安の中にあった、嫌な予感が的中していた。

すぐにトイレに駆け込む。

見事に経血で水着が汚染されていた。

すぐに取り換えれば済むはずだが、
頭が真っ白になっていた。

何から手をつければいいのか・・・。

混乱していた。

これからどうすべきか・・・。

『8時間もつはずじゃなかったのか?

私の入れ方が間違っていたのか?

私の血量がすさまじかったのか?』

いや、そんなことを考えるよりも、
まず取り替えなければならない。

それが優先だ。

それから、水着を洗って・・・。

冷静さをなんとか取り戻し、
拙い手さばきでタンポンを取り換え、水着を洗った。

そして、何食わぬ顔でみんなの前に姿を現す。

大人になって初めてみんなと来た海。

最高の夏の思い出ができた。

生理2日目だったけれど、

初めてのタンポンとビキニだったけれど、

血で汚してしまったけれど、

そんなことよりも、みんなと過ごした海が
とても楽しかった。

それからというもの、私はタンポンの術を学んだ。

タンポンの扱い方をしっかりと学び、
タンポンのとりこになっていた。

あの経験があったからこそ、
タンポンの快適さを知ることができたし、
生理の憂鬱さも大幅に軽減することができている。

あの夏がなければ、
今もナプキンを使い続けていただろう。

初めてタンポンを使ってしまったばかりに、
初めて買ったビキニを、経血で汚してしまったあの夏。

血で水着を汚す夏は、きっともう来ないだろう。



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