それが後の妻構文

どれが後の妻になるか分からない今の世の中に向けて。

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最近の記事

それが後の妻構文.6「マルチーズな女」

まだ20代の頃、朝のランニング中、クリームチーズをなすりつけたようなマルチーズを連れた、青のベストとカンカン帽を合わせたおじさんが今にも「今日はいい天気ですね」と言わんばかりの顔で通り過ぎていったんですよ。 僕はあのマルチーズは今日のコーディネートと一環で、明日にはレザージャケットとドーベルマンにすっかり取り替えられているのではないかと考えて、なぜだか知りもしないそのおじさんにぞっとしたのを覚えています。 「頼むからあのマルチーズが5年間大事に飼われている愛犬であってくれ

    • それが後の妻構文.5「印の無い女」

       印の無い女に出会ったことがありますか?  あれは二十歳そこそこの頃、無印良品の塊みたいな、オーガニックな女性と出会ったことがあるんですよ。  ライ麦畑でウクレレを弾いてて、まさに"無印良品"!といった大人カジュアルな服装を着こなしていたその女性は、大きいスーツケースを持っていました。  「どこから来たんですか?」と訊ねると、「どこでもいいじゃないですか」って天然由来成分100パーセントの回答が僕の横を抜けていったので、僕はそっと彼女の横に腰を下ろしました。  ただ何

      • それが後の妻構文.4「ジャムの女」

         あれはまだ仕事を始めたての頃、私の隣に20代くらいの小柄な女性が引っ越してきたんですよ。  私はパンづくりが趣味だったので土曜のその日もバターロールをつくろうと"ぶつ"を発酵させていたんですが、卵が切れたことに気がついて家を出たんですね。  すると隣の部屋、女性が越してきた部屋から、香ばしく甘酸っぱい苺の匂いが...。  私は気になって、後日つまらないものを片手に引っ越しの挨拶にきた彼女に聞いてみたんです。 「苺の栽培でもしてるんですか?」 「ジャムつくるの、趣味

        • それが後の妻構文.3「ネットの女」

           学生の頃ネットで知り合った女性と会うことになったんですよ。  顔も知らないからすごいドキドキして待ち合わせ場所に行ったら、バイト先の女性社員とバッタリ会ったんです。もちろん年上で、清楚で結構綺麗な人。  「偶然〜」なんて、まあまあの知り合いと偶然会ったときの会話を一通りしてから、何してるのか気になったので「待ち合わせですか?」って聞いたんですよ。  すると質問には答えず「あなたは?」って聞かれたから「待ち合わせです」って答えたんですね。  彼女の方も言いはしなかった

        それが後の妻構文.6「マルチーズな女」

          それが後の妻構文.2「フランスパンの女」

           昔むき出しのフランスパンを片手に街を歩くのに憧れて近所のパン屋で1番長いフランスパンを買ったんですよ。  そしたら僕の前に並んでたスカーフをした女の人も1番長いフランスパンを買っていて、「まさかな」って思ったんです。  でもパン屋を出たときちらっと彼女のほうを見たらそのフランスパン、むき出しにするどころか大事にしまっていたから安心したんですよね。「あ、これは違うな」って。  しばらくフランスパン片手に街をぶらぶら散策して、さあ帰ろうと思った頃。同じ長さのフランスパンを

          それが後の妻構文.2「フランスパンの女」

          それが後の妻構文.1「雪国の女」

           ちょうど今くらいの季節、仕事帰りに車が雪にハマって抜け出せなくなったことがあったんですよ。そしたら通りがかった女の人が「こうすると多分抜けられますよ」ってタイヤの周りの雪を踏み固めてくれて、おかげでなんとか雪から抜け出せたっていうことがあったんですよ。  本当に助かったので下心なしに「コーヒーでも奢らせてください」って咄嗟に言ったらその流れで2人で喫茶店行くことになって。  彼女雪国出身で、話がすごい面白くて、めちゃくちゃ盛り上がったからそのまま連絡先交換したんですよね

          それが後の妻構文.1「雪国の女」