キリカ

趣味は読書と観光。ドイツ在住の高校生。

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柴田勝家『雲南省スー族におけるVR技術の使用例』-感想・紹介

柴田勝家 『雲南省スー族におけるVR技術の使用例』  舞台は中国南西部雲南省とベトナム、ラオスにまたがる少数民族の自治区。この舞台に住む民族「スー族」は生まれてから死ぬまでVRヘッドセットを装着し、VR世界で一生を終えるという。この独特の風習を持つ「スー族」が見ている世界とはどのような世界であるか。また、この風習はどのように成り立っているのか。特異な民族の調査記録は「世界存在」の在り方を問う。 自分が見ている世界は、相手が見ている世界と地続きでは無い。    VRという仮

    • 谷川俊太郎『死んだ男の残したものは』論説文

       『死んだ男の残したものは』は谷川俊太郎著作の口語自由詩で、一連が四行ずつの全六連二四行構成である。本作は全編を通して主観での語り口調となっている。  全ての連で「死んだ○○の残したものは」という反復が用いられており、各連の二行目にはその残されたものが記されている。第一連と第二連には「ひとり」とあり、これは人の死が身近に存在していることを端的に表現している言葉である。人は「ひとり」で生きていけない生き物だ。人は必ず人から生まれ、人のいる環境で育つ。近年の研究において「ひとり

      • でびでび・でびるを動画5本で紹介

        VTuberの館へ安易に足を踏み入れたら戻ってこれなくなったキリカです。今までYoutubeを見る習慣なんてなかったのに、家に帰ってすぐにPCのスイッチを押しちゃうような感覚で各配信者のTwitterから配信予定を把握し、Youtubeの通知欄をすかさずチェックするのが板についてまいりました。 この記事では推しライバーを布教するべく、にじさんじ所属のバーチャルライバー「でびでび・でびる」様のおすすめ動画・配信アーカイブを5本紹介していきます!動画を通して少しでもでびる様の魅

        • 『ボーダーライン』(2015)-感想

          『ボーダーライン』(原題: Sicario)2015  ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による映画『ボーダーライン』はメキシコにおける暴力を描いた犯罪映画である。FBI捜査官ケイト・メイサーは、メキシコ国境付近を拠点とする麻薬グループを告発するためのカルテル捜査に急遽加えられる。一体何故、彼女は捜査に加えられたのか。CIAが行う捜査の様相とは。極まった演技、音楽、カメラワークそして観客を飽きさせない物語の調子。サスペンスに必要な要素を揃え、徹底した客観視点、つまりは独白の削除を行う

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        柴田勝家『雲南省スー族におけるVR技術の使用例』-感想・紹介

          雨が降る-受動的な思考回路

          例えば予期せぬ雨が降ったとしよう。そして、傘をささなければパンツまで濡れてしまいそうな雨が降りそうな雲行きとなっているとしよう。仕事帰りのあなたは、今晩友人と食事の約束をしていて、時間的余裕はほとんど無いと仮定する。 問:あなたがこの状況下でとる行動は何か 答:傘を買う 意識的、無意識的の差はあれど、私達は「何かが起きる」と事前に知覚し、その事象に対して判断を行ってから行動を起こしている。この場合、事前に予測できなかった「雨」が発生したのを受けて、その現象から受ける被害を

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          自由の行進

          人は自由であり、また自由である人を尊重する。そのような思想が蔓延している現代が行き着く場所は一体どこなのだろうか。長年の圧政を経て、民衆はその抑圧の反動で「自由」を強く求めた。ある人は文で、ある人は絵で、またある人は人を主導して「自由」から得た自己を主張した。そして、抑圧時代から100年が経つ今では、表現の自由・思想の自由・信仰の自由が急速に推し進み、全ての事柄において多様性が生まれた。  しかし、このまま「自由」を推し進めるとどうなるにだろうか。人は物事を良し悪しでは判断

          自由の行進

          谷川俊太郎『二十億光年の孤独』論説文

          谷川俊太郎の『二十億光年の孤独』は、六連十六行構成からなる口語自由詩である。第一、二連では「ときどき-欲しがったりする」の反復を用いて「人間」の欲と孤独を描写しており、第三、四連では孤独に存在していた欲を結び合わせて個人と人間社会との関わりを解き、第五、六連では漂浪する「人間」の欲しがりから生じる感情を個人の問題として帰結させている。  本作では、天体を表す用語である「地球」「火星」「宇宙」「二十億光年」と、地球上にぽつんと存在する人類には大規模な言葉が用いられている。

          谷川俊太郎『二十億光年の孤独』論説文

          「共感」-『帰ってきたヒトラー』を観て

           二度にわたる世界を巻き込んだ大戦は終結し、軍事の為の科学技術は加速度的に一般への普及を見せた。テレビは薄型となり、IT技術の発展により誰もが誰とでも繋がりを持てるようになった。科学技術はとどまることを知らず、今尚傾斜がかった成長を続け、人類はもはや地球にとどまることを知らない。もう、国家間や民族間、宗教間といた地域性に縛られる時代は終わったといえるだろう。  とある少年が安易な考えでソーシャルネットワーキングサービス(SNS)に少数派を蔑視するような発言を投稿したとしよう

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          PKD『ユービック』-感想メモ

          フィリップ・K・ディックの『ユービック』感想メモ 展開が読めない!今いる世界は現実世界なのか、それとも虚構世界なのか。実体を感じるのだから現実世界であろう、向こうの世界はもっと造られた儚いものであるはずだ。と思うと自分がいる世界が実は造られた儚いもので、向こうの世界が現実であり、それもまた逆である。この二転三転四転もする展開の常習性が高い。高すぎる。ディックはまだアンドロイド羊と本作しか読めていないのでもっと読みたい。正気狂気フィクションノンフィクション現実仮想表裏。もう何

          PKD『ユービック』-感想メモ

          死生観

           全ての人に死は等しくやってくる。もしかしたら今日かもしれないし、明後日かもしれない。人間の寿命が10年延びようと、20年延びようと死が訪れる時は誰にも分らず、不規則で、絶対的だ。ストレスは人を蝕み、患わせる。悪質な労働環境で心身共に擦り減らし、のしかかる重圧に耐え切れずに自殺する姿を実際に視て、報道でも見た。そこに残るのは哀しみとストレスからの解放だけの様に思える。けれど中には交通事故や殺人事件に巻き込まれ、未来を見据え希望を抱いて生きていた人も死んでしまう人も少なからず存

          『さあ、気ちがいになりなさい』-要約/感想

          「狂気」と「正気」が交わる表題作『さあ、気ちがいになりなさい』を始め、不時着により迷子となった男が我々に「理想」を問う『みどりの星』、ノックから始まりノックで終わる『ノック』。星新一訳によるショートショートの名手フレドリック・ブラウンの傑作短編集。 今回の記事では、私が特に気に入った短編の要約と一言感想を書きます。 『みどりの星』  5年も不時着した星で放浪している男、マックガリーは乗ってきた飛行船を直すために同じ星に不時着したとされる飛行船を探していた。森、動物、平原そ

          『さあ、気ちがいになりなさい』-要約/感想

          コナン・ドイル『緋色の研究』-感想

          コナン・ドイル『緋色の研究』を読んだ。日本の漫画にして近年高い人気を誇る『名探偵コナン』の影響もあり、私は数年前からシャーロック・ホームズの名を知っていたが、何処からか漂うその堅苦しさから手を出せずにいた。しかし、このような心配は杞憂であった。私は新潮文庫から出版された素晴らしい表紙デザインをした改訳版を手にした訳だが、ホームズの物言いや奇怪にも見える行動、そして事件当事者による回想。その全てにおいて難解な読書術を要求してくる訳ではなく、一、推理小説として気軽に楽しむことがで

          コナン・ドイル『緋色の研究』-感想

          『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』-感想

          初めてのフィリップ・K・ディック作品として『アンドロイドは電気羊の夢をみるか?』を読んだ。 主人公であるアンドロイド執行官リックはアンドロイドを愉しさから、本人の知らぬ間に殺す理由をこじつけて殺し屋をしていた訳だが、アンドロイドとの邂逅を経るうちに自分がアンドロイドへ感情移入していっていることを知る。「アンドロイドは共感しない。感情移入しない。」そう仮に結論づけていた彼だったが、その定義の曖昧さに気づき、どんな人がアンドロイドでどんな人が人間であるのか、思索へ耽っていく。

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          村田沙耶香『コンビニ人間』-感想

           芥川賞受賞作の村田沙耶香『コンビニ人間』を読んだ。 「普通の人」とは社会の求める人であり、人は勝手な解釈により他者を吟味し、評価を下す。普通でない人は自分が普通だと思っている人にどこまでも土足で踏み込む。これは他者を自分の力によって矯正することで得られる快感に酷く酔ってしまっているからなのと、己が社会適合者であると自己肯定したいからだ。  世の中の社会不適合者は正気で狂気を演じているのではなく、正気をもって社会と向き合っているから社会不適合者であり、世間が求める普通は「正

          村田沙耶香『コンビニ人間』-感想

          こんにちは。

          こんにちは、キリカです。趣味は読書とゲームと観光で、今はドイツに住んでいます。 日本語に触れる機会が少ないので、日本語力の向上と自分の思考記録の意味を含めて、今日から読んだ本の感想や最近あったこと、行った場所で思ったことを書き綴ります。 よろしくお願い致します。

          こんにちは。