コナン・ドイル『緋色の研究』-感想

コナン・ドイル『緋色の研究』を読んだ。日本の漫画にして近年高い人気を誇る『名探偵コナン』の影響もあり、私は数年前からシャーロック・ホームズの名を知っていたが、何処からか漂うその堅苦しさから手を出せずにいた。しかし、このような心配は杞憂であった。私は新潮文庫から出版された素晴らしい表紙デザインをした改訳版を手にした訳だが、ホームズの物言いや奇怪にも見える行動、そして事件当事者による回想。その全てにおいて難解な読書術を要求してくる訳ではなく、一、推理小説として気軽に楽しむことができた。

また、本作は推理小説の物語構成への理解を深める上で非常に効果的であったといえる。第一部では、事件の現場証拠とホームズのとる事件への反応を示し。第二部では事件当事者が事件に至るまでのワトスンの記録の形を取った経緯の説明。そして第三部ではホームズの推理と当事者の告白による真相の照合。この三段構造が素晴らしく整っていて美しい。そして何より表題の響きが良い...。

一世紀以上前に出版されたコナンドイルのシャーロックホームズ第一作『緋色の研究』。推理小説に興味あるはあるが手を出せていない人は、是非その手を伸ばしてみてはどうだろうか。

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