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ふわふわり。

 ふわふわり。

 私は竹の香りに誘われて、気づけば神奈川県の鎌倉駅を降りていた。
 タクシーに揺られ、10分ほどで着いた先は、趣のある荘厳な門扉を構えた報国寺であった。

 一歩足を踏み入れ、境内へと進んでいく。

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 私に染みついた埃臭い東京の香りを浄化させるように、自然の香りが私の鼻腔をくすぐった。

 竹林まで続く小道の庭には、奥ゆかしい時間の深みを感じさせるように、苔の生えた灯篭やこじんまりとしたお地蔵さんが鎮座している。

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 どこからか「かこん」という鹿威しの心地よい音が聞こえ、私は目を瞑って耳を澄ませた。

 小道を進むと、「ささ、ささ、」という笹が風で擦れる音が聞こえ、私は誘われるがままに足を運ぶ。

「あぁ、やっぱり気持ちいい」

 私は思い切り手を広げて深呼吸をした。
 竹林の箱庭に差す木漏れ日が、私の焦げ付いた心を寧静にしていく。

 ふわふわり。

 私の心が自然に溶け出し、宙を舞った。

竹林2


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