神様の骨
その人は
生まれてから
一度も
左手を開くことは
無かった
寝るときも
風呂に入るときも
不意に顔にめがけて
石が飛んできて
咄嗟に
避けようとも
転ぼうが
こぼそうが
突き飛ばされようが
注意されようが
その左手は
常に握りしめられていた
変わり者と言われ
両手が必要な
作業は
何一つ出来ず
内職のような
仕事で食いつなぎ
70歳を過ぎた頃に
転んで
階段から落ちて
死んだ
落ちて死んでも
左手は
開くことは無かった
そして
身よりもなく
死体は
火葬され
焼かれて
出てきた骨の
左手のあった
所には
左手の骨の中に
3センチほどの
小さな人間のような
神様の骨があったらしい
そんな
こんな
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