鳩山郁子オマージュ展 《羽ばたき Ein Märchen》 ｜Sachi｜鳩塔にてティータイムを
Text｜ヨネヤマヤヤコ
卓抜な筆力による幻想譚『羽ばたき』はペンによって描かれているのではなく、例えるなら紙面はなめらかな雪花石膏で、閉じ込められた物語を解放するべく姿かたちを削り出しているのではないかしら───。
今回霧とリボンの展覧会へは初登場となります木彫作家Sachi様。
鳩山郁子先生監修による、Sachi様の手彫りによる鳩の羽根はまさしく『羽ばたき』の臨場感溢れるひと齣からこぼれ落ちたかのようです。
風とともにそよぐ瞬間を留め、木彫だということを忘れてしまうほどに柔らかく精緻に表現された羽根。素材に使われた朴（ほお）の木は軽くなめらかな手触りが特徴です。
金属製スプーンと違い不意に音を響かせてしまうことなく軽やか。ティーポットへ茶葉を掬い入れる一瞬の所作を優雅な羽ばたきへと変えてくれます。
羽根の半分は阿仙液で染められ美しい塔鳩の構造色が再現されています。
漆黒の箱にU塔の紋章入りの六角星柄の包装紙に包んでお届けいたします。リボンをほどけばU塔のある丘に鬱蒼と茂るワイルドフラワーの花枝が添えられています。
菫色のリボンを結んだ闇夜色の栞には鳩山先生の直筆による金いろの作品タイトルとナンバーが瞬きます。
丘の上のＵ塔には、千羽の鳩が棲んでゐた。それらの鳩がいちどきに飛翔すると、空は眞暗になつた。そしてしばらくそれらの羽音がＵ塔を神々しく支配した。それらの羽ばたきは何となく天使の羽ばたきを思はせた。
（堀辰雄『羽ばたき』本文より）
千羽の鳩たちが一斉に飛翔する場面から現れたようなティーキャディ・スプーン。真っ暗な空から天使へ。羽ばたきの導入部分が再現されたラッピングは鳩山郁子先生が手掛けられています。
旧約聖書「創世記」でのノアの箱舟の物語では、放たれた鳩がオリーブの枝をくわえてノアの元へ戻ることで洪水が引いたことを知らしめます。新約聖書のイエスの洗礼では聖霊が鳩のように見える姿でイエスの上に降りて来ます。このことから鳩は平和を約束する象徴となりました。
一筋の光を見せる鳩の羽根。大切な方への贈り物としても素晴らしいモチーフとしてお勧めいたします。
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Sachi｜木彫作家
木彫作品の持つ温かみや風合いに惹かれて彫刻刀を握り始め、以来三十年間木彫の講師をつとめる。日々のガーデニングや畑仕事を通じて得た自然からの着想を元に、近年では暮らしの身近な場面で手に取りやすい小品の制作も手掛ける。 好きなチーズの種類はスティルトン。
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鳩山郁子｜漫画家・イラストレーター →Official Blog 『鳩小屋通信』
近刊に堀辰雄の初期ファンタジー小説をコミカライズした『羽ばたき Ein Märchen』（KADOKAWA / 第24回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品）そのほかの著書に『寝台鳩舎』（太田出版 / 第21回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品）『エルネストの鳩舎』 『カストラチュラ』（青林工藝舎）『スパングル』 『ミカセ』（復刊ドットコム）などがある。
twitter：@IkukoHatoyama
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ヨネヤマヤヤコ｜イラストレーター →Blog
香りの世界を偏愛するイラストレーター。カルチャー・ソロリティ《菫色連盟》にてサロン「香水談話室」を主催。現在はモーヴ街6番地にあるブライオニー荘に隠匿中。
Twitter｜@yoneyacco
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作家名｜Sachi
作品名｜U塔の鳩の羽根のティーキャディー・スプーン（8種）
作品監修、梱包および栞の制作｜鳩山郁子
［タイプ A］No.1～No.4 ｜羽根の根元側を染料で染めたもの
［タイプ B］ No.5～No.8 ｜羽根の先端側を染料で染めたもの
木彫／朴（ほお）の木・染料として阿仙・表面にニスを塗布
作品サイズ｜
［ティーキャディー本体］長さ約12cm×幅（一番広い箇所で）3.5cm
［外箱のサイズ］ 16.2cm×6.2cm×2.2cm
［リボン付き栞 （直筆による作品タイトルとナンバー入り）］ 12cm×4.5cm
制作年｜2021年（新作）
＊木彫作品について
本作品は一点一点を彫刻刀による手彫りの作業で仕上げております。染料の染めの行程では同じAタイプ、Bタイプの羽根でも表現上の意図として少しずつ差異が生まれるように仕上げております。
それぞれの羽根に異なる表情のあります事をご理解賜りました上でお客様のお手元に届いた鳩たちの羽根の個性をお楽しみいただけましたら幸いです。
＊ティーキャディー・スプーンは茶葉やスパイスなど乾燥したものを掬う用途にてお使い下さい。防水のニスを塗装してありますが、水に濡れた際は乾いた布で表面を拭いて下さい。
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