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三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|屋根裏部屋|Miss Moppet Dolls

 幼い頃から憧れた屋根裏部屋。きしむ階段を登ると三角屋根そのままの天井があり、薄暗く林檎やワインなど食料品が格納されていた場所。隠れんぼをしてみたりなにかをくすねて乳母に怒られてみたりする場所。忘れられていたトランクや肖像画が発掘されたりする場所。自分だけの部屋を持てなかったかつてのシェイクスピアの妹たちがこっそり文章をしたためた場所でもあります。

★アンティークリプロダクションドールについて
アンティークドールとは、製造より100年以上経った古い人形をさします。フランスのジュモー、ブリュといった会社のものや、少し後に大量生産され流行したドイツの人形などがあります。
リプロダクションドールとは、それらの人形を再現・復刻した製品のことを指し、原型からオリジナルで制作する創作人形とは異なる物です。今回は、アメリカの旧シーリー社製モールドを使用し、制作しました。

 じっと見つめていると、吸い寄せられてしまいそう。アイオライトのような深い菫青色の瞳。長い時を経て蘇った面差し、やわらかなブロンドはふっくらとした滑らかな頰を縁取り、短い前髪が瞳の美しさを際立たせます。

 今回Miss Moppet Dolls様が制作されたブリュジュンは心持ち頭身が低めとなっており、よりいっそう少女らしく抱きしめたくなる可愛さを放っています。シックなお衣裳はゴールドのシルクタフタのドレスにトワル・ド・ジュイ柄のシルクジャガード。

 ドレスとお揃いのゴールドのボンネットには布花のコサージュ。気の遠くなるほどの工程を経て生まれるビスクドール。屋根裏部屋に暮らした小公女セーラとお人形のように唯一無二の秘密の共有者となれるでしょう。

 蔦に覆われた八角形の窓枠からこちらを見つめるあどけない少女。ふわふわのプラチナブロンドにエクリュのブラウスに身を包んだ姿は森の妖精かしら。左手に封筒を持ち貴方へ差し出しているところです。どんなお知らせを届けてくれたのでしょう。

 レースのカーテンが風に揺れる白い紗の掛かった少女の部屋。頬杖をついた少女の髪には菫色のリボン。深遠な眼差しは創作に耽溺するかのよう。マットなゴールドの額縁には少女のお気に入りのカードがコラージュされています。

 そっと覗いてください。遊び疲れて午睡の最中でしょうか。まさしく天使のような寝顔の少女。安らかな眠りを妨げないようにふっくらとした頰を撫でてみたくなります。ボタニカルなテキスタイルに包まれて見るのはきらめく若葉色の夢でしょうか。

 屋根裏部屋には秘密を封じこめてくれる魔力が潜んでます。ちいさな少女の世界と貴方の世界を結ぶ窓。額縁を超えてそっとお部屋を訪ねてみませんか。


Miss Moppet Dolls|人形作家 →Twitter
2013年よりビスクドールの制作を始める。2017年より恋月姫人形教室「銀の翼」在籍。2018年、2019年、Silent Music「祈りの光」展。2020年、2021年、霧とリボン「アブサンの文法」「少女の聖域」展ほか、グループ展参加多数。

ヨネヤマヤヤコ|イラストレーター・ライター →Blog
香りの世界を偏愛するイラストレーター兼ライター。カルチャー・ソロリティ《菫色連盟》にてサロン「香水談話室」を主催。現在はモーヴ街6番地にあるブライオニー荘に隠匿中。
Twitter|@yoneyacco



作家名|Miss Moppet Dolls
作品名|アンティークリプロダクションドール Bru Jne

ビスク・グラスアイ・シルク・レース等
作品サイズ|本体約39cm
制作年|2022年(新作)
*別ショットの画像をオンラインショップに掲載しています

作家名|Miss Moppet Dolls
作品名|蔦の小部屋

ビスク・羊毛・布・プラスチック等
作品サイズ|13cm×12cm×2.5cm
制作年|2022年(新作)

作家名|Miss Moppet Dolls
作品名|小窓のある部屋

ビスク・羊毛・布・プラスチック等
作品サイズ|20.4cm×16cm×2.5cm
制作年|2022年(新作)

作家名|Miss Moppet Dolls
作品名|まどろみの部屋

ビスク・羊毛・布・ガラスビーズ等
作品サイズ|12.4cm×10cm×2cm
制作年|2022年(新作)

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