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少女の聖域vol.3|HIROKO|夢のあわい

 ひとりじゃないよ、いつだってそばにいるよ。

 イマジナリー・フレンド、分身、かつての自分。そのどれでもない。
 少女にとってぬいぐるみはかけがえのない存在であることは間違いない。
 ふわふわでやわらかく、何も言わずにいつもかたわらに居てくれる存在。手を触れるだけで無限の安心感が得られる、大事な相棒。
 時が経ち、ふわふわの毛が抜けてぼろぼろになっても、色がされて縫い目がほつれても、少女の魂の一部であり続ける。

 Daisy-Dというブランド名を持ち、ドールの衣装作家として絶大な人気を誇るHIROKO。彼女が制作する精巧な手作業に裏打ちされた衣装は、まるでアンティークのような時の営みをまとい、ドールに魔法をかける。
 彼女はぬいぐるみ作家としても、非常に魅力的で独創的な作品を創り続けてきた。
 HIROKOが創るぬいぐるみは、かつて誰かに愛された記憶をそのままに、新しい形をとって現れたかのような、時空を超えた不思議な存在感を備えている。

 ぬいぐるみが大好きで、ぬいぐるみになりたくて、少女は魔法の呪文を唱えました。ぬいぐるみになれた少女は、いつまでもその姿のままでいることができます。
 長い銀髪を三つ編みにした少女は、大好きなうさぎのぬいぐるみを真似て、うさぎの帽子を被ったぬいぐるみになりました。
 少女の瞳の片方は、うさぎと同じ赤い色。
 長い長い時を見つめる魔法の瞳。

 愛したうさぎのぬいぐるみは、何処へ行くにも少女と一緒だった。
 大きなリボンと柔らかいドレス。
 可愛がられた分だけ、魔法は強力になる。
 柔らかな手触りはほのかな温もりをたたえて、いつもかたわらに寄り添ってくれる。出かけた場所、過ごした時間。記憶はくすんだ手足の先に宿っている。
 少女にあげた赤い瞳は、永遠の約束。

 ぬいぐるみはHIROKOにとって、魔法そのものなのだ。
 今宵もぬいぐるみの魔法に守られて、少女は安心して眠る。
 大好きなうさぎと同じぬいぐるみになれますようにと願いながら。

HIROKO|人形服作家 →Twitter
「Daisy-D」というブランド名で人形の服を縫っています。ぬいぐるみは左手の怪我のため暫くお休みしていたのですが、「少女の聖域展vol.3~魔法大全」の魔法でまた制作することが出来ました。

高柳カヨ子|精神科医・元法医学教室助手・少女批評家 note
東京上野で生まれ育ち、東京理科大学理工学部応用生物科学科・信州大学医学部医学科卒業。法医学教室でDNA鑑定を専門とした後、精神科の臨床に進む。Bunkamuraギャラリー「新世紀少女宣言」キュレーション/『夜想ーゴス特集』インタビュー/『夜想ー少女特集』評論/『S-Fマガジンー伊藤計劃特集』アーバンギャルド論/パラボリカ・ビス「アーバンギャルド10周年記念展」キュレーション/gallery hydrangea 「『少女観音』~12人のアーティストが描く篠たまきの幽玄世界」キュレーション。
あらゆる時代と時間を超えた少女たちに捧げる少女論「少女主義宣言」をnoteにて連載中。霧とリボン運営の会員制社交クラブ《菫色連盟》にてトークサロン「少女の聖域」を主宰、「少女性」をテーマに展覧会《少女の聖域》を定期開催している。



作家名|HIROKO
作品名|ぬいぐるみ少女【非売品】

ファー・ポリエステル綿・綿ローン・レース等
作品サイズ|20cm
制作年|2022年(新作)

作家名|HIROKO
作品名|うさこ

ファー・ポリエステル綿・綿ローン・レース等
作品サイズ|20cm
制作年|2022年(新作)

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