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少女の聖域vol.3|トレヴァー・ブラウン|少女が少女で在るために

 少女は戦う。誰のために?
 少女は変身する。何のために?
 少女は少女で在るために、魔法をかける。

《少女の聖域vol.3〜魔法大全》会場風景(以下同)

 ラバースーツに身を包み、クラゲのスカートを揺らしながら、呪文を唱えれば、もう怖いものはない。
 思いつく限りの魔法のアイテムは既に手に入れた。古今東西、良きものから悪しきものまで。

 3回目の開催となる《少女の聖域》のメインビジュアルを飾ってくれるのは、今回も引き続きトレヴァー・ブラウンの作品である。
 可愛い、不気味、残酷、脆い、強か。少女のあらゆる側面をあるときはフェティッシュに、またあるときはユーモラスに描き出すトレヴァー・ブラウンの正確無比な筆致は、聖域の象徴に相応しい。

 「魔法大全」のサブタイトルを以て、賑々しく登場したその姿。
 まさにそれ自体が魔法の化身の如く、力に満ち溢れた堂々たるものである。笑う骸骨とリボンを着けた毒蛇、そして単眼の浮遊する魔物たちを引き連れて、印を結ぶ少女は、最強の戦士のようだ。

 戦う相手は目に見えるものばかりではない。少女を縛り付ける常識や圧力、隙あらば組み込んで消費しようとする経済構造、年齢や性別に立ちはだかる壁。それら全てと戦い続けなければ、少女で在ることができないのは、間違っている。 

 窮屈な社会に喝を入れ、少女を少女のもとに取り戻そう。 トレヴァー・ブラウンの描く少女は、そのための護符となる。

 少女の背後から放射線状に伸びる光線は、菫色のストライプ。まるで聖域に通じる小部屋の壁紙から放たれたようだ。
 中央に輝く第三眼は、少女の虹彩と呼応して輝き、魔法の言葉を周囲に撒き散らす。

 好きな服を着よう。華やかなアクセサリーを身につけよう。可愛いものを愛でよう。厚底の靴でこの時代を走り抜けよう。
 いまこそ魔法で不在の少女を解き放とうではないか。

trevor brown|painter →HP
born in london, england, 1959 - worked in graphic design and advertising agencies - moved to japan in 1993 and developed the babyart style.
a mix of cute and dangerous influences - several books published by editions treville and exhibitions in los angeles, italy and japan - collaborated in recent years with nananano, urbangarde and miho matsuda

高柳カヨ子|精神科医・元法医学教室助手・少女批評家 note
東京上野で生まれ育ち、東京理科大学理工学部応用生物科学科・信州大学医学部医学科卒業。法医学教室でDNA鑑定を専門とした後、精神科の臨床に進む。Bunkamuraギャラリー「新世紀少女宣言」キュレーション/『夜想ーゴス特集』インタビュー/『夜想ー少女特集』評論/『S-Fマガジンー伊藤計劃特集』アーバンギャルド論/パラボリカ・ビス「アーバンギャルド10周年記念展」キュレーション/gallery hydrangea 「『少女観音』~12人のアーティストが描く篠たまきの幽玄世界」キュレーション。
あらゆる時代と時間を超えた少女たちに捧げる少女論「少女主義宣言」をnoteにて連載中。霧とリボン運営の会員制社交クラブ《菫色連盟》にてトークサロン「少女の聖域」を主宰、「少女性」をテーマに展覧会《少女の聖域》を定期開催している。



作家名|トレヴァー・ブラウン
作品名|Magik

油彩・キャンバス
サイズ|72cm×60cm
*額なし
制作年|2022年(新作)

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