見出し画像

少女の聖域vol.3|高橋邑木|流転する様相

 古来ギリシアの時代から信じられてきた世界観に、全てのものは四大元素(エレメント)に司られているという概念がある。それは魔法や錬金術にも受け継がれ、土、水、火、風という4つのエレメントの割合や強さによって、事象は確定されているとされた。

《少女の聖域vol.3〜魔法大全》会場風景(以下同)

 高橋邑木が制作する陶磁器。
 この陶芸という分野こそ、4つのエレメント全てが含まれたまさに魔法のような芸術である。
 素材となるのは、土。原土となる良質な粘土を手に入れたら、水簸という水を用いる精製が欠かせない。この水簸の加減で完成した時の風合いが変わるので、大事な工程だ。そして形ができたら、高温の窯の中で火を入れる。火が十分に回るには空気が必要。風を送って火の力を増す。
 四大元素が生み出した陶芸こそ、魔法の賜物である。

 毒林檎を食べて眠り続ける白雪姫を、異形の姿で表現したこの作品は、陶芸という分野の凄みをみせてくれる。
 細部まで作り込まれた花弁や、金色の果実だろうか、いずれも磁器の硬さとは相反する瑞々しい質感に驚かされる。

 魔法陣のような菫色の花に囲まれて胎児のように眠りながら、狼の頭と人の体を持った存在は、やがて目覚めたときにどんな姿になっているのだろうか。

 身に着けるだけで魔力が倍増しそうなネックレスとピアスは、こちらも不思議な造形である。
 高橋が創り続けている「BABY」は、昔一緒に遊んだ人形が天使や悪魔の姿を借りて会いにきたような、楽しいシリーズだ。ウサギやクマに化けているのもご愛嬌。

 磁器の白に金色の絵付けが映え、1点加えただけで個性的な着こなしになれる。

 魔法使いに眷属は欠かせない。
 猫に羊にフェネック狐ときたら、これはもう最強の守りと言えよう。
 光を反射する優美な白か、光を吸い込む闇のような黒か、使いたい魔法に応じて選ぶのもいい。

 着け心地の良い美しい紐のネックレスと、単体でも存在感抜群のリング。
 いつでも眷属と共に出かけられるのは心強いものだ。

 4つのエレメントが錬成された高橋邑木の作品で、少女を守る魔法は万全となる。

高橋邑木|陶磁造形家 →
2015年、多摩美術大学工芸学科陶専攻卒業。「奇妙な世界(#oddart)」をテーマに陶磁器の作品を展開しています。
2021「カオビ」(ルンパルンパ/石川)
2020「Little Creatures 雛祭り」(パラボリカ・ビス/東京)
2019「小さな神さま」(REIJNSHA GALLERY/東京)
2018「Humanimal」(ヴァニラ画廊/東京) 

高柳カヨ子|精神科医・元法医学教室助手・少女批評家 note
東京上野で生まれ育ち、東京理科大学理工学部応用生物科学科・信州大学医学部医学科卒業。法医学教室でDNA鑑定を専門とした後、精神科の臨床に進む。Bunkamuraギャラリー「新世紀少女宣言」キュレーション/『夜想ーゴス特集』インタビュー/『夜想ー少女特集』評論/『S-Fマガジンー伊藤計劃特集』アーバンギャルド論/パラボリカ・ビス「アーバンギャルド10周年記念展」キュレーション/gallery hydrangea 「『少女観音』~12人のアーティストが描く篠たまきの幽玄世界」キュレーション。
あらゆる時代と時間を超えた少女たちに捧げる少女論「少女主義宣言」をnoteにて連載中。霧とリボン運営の会員制社交クラブ《菫色連盟》にてトークサロン「少女の聖域」を主宰、「少女性」をテーマに展覧会《少女の聖域》を定期開催している。



作家名|高橋邑木
作品名|眠る狼子

磁器・額
作品サイズ|35cm×27cm×5cm
制作年|2022年(新作) 

作家名|高橋邑木
作品名|BABYネックレス(4種)

磁器・真鍮
作品サイズ|モチーフ:縦4cm×横2.5cm/チェーンの長さ:70cm
*箱入り
制作年|2022年(定番デザイン・新制作)
*オンラインショップに個別ショットを掲載しています

作家名|高橋邑木
作品名|BABYピアス(4種)

磁器・真鍮
作品サイズ|モチーフ:縦2cm×横2cm
制作年|2022年(定番デザイン・新制作)
*オンラインショップに個別ショットを掲載しています

作家名|高橋邑木
作品名|animalネックレス(6種)

磁器・真鍮・紐
作品サイズ|モチーフ:縦2.5cm×横3cm/紐の長さ:64cm
*箱入り
制作年|2022年(定番デザイン・新制作)
*オンラインショップに個別ショットを掲載しています

作家名|高橋邑木
作品名|animalリング(6種)

磁器・真鍮
作品サイズ|モチーフ:縦2.5cm×横3cm/リング:調整可能
*箱入り
制作年|2022年(定番デザイン・新制作)
*オンラインショップに個別ショットを掲載しています

この記事が参加している募集

オンライン展覧会

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?