少女の聖域|Miss Moppet Dolls|薔薇色の結晶
Text: Kayoko Takayanagi
紫のすみれ、少女の象徴のような花。
儚くつつましいイメージとともに、たくましく強く、野に咲く花でもあります。
.....Miss Moppet Dolls
硬く冷たく、壊れやすい。
少女はビスクドールによく似ている。
19世紀末にジュモーやブリュといったブランドを中心に黄金時代を迎えたビスクドール。磁器で作られた顔や手足は磁器であるが故に、落とすなどの過度な衝撃が加わると割れてしまう。西洋のアンティークだったビスクドールは、この何十年かの間に球体関節人形の製作方法のひとつとして日本に根付いた。とはいえ作る過程でも愛でる過程でも、細心の注意を払わなければならないビスクドールは、やはり特別な存在だ。
すべすべで冷んやりとしたポーセリンスキン。少女の薔薇色の頬を模しているだけでなく、強いようで脆く、弱いようで強かな、少女という存在自体をなぞっていると言えよう。
継続して作り続けている顔のブローチで、お顔がビスクでできています。
完成に近づくにつれ、ひとりひとりに個性や物語が浮かんできます。
黒いボンネットの双子の姉妹は、少し勝気そうな表情の姉と、おっとりとした妹。白いボンネットに長い金髪の少女は、森の中に自分だけの秘密の庭園を持っています。レースの衣装をまとった白い髪の少女は、氷のお城に住んでいるのです。
.....Miss Moppet Dolls
初めて出会ったMiss Moppet Dollsの作品は、ビスクで作られたブローチだった。ボンネットを被りふわふわの髪に縁取られた薔薇色の頬の少女たちは、どこか懐かしい印象を持ちながら、ひとつひとつしっかりとした個性を放っていた。
アンティークドールのリプロダクションを学んだことがあるというMiss Moppet Dollsのビスクドールは、確かにそういった王道のビスクドールの雰囲気を保ちつつ、より少女で在ることに自覚的であるように思う。
かつてのビスクドールは、少女自体というよりも少女の良き友人としての存在であり、現在は美術品としての価値を重んじられているとはいえ、本来は子供のための玩具として量産された。
それに対してMiss Moppet Dollsのビスクドールは、それぞれが独立した個性を持った存在であり、現代にアップデートされた少女像として創られていると言ってもいい。
人形(ひとがた)としての少女は、少女性を注意深く抽出して結晶化した存在なのだ。
個性豊かな少女のブローチ。
ミクストメディアで制作された彼女たちは、手に取れば物語を語り出してくれそうである。ぷっくりした愛らしい頬と快活な瞳。おしゃれでおしゃまな少女のおしゃべりに耳を傾けてみてほしい。
もうひとつのブローチに表現された美しい眼の持ち主は、どんな姿をしているのか。想像するのが楽しみである。
ヴィクトリア朝の英国では、恋人の瞳を描いた装飾品を身に着けることが流行したそうです。これは私なりのLover’s Eye、平面ではなく立体的な瞳のブローチです。
.....Miss Moppet Dolls
そしてオールビスクのドールは、慎ましくも強靭な少女性を体現するかのように、毅然としていながらもしなやかで優しい。菫のヘッドドレスに黒と菫の衣装をまとった少女は、儚げなその瞳までも菫色に染めて、少女の聖域を守ってくれているのだ。
Miss Moppet Dolls | 人形作家 →Twitter
2000年ころから人形制作を始める。2013年よりビスクドール(主にアンティークドールのリプロダクション)を学ぶ。不定期にクラフト、ドール関係のグループ展に参加。2018年・2019年Silent Music「祈りの光」展参加。2017年より恋月姫人形教室「銀の翼」所属。
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作品名|Viola(ヴァイオラ)
ビスクドール(オールビスク球体関節人形)
制作年|2020年(新作)
作品サイズ|約36㎝
*ヘッドドレスとブーケ付き
*オンラインショップに別ショットの画像掲載しています
販売期間【2020年7月26日(日)10:00〜8月2日(日)23:00】
販売は先着順
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作品名|ドールフェイス・ブローチ(4種)
磁器・羊毛・布などによるミクストメディア
制作年|2020年(新作)
作品サイズ|縦9.5cm〜10.5cm×横6.5cm〜7.5cm
*各ブローチの詳細はオンラインショップに明記しています
販売期間【2020年7月26日(日)10:00〜8月2日(日)23:00】
販売は先着順
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作品名|Lover’s Eye ブローチ
磁器・ガラス(スワロフスキー)
制作年|2020年(新作)
作品サイズ|3.5cm×3.8cm
販売期間【2020年7月26日(日)10:00〜8月2日(日)23:00】
販売は先着順
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