鳩山郁子オマージュ展 《羽ばたき Ein Märchen》 ｜合田ノブヨ｜結晶世界の少年たち
Text｜ヨネヤマヤヤコ
鳩山郁子先生の紡ぐ数々の幻想譚を合田ノブヨ様は結晶化させアンティークのファーマシーボックスに模した小匣に封じ込めてくださいました。
はじめて合田ノブヨ様のオブジェ作品と出会ったときの感動は忘れもしません。小匣のなかに意識がトランスポートして少女時代の夢想にうっとりと包み込まれてしまう。深遠でフラジイルな佇まいでありながら心の奥底にある記憶と呼び合い、星の引力のように見るものを捉えて離さないのでしょう。わたし自身も小匣に住むちいさな妖精たちに心を囚われたままです。
ファーマシーボックスをそっと開けてみましょう。内匣を横にスライドさせると抜けるような空色と草原と鳩が現れます。
ワイルドフラワーの草叢から双眼鏡を構え跪く少年。3羽の白い鳩たちは彼を護衛するかのように飛び回ります。鳩塔へ通じる道は宝石が敷き詰められていて水晶の塔は大聖堂の如く荘厳な美しさを湛えています。透き通った水晶の秘密基地に住む少年とU塔に潜伏するジジが交錯するオブジェ作品です。
水晶をお城に見立てたコラージュ作品《城の入り口》や、心の奥にあるお城を水晶で表現したオブジェ作品《聖域》など合田様の作品に度々登場する水晶の塔。
人にとっては取るに足らないような宝物やすりぬけてしまいそうな思い出や儚い記憶を結晶化できたら。少年少女たちの心の聖域として表現されています。
少年と鳩たちが根城にする水晶の塔は少年たちにしか入ることができないのでしょう。塔内の螺旋階段も水晶製で、縞模様の七色の光が差し込み、軽やかな靴音を響かせるのでしょう。
＊
もう一つの小匣もそっと開けてみましょう。煌々と星がこぼれ落ちる夜空が見えてきました。鳩の塔に続く宝石の道は銀河へ続いているようです。
少年たちの想像の翼が有れば、流れ星にまたがり疾走することも可能。惑星も遊戯用ボールに変えてしまいます。
少年は貴方を誘うようにやさしく微笑みかけています。ふとその笑顔に「一塊りになって、共通な一つの夢を見ていた」ころの、キキが永遠に記憶にとどめておきたいであろうジジの姿を重ねてしまうのです。
永遠の安らぎに満たされた少年たちの結晶世界へと自在に往来できる夢の装置です。
＊
合田ノブヨ｜コラージュ作家 →Twitter
高校在学中、TVドラマの仕事で訪れたロンドンで、ヴィクトリア時代のクロモスに魅了されコラージュを制作。1992年作品を発表。以降ギャラリーや新宿伊勢丹等デパートでの展覧会、本の装画や雑誌、新聞の挿画等の仕事をしている。15年間活動を休止していたが、2017年より再開。画集は3冊出版されている。
＊
ヨネヤマヤヤコ｜イラストレーター →Blog
香りの世界を偏愛するイラストレーター。カルチャー・ソロリティ《菫色連盟》にてサロン「香水談話室」を主催。現在はモーヴ街6番地にあるブライオニー荘に隠匿中。
Twitter｜@yoneyacco
＊
＊
＊
作家名｜合田ノブヨ
作品名｜秘密基地にて
コラージュ・着彩
紙・スワロフスキーラインストーン・ドライグラス・ガラス
作品サイズ｜約9.8×5.5×2.7cm
制作年｜2021年（新作）
＊
作家名｜合田ノブヨ
作品名｜星明かりの道
コラージュ・着彩
紙・スワロフスキーラインストーン・フランスのヴィンテージ土ビー玉
作品サイズ｜約9.8×5.5×2.7cm
制作年｜2021年（新作）
＊
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？