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少女の聖域|トレヴァー・ブラウン|リボン同盟ふたたび

Text: Kayoko Takayanagi

girls are:
a source of wonder and a source of inspiration
 .....trevor brown

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 少女が優しく儚いなんて、誰が言い出したのだろう。もちろんそれもあっていい。可憐で繊細な側面もまた、少女ならではの特徴のひとつだ。少女は確かに壊れやすく傷つきやすい存在である。だからこそ少女が少女たり得るためには、強靭で柔軟な精神性と凶暴な感性が必要なのだ。

 少女は年齢に依存しない。少女は性別にも依存しない。少女は少女であることにのみ忠実なのである。では少女であるとはどういうことか。
その答えのひとつが、ここにある。

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 トレヴァー・ブラウンの描く少女は、冷静だ。一見残酷に扱われ被虐的に見える彼女たちも、実は透徹した眼差しで事態を見据えている。カワイイとグロテスクは相反するものではない。きれいはきたない、きたないはきれい。極端な価値観が両立するところに、少女というものの矛盾した魅力が現れてくる。

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 ロンドン生まれの写真嫌いでシャイなイギリス人は、1993年から日本に在住して活動している。20年以上前、一部のフェティッシュアートのファンにのみ知られていた彼の作品は、2010年に上梓された『Trevor Brown’s Alice』を契機に少女たちの絶大な支持を得る。その後も『Girl’s Warー女の子戦争』『PANDORA』と画集を発表するたびに、トレヴァーの作品は少女のファンが増えて現在に至るが、それは何故か。
 
 彼の描く少女は他者からの評価に依存しない。清々しいほどに、少女は少女であることに自覚的なのである。そのことが現実の少女たちを勇気付ける。シニカルでどことなくユーモラスなトレヴァーの作品は、少女を希求し続けることこそが少女という存在そのものであるということを教えてくれる。

 今回《少女の聖域》のためにトレヴァー・ブラウンが選んだモチーフは、リボン。リボンは確かに少女の象徴に相応しいアイテムだ。結ぶ・解くという行為は密やかな約束を暗示させる。巻きつけられたリボンは包帯のように傷を覆い、その下に滲んでいるであろう血の存在を隠す。

 ナースもまたトレヴァーの長年の重要なテーマである。彼の作品の中で様々なシチュエーションで描かれてきたナースだが、自らに巻いたリボンをこちらにも巻いてくれるのは、少女同士の連帯感ゆえか。

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 全体を寒色で彩るのは、トレヴァーの作品としては珍しい部類に入るだろう。濁りがなくどこまでも澄み渡った青。虹彩までブルーに統一された銀髪の少女は、《少女の聖域》を守る番人のようでもある。そうすると手にしたリボンは、立ち入り禁止の結界を張るためのものかもしれない。

 自らの聖域を守るために、少女はリボンを手に戦う。

trevor brown | painter →HP
born in london, england, 1959 - worked in graphic design and advertising agencies  - moved to japan in 1993 and developed the babyart style.

a mix of cute and dangerous influences - several books published by editions treville and exhibitions in los angeles, italy and japan - collaborated in recent years with nananano, urbangarde and miho matsuda

00_通販対象作品

作品名|ribbon
oil on canvas
制作年|2020年(新作)
作品サイズ|53cm × 45cm
*額なし
販売期間【2020年7月26日(日)10:00〜8月2日(日)23:00】
販売は先着順

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00_MauveCabinet_ラスト共通

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