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少女の聖域vol.2〜跳躍と疾走

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オンライン開催 霧とリボン企画 高柳カヨ子プロデュース《少女の聖域vol.2〜跳躍と疾走》|2021.7.22〜30 *7/25(水)〜7/27(金)休|少女がお淑やかなんて誰が… もっと読む
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#絵画

少女の聖域vol.2|トレヴァー・ブラウン|誰も追いつけない

TextKayoko Takayanagi  少女は駆ける。幻想の中を。  少女は跳ぶ。軽く軽く、まるで重力などないかのように。  少女は走る。誰も捕まえられない速度で、どこまでもどこまでも。  トレヴァー・ブラウンの描く少女は強い。  向こうが透けて見えるくらい薄く繊細で儚くか弱い少女など、そこにはいない。  どんなことをしても/されても、少女たちは平然とした顔をしている。それは何者にも侵食されないという毅然とした決意を秘めているからかもしれないし、または少女の王国

少女の聖域vol.2|白玉ゆり|バタフライ・エフェクト

TextKayoko Takayanagi  まるで重力などないかのように蝶は飛ぶ。  舞い上がり舞い降りて、吹き寄せられるように光の方へ。  少女はまるで光に溶けていくようだ。風になびく髪とともに、伸ばした手はそのままふわりと空に浮かんでしまいそう。  枷(かせ)や箍(たが)から解き放たれて自由に飛んでいきたい。自分を縛る全てのものから離れられたら、どんなに軽くなれるだろう。幾千万もの蝶の群になれば、光を集めて舞い上がることができる。  その先には希望しかない。

少女の聖域vol.2|DAY 1

TextKIRI to RIBBON  今年も少女たちの夏がやってきました。  昨年大好評を頂いた、高柳カヨ子プロデュース展がモーヴ色の霧の中を駆け抜ける少女を先頭に、菫色の小部屋に帰ってきました。  DAY 1の本日、聖域の扉をくぐり、少女たちに会いにきて下さった皆様に心より御礼申し上げます。 * *  オンライン開催ならではの趣向として、アーティストの皆様のお声をお届けする恒例の《Artist’s Tiny Letter》——本展の3つの質問は、展覧会テーマ「

少女の聖域vol.2|永見由子|たとえ苺がなくても

TextKayoko Takayanagi  少女で在るということは、いばらの道に等しい。  常識の中に押さえこもうとするあらゆる外圧と戦いながら、世界の果てを目指すことだからだ。  傷つき、戸惑い、迷い、それでも少女は進むことをやめない。  その翼に力を蓄えながら、いつでも高く速く飛び立てるように、その機会をうかがっている。  少女を侮ってはいけない。その可能性と瞬発力を見誤ってはいけない。  “Good girls go to heaven, bad girls

少女の聖域vol.2|DAY 2

TextKIRI to RIBBON  夏の緑が眩しく揺れる奥、モーヴ色の倦怠の中で今日も少女たちはそれぞれの時間を生きています。  DAY 2——いかがでしたでしょうか。お楽しみ下さいました皆様に感謝申し上げます。  プロデューサー高柳カヨ子先生のテクストでアーティスト作品を紐解く本展。ここオンライン・ギャラリー「MAUVE CABINET」に高柳先生がご在廊するイメージで、まとめ記事では毎日異なるコーディネート写真をお披露目しています。背景の緑も美しい一枚と共に、

少女の聖域vol.2|Karte|傷痕の記憶

TextKayoko Takayanagi  怒り、悲しみ、憤り、不安。  閉じ込めておきたい思いや辛い記憶は誰にだってある。大人になることでそれらを手放してしまったら、傷付いた少女は何処に行けばいいのだろう。  他人と同じようにできない。他人に合わせることができない。どうしてできないのと言われても、わからない。これが自分だから。  歩調を合わせることができないから、一人で居残りをさせられる。誰もいなくなった教室で。誰もいない広い部屋で、たった一人で少女は過ごす。  

少女の聖域vol.2|DAY 3

TextKIRI to RIBBON  訪れたいと思った時に、いつでも辿り着ける場所。内なる少女を自由に羽ばたかせることのできる場所——今日も菫色の聖域の扉が開かれています。  展DAY 3をお楽しみ下さいました皆様に感謝申し上げます。 * * * * * *  臈長けた精神性がヴェールのように白磁の肌を覆うruff様の少女。少女でい続けることを強い意志で選択するKarte様の少女。モーヴ色の空間で、それぞれの少女たちが自身の時間を生きています。  前半三

少女の聖域vol.2|きむらももこ|あの日の夏空

TextKayoko Takayanagi  記憶の中の少女はいつも風に吹かれている。  抜けるような青い空。積乱雲に飛行機雲。降り注ぐ日差し。  光が強い分だけ、影が濃くなる。  いつか見たはずの風景の中に立つ少女は真っ直ぐこちらを見つめているが、その瞳には誰も映っていない。  それは存在しない記憶だから。  「いつかの風景」と名付けられた2つの作品。  そこに描かれているのは、つばの広い麦わら帽子を被り黒いワンピースを着た少女である。襟に付いた白いフリルやレース

少女の聖域vol.2|DAY 5

TextKIRI to RIBBON  夏の倦怠は追憶の手触りのよう——思い出の風景に鮮やかな影を落とす少女たちが待っていました。菫色の門をくぐり、展DAY 5を訪れて下さいました皆様に御礼申し上げます。 * * * * *  青空の下、吸い込まれそうな漆黒の瞳で私たちをまっすぐ見つめるきむらももこ様の少女たち。後藤きき様のモード作品では、少女たちの夢とメランコリーが木馬と一緒に回ります。  終幕が近づく菫色の聖域には、夏の濃い影を跳ね返すように、少女たちがい