少女の聖域vol.2|白玉ゆり|バタフライ・エフェクト
Text|Kayoko Takayanagi
まるで重力などないかのように蝶は飛ぶ。
舞い上がり舞い降りて、吹き寄せられるように光の方へ。
少女はまるで光に溶けていくようだ。風になびく髪とともに、伸ばした手はそのままふわりと空に浮かんでしまいそう。
枷(かせ)や箍(たが)から解き放たれて自由に飛んでいきたい。自分を縛る全てのものから離れられたら、どんなに軽くなれるだろう。幾千万もの蝶の群になれば、光を集めて舞い上がることができる。
その先には希望しかない。
もつれた糸を解きほぐしてつないでみる。
三つ編みを解くように少しずつ、慎重に。
自分を縛っていたのは、もしかしたら自分自身なのかもしれない。
いろんな蝶の色や形。それぞれの長所も短所も個性そのもの。絡め取られていると思い込んでいたしがらみも、手放してみる。
つないでいた糸を切って自由にしてあげれば、この闇の中でさえ蝶はいつでも飛び立てるだろう。影無くして光は存在できないのだから。
少女は闇の糸から光を紡ぐ。
白玉ゆりは変化を恐れない。まだ知らぬ可能性を求めて、様々な技法や作風を模索しながら進化し続けている。しかしどんな形を取ろうとも、彼女が描く少女は一貫してその真摯な眼差しで問いかけてくる。
昨年のエッチングに続き、今年の作品はフルデジタルで作成された。エッチングの硬質で繊細な線の特徴を残しつつ、さらにその表現力を増した作品は、デジタルと言えどもそれぞれ唯一無二の一点ものだ。
少女は踊る。過去と未来を連れて、かけがえのない現在を確かめるために。喜びも悲しみも両手に抱えたまま、微笑みながら踊り続ける。
たとえ夢が覚めても、幾多の障壁が行く手に立ちはだかったとしても、軽やかに蝶のように身を翻して先に進んでみせる。
風に逆らうでもなく、流されるでもなく。
白玉ゆりの少女に抵抗や叛逆は似合わない。こうあるべきという押し付けもしなやかにすりぬけてみせよう。
不在の少女が手を差し伸べる。さあ、飛んでごらんと。
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白玉ゆり|画家 →Twitter
2019年より作家活動を始めました。企画展を中心に作品を発表しています。曖昧に揺れ動く心象を線で結び、繋げています。
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作家名|白玉ゆり
作品名|ごらん ここはまだ 夢の続き
インクジェットプリント・半光沢紙
作品サイズ|21cm×29.7cm
額込みサイズ|22.8cm×31.5cm
制作年|2021年(新作)
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作家名|白玉ゆり
作品名|影のダンス
インクジェットプリント・半光沢紙
作品サイズ|21cm×29.7cm
額込みサイズ|22.8cm×31.5cm
制作年|2021年(新作)
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作家名|白玉ゆり
作品名|光のドレス
インクジェットプリント・半光沢紙
作品サイズ|20cm×20cm
額込みサイズ|21.8cm×21.8cm
制作年|2021年(新作)
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