少女の聖域vol.2|Karte|傷痕の記憶
Text|Kayoko Takayanagi
怒り、悲しみ、憤り、不安。
閉じ込めておきたい思いや辛い記憶は誰にだってある。大人になることでそれらを手放してしまったら、傷付いた少女は何処に行けばいいのだろう。
他人と同じようにできない。他人に合わせることができない。どうしてできないのと言われても、わからない。これが自分だから。
歩調を合わせることができないから、一人で居残りをさせられる。誰もいなくなった教室で。誰もいない広い部屋で、たった一人で少女は過ごす。
大人になればいいのにと言われても、少女は少女で在ることを手放さない。ひたむきに、頑なに、少女で在り続ける。
大きなリボンとふくらんだ袖に守られ、その強い眼差しに決意を秘めて。
少女の聖域は、秘密の園。大人は誰もその場所を知らない。
どんなに体が現実に縛られようとも、少女の心はいつでもそこに行くことができる。空っぽの体は現実に置き去りにしたままでいい。そこには消えない炎が永遠に燻り、いつの日か世界を燃やし尽くすことを夢見る。薄紅色の鉄条網のような結び目は、相容れない日常から隔絶してくれる結界。
不在の少女に守られた園で、少女の心はうつむくことなく、常に毅然とこうべを上げていられる。
閉じ込められたのではない。自ら閉じこもるために、その扉を守る。聖域を侵す何者も通さない。積み木の門は簡単に崩れてしまうし、木の柵だって折れるだろう。それでもその先へは行かせない。
暗闇の中で傷付いた少女が守るのは、大事な記憶。命尽きるその日まで、誰にも渡さず抱えていく。
閉ざされた家の周りを回り続けることはもうやめよう。少女ならどんな障壁も飛び越えられるのだから。
Karteが描く世界には、常に痛みが存在する。
その痛みを忘れないでいてほしい。痛みはやがて弱きものに対する優しさとなり、強きものに対峙するための武器となる。
血を流しながらいばらの道を歩んできた記憶が、少女という傷痕をあなたの目に焼き付ける。
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Karte|画家 →Twitter
大人になるわたしの代わりに
寂しさや悲しみという傷を負ってくれた
心の中に住む子供のままのわたし。
彼らが安心して自分の傷を受け入れ癒せるような、
そんな場所を描いています。
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作家名|Karte
作品名|秘密の園
アクリル・板パネル
作品サイズ|24.2cm×33.2cm
制作年|2021年(新作)
*額なし
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作家名|Karte
作品名|居残り
アクリル・板パネル
作品サイズ|18.2cm×25.7cm
制作年|2021年(新作)
*額なし
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作家名|Karte
作品名|門番
アクリル・板パネル
作品サイズ|25.7cm×18.2cm
制作年|2021年(新作)
*額なし
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