彼氏(ガジェオタ)と私(放送オタク)
私の彼氏は少し言い過ぎるところがある。
だが、それがいい。
なぜかと言うと、私も舌禍・筆禍が過ぎるからだ。
彼氏と出会ったのは今から7年前。
学部は違うけれど、共通の友人経由で知り合った。
当時、私は高3の時から使っていた1台目のスマホ(AQUOS Phone IS11SH)を使っていて、激しすぎる電池消耗に悩んでいた。
私の家はお金が無かったので買い替えたくともできず、充電しながらパズドラをするのに精一杯だった。
彼氏はガジェオタである。
PC関連に始まり、WindowsなどのOS、携帯、家電に詳しい。最近は、カラオケの機種特定ができるようになった、いわば機械の変態だ。
根っからのAppleアンチ。機械系の学部にいた人なので、そんなことは基本知識なんだろうなと私は勝手に思っていた。
そんな彼氏と私のファーストコンタクトは、電池消耗が激しすぎる携帯に関してだった。
「それ、携帯換えたほうがいいよ」
会っていきなりそう忠告された。そんなことは使っている本人が一番分かっている。なんかよく分からないけど馬鹿にされたことは確かだというのは分かったので、すかさずこう切り替えした。
「だったら機種変のお金出してくれない?」
そう言うと、彼氏は黙ってしまった。
普通、初対面というのは「はじめまして」から始まる。だが、私達の場合はそれがなかった。いや、覚えていないだけで実際はあったのかもしれない。
その後、これまた違う学部の友人が来て、そこから話が盛り上がってTwitterを勝手にフォローされたりLINEを交換したりした。
最初は「女ったらしだな」と思った。
彼氏にフォローされるまで、Twitterのフォロワーにはリアルで繋がっている人はほぼほぼいなかった。年賀状のやり取りとかはしている人等はいたが、それでも交流はTwitterから。
コイツはグフのTシャツを着ているからオタクであることは間違いないだろうけど、それなりにコミュ力があるタイプのオタク(つまり陽キャ)で、私と住んでいる世界が違うんだろうな、というのが第一印象だった。
そこから進展があったのが2回。
1回目は私がバイト先の先輩に怒られてかなり落ち込んだ時。2回目は彼氏が所属していたサークルで内輪もめが起こった時だった。
いずれも、変にアドバイスを押し売らずに話をとことん聞くように心がけていた。
これを機に、彼氏に対する印象が変わった。
ちなみにこの時はまだ付き合っていない。「気になる異性」程度の友人だった。
決定打となった第3の進展は10月9日。
その日はゼミで、学祭の準備をしていた。
授業中に彼氏からLINEが来る。
「放課後、学食の上に来てほしい」
たった一文で、ここまで人をドキドキさせるものなのかと思った。
時間が迫るたびに身体の熱が帯びてくる。
授業が終わり、指定された場所へ行く。
足がフラついてどうにもならないので、途中まで友人に付き添ってもらった。
学食の上のラウンジには彼氏が待っていた。
「ここまで俺のためにしてくれる人初めてで、いつの間にか好きになってた。だから、付き合ってくれないか」
そんなことを言っていたような気がする。
お互い緊張していたあまり、私もあまりよく覚えていない。
ただ分かっていたのは、彼氏も私も互いに惚れていた。
「変人」だと揶揄されて生きてきて、下手すりゃ釣り合う相手すらいないんじゃないかとさえ思っていた。
それが不思議なことに、同じ大学で、かつ、同じ県で釣り合えそうな人と出会うなんて、偶然にしてはあまりにも出来すぎていた。
私はその告白を迷わずに承諾した。
それから、いろんなことを話した。
びっくりしたのが、放送オタクでしか分からないネタを知っていたということだ。
彼氏もまた、自分の界隈でしか通じないと思っていたネタをたまたま私が知っていたという点に驚きを隠せていない様子だった。
私達は同類だった。
実際、学内でも私達が付き合っているのは周知の事実だったし、私達も隠していなかった。
卒業した今、Twitterのフォロワーが増えてもその関係は隠していない。
あれから7年。今も私達は付き合っている。
最近の彼氏はラブライブの寝そべりぬいぐるみにハマっている。例の一件でロクにデートすらも出来ていない。あと、私の生理周期を(雰囲気で)察することが出来るようになった。
なにか相談をすればきちんとアドバイスをしてくれる。否定もせず、話を聞いてくれるのは何よりありがたい。
個人的には、そろそろゴールインしたいと思っている。
でも時期的にはまだ無理かな。だって私の足元がグラついているのだから、今結婚しちゃえば彼氏にしわ寄せが来るのは明らかだ。
実は、学生時代を含めて今まで、デートというデートは3回くらいしかしていない。ましてや、二人きりの旅行はやったことすらない。
そういった意味で、もうちょっと会う時間を増やしたいなと思うところである。
Twitterやハングアウトでは適度に連絡はしているが、やっぱりぬくもりがないとダメだった。
そろそろ第4の進展が欲しい。
彼氏さん、そこのところどうなんですかね?とダイレクトにお聞きしたいところだが、はぐらかされてしまう。
まぁお互い大変だから慎重に行くよね。分かる分かる。
でもいい加減、放置プレイは飽き飽きしている。なんでもいいから、とりあえずラーメンでも食べに行きたい。
わがままな女でごめんなさいね。
虹倉家の家計を支えてくれる心優しい方を募集しています。 文章と朗読で最大限の恩返しをさせていただきます。