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【巨人】コーチの配置転換から読み解くジャイアンツの未来


球春到来。

第三次原政権の契約最終年となる2021年シーズン開幕まで、あと15日。
オフに公示された1・2軍コーチの配置転換から、強さを<継承>することに重きを置いた第三次原政権の描くジャイアンツの未来を読み解いていく。


少し長くなりそうだが、一つずつ考察していこうと思う。

原采配の特徴

黄金期と呼べる強さを誇った時期もある第二次政権(2006~2015)から変わらない原監督の特徴は大きく分けて3つある。

①実力至上主義

アピールする力があるものにはチャンスは与える。結果が全てだが、同じ力なら若い選手を使う。

ー「チームの和をつくるのは実力至上主義。実力のある人をねぎらい、1軍に、そしてスターティングメンバーにする」球団史上最多の監督通算1067勝目を挙げた際のインタビューよりー

②全員野球

選手のストロングポイントを探し、適した役割を持たせ、全員で勝利を目指す

ー「我々は全員で戦う。ベンチにいる選手、スタッフ、そして裏方……それぞれには役割があって勝つために必要のない選手、人間は1人もいない。それが巨人軍の戦い方です」2020年7月29日DeNA戦後の監督インタビューよりー

③役割野球

チームから与えられたそれぞれの役割を選手に自覚させ、個の責務を全うすることでチームの勝利に近づくと理解させる。
役割を理解してプレーすることは、チームの采配の意図(野球観)を理解するのと同義になる為、選手全員が役割を意識することでチームが勝利を目的とした一つの和となる。

ー「こういうシチュエーションになったらお前さんの仕事だよ、と。だから選手も『ここは俺の出番だ』『この投手なら声がかかるぞ』って、準備をして待っている」2020年7月29日DeNA戦後の監督インタビューよりー

役割野球のわかりやすい例をあげるとすれば、第二次政権の勝利の方程式「スコット鉄太朗」確立や、右の代打矢野謙次、左の代打石井義人、代走鈴木の切り札起用のタイミング。

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第三次政権でいえば、戦力外候補だった大竹を右殺しの中継ぎとして再生させ、鈴木の後継として増田を代走の切り札に成長させた。
対戦成績を重視せずに、わかりやすく左投手に対しては右打者を並べるのも原監督の特徴だが、これもデータ以上に<役割>を重視した結果である。

役割野球のメリット

<役割野球>のメリットは、前述したように監督の目指す野球観が選手に伝わりやすく、チーム全体が同じ方向を向いて迷いなくプレーできることにある。
与えられた役割の中で最善を尽くしてプレーをして、その結果チームが負けたなら監督の責任と選手は割り切りやすい。

役割野球のデメリット

役割野球のデメリットとしては、第二次原政権から高橋政権へのチーム継承が失敗したように、今まで当たり前に与えられていた<役割>が提示されなくなると、一気にチームが集団から個に戻ってしまうことがあげられる。

チーム継承問題の解決策

第三次原政権は日本一奪回と同じレベルの重要度で、このチーム継承問題の解決を求められている。
この問題を解決する方法もざっくりと3つに分けてみた。

①<役割野球>を捨て、1からチームを作り直す
②<役割野球>は継承し、新監督の野球観に沿って与える役割は大きく変える
③<役割野球>のスタイルだけでなく、与えていた<役割>も基本的には継承し、指揮者の野球観と戦力に応じて一貫性を持って徐々に変化させていく。

①②を選んで短期間で結果を残せるとすれば、選手に自分の野球論を伝えられ、一貫性のある采配ができる監督経験者であることが最低条件となる。
巨人一筋の監督経験者で絞ると高橋か堀内しか該当者がいないので難しいだろう。
生え抜きという条件を外せるのであれば、落合/ラミレスあたりは面白いかもしれない。

今回、原監督が選んだのは③の選択肢に近いと予想する。
直接の継承先は新監督ではなく、恐らく元木ヘッドになるだろう。

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今年は各選手に原監督が与えている<役割>と、采配の意図をこれまで以上に入念に元木ヘッドに落とし込み、シーズン途中からは元木ヘッドに采配を任せる可能性が高いと予想している。
原監督自身がヘッドコーチだった2001年、当時のミスターこと長嶋監督がシーズン後半から最終戦までの全指揮をこっそりと原ヘッドに任せて実戦経験を積ませていたのは有名な話だ。

強さだけを考えれば新監督はそのまま元木に任せ、原監督指揮下での実戦経験が豊富な川相あたりをヘッドに置くとスムーズに<継承>は進むはずだが、興業としての人気面も考慮されて恐らく元木はヘッドに在任させたまま、阿部が新監督に着任する可能性が高い。

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1・2軍コーチの配置転換から読み取れること①

ようやくタイトル回収となるが、
注目していただきたいのは1・2軍コーチの大幅な配置転換だ。

杉内俊哉(二軍投手コーチ→投手コーチ)
村田修一(二軍野手総合コーチ→野手総合コーチ)
古城茂幸(内野守備走塁コーチ→二軍野手総合コーチ)

阿部2軍監督の元でコーチ経験を積んだ杉内と村田が1軍コーチに就任していることがわかる。
第三次原政権が与えている選手への<役割>をコーチ陣にも先に引継いでおき、新監督を支えさせる準備をしているのではないかと察する。
<役割>を<継承>するための準備は整っているようにみえるが、(もし阿部が新監督に就任するとすれば)肝心の新監督にだけ現場での<継承>ができないことは気がかりだ。
このケースが実現したとすれば、元木ヘッドが阿部新監督を陰で操縦できるかが鍵になるだろう。
現役を退いてなお、元木に求められる立ち回りは良い意味での曲者そのものだ。

1・2軍コーチの配置転換から読み取れること②

1・2軍コーチの配置転換にはもう一つ理由があるとみている。
前述している通り、原監督の特徴の一つに<全員野球>が挙げられる。
第二次政権まではベンチ入りしている全員に役割を与え戦う野球という印象だったが、第三次政権が目指すのは支配下選手全員で戦う野球といったところだろう。
1・2軍の入れ替えが一層激しくなることを考えれば、2軍で選手を育てていたコーチを上に置くのは理に適っている。
古城を2軍コーチにしたのは、1軍でのサインプレーや求められそうな<役割>を昇格前の選手に伝える為の配置だろう。
現役時代にサブポジションが多かった古城を人選したということは、複数ポジションをこなせる若い選手を増やす意図もあるかもしれない。

2020オフの退団リストや、シーズン中のトレードを改めてチェックしてみても、1軍で安定した役割を与えられる見込みが薄ければ、能力の高い選手でもトレードに出されていることがわかる。

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逆に言えば支配下としてチームに残している選手は、登録枠の関係で2軍にいたとしても、調子次第ではいつでも1軍の試合で役割を与えられるストロングポイントがあると見込まれていると言い換えることもできる。

第三次原政権の描くジャイアンツの未来

ベンチ入りしている1軍選手だけでなく、2軍の選手も1軍での自分の役割を考え、虎視眈々と牙を磨き、裏方のスタッフ含むチーム全体が各々の役割を理解し、一丸となり勝利を目指すことで、より強固な闘う集団ができあがる。
飼い殺しにされる選手がいなくなったグラウンドは、常に活気に満ちてチャンスの溢れた戦場に変わるはずだ。
それが第三次原政権の目指す次世代に継承すべきジャイアンツの姿である。

技術面以外での杉内C•村田Cの仕事

2軍から昇格してきた選手が1軍で与えられる<役割>をすぐに理解し、即日戦力になれる環境を整える。
また、2軍から昇格してきた選手の細かい特徴や癖を監督やヘッドに伝えて、監督が選手に与える<役割>を判断しやすくする。
一見すると地味な仕事にみえるが、2軍から昇格してきた杉内・村田両コーチはテクニカル面以外でも非常に重要な存在となる。

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オープン戦で結果を求められる選手

最後に開幕までに結果が求められる選手として、3パターンの選手を挙げておくので、オープン戦を観るときに是非注目してみてほしい。

①現状<役割>を安定して与えずらいトレードの可能性がある選手
戸根・桜井・小林or岸田・山瀬・重信・立岡

②これまで1軍出場は少ないが今季は<役割>を与えられそうな選手
秋広・山下・松原・八百板

③前半戦までにチャンスを掴まなければ後がなくなる選手
野上・陽・ウィーラ―

前半戦の個人的最注目選手

中でも個人的に注目しているのは、FAで巨人に入団して以来、全く活躍できていない野上。
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昨年は左アキレス腱を断裂し、1軍では登板さえなく、年俸も1億5000万円から野球協約の減額制限(1億円以上は40%)を超える1億2000万減(80%減)の3000万円まで下がっている。
ただし、今年はここまでの映像を見る限り調整は非常に順調。
今年はこの野上がシーズン通して、良い意味で予想を裏切る活躍をすると期待を込めて予想している。

次回予告

最後までお読みいただきありがとうございました!
今後は<2021年巨人戦力分析 開幕ベストオーダー×ローテーション×補強ポイント>と<試合分析>を配信予定です。
お楽しみに!







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