見出し画像

彼酔イ坂〜街角美身~遥か道の幸へ 001/小説+詞(コトバ)

♪彼酔イ坂(かよいざか)

彼(か)の人に
廻(めぐ)り逢わされ
酔わされて
焦がれて昇る
此の通ひ坂

恋しては
いけない人と
知りながら
誘(いざな)われ行く
ああ彼酔イ坂

愛失くし
明日が見えずに
迷い男女(びと)
色も失くして
闇にさ迷う

哀しみを
乗り越えてこそ
喜びの
今日を生き行く
明日へ生き行く

彼の人よ
廻り逢わされ
酔わされた
それは偶然
なれど必然

彼酔イ坂にて…


 こんにちは、酒匂語(サカワカタル)です。

 出逢イ坂を回るトラックの運転手さんが、彼酔イ坂の担当になり、俺も一緒に移動して来ました。

 そして、また面白い男女(ひとびと)を見かけましたので、書かせて頂くことにしました。

 もちろん、それぞれのプライベートには充分な配慮をしていますので、ご安心下さい。

 というわけで、まずは彼酔イ坂の由来から始めさせて頂きます。

 以前は、『通ひ坂』と表記され、かつて男たちが、坂の上の小町娘に恋い焦がれ、夜な夜な通い詰めていたという言い伝えから、その名が付けられました。

 しかし、時代が移り、この坂に飲み処が増え、ある日、誰かが『彼酔イ坂』と落書きをしたことから、こちらの方が、一般に広まってしまったらしいです。


 と、一人の青年が、彼酔イ坂に迷い込んで来ました。

 彼の名前は、明日向翔(アケヒナタカケル)。

 二十歳になり、来年には大学三年生になるのですが、一体、自分は何がやりたいのだろうと、ふと考えました。

 しかし、いくら考えても、その答えは出て来る気配がありません。

 今までは、すべて親掛かりで、自分で金を稼いだことがありませんでした。

 そこで、仕事を通して触れ合う人々との中で、その答えを見つけようと思い、アルバイトをすることにしました。

 インターネットの求人サイトに掲載されている、たくさんの職種の中から翔が選んだのは、ファミリーレストランでした。

 そこには、様々な職種の人たちが来るでしょうし、なにより、人と話すことが好きなので、接客業ならすぐに馴染めると思ったからです。

 そして、翔は、すぐに馴染みました。

 仕事覚えが早い上に、店長は親切でしたし、他の従業員たちとも、いつの間にか溶け込んでいました。

 翔が働き始めて二週間が経ち、これが天職かもしれないと、安易に思い始めたころ、新しいパートが店に入って来ました。

この記事が参加している募集

私の作品紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?