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掌編小説【石の店】♯毎週ショートショートnote

お題「男子」「宝石」

「石の店」(410文字)

ある町に夫と旅行に行った時、商店街の外れにその店はあった。
「ちょっと!なにこの看板?」
「どれー?」
夫がのんびりと聞き返す。
「これこれ。『男子宝石店』だって。男子専用の宝石?笑えるー」
「いや、フリガナがふってあるよ」
よく見ると、小さくこう書かれている。
『ダン コダカライシ店』
「『ダン』って姓は実際にあるよ」
夫が言う。
私たちは店のドアを開けた。たくさんの石が並んだショーケースの前に初老の紳士が立っている。店主のようだ。
「いらっしゃいませ」
「あの、コダカライシって…、この石を持つと子宝に恵まれる…とか?」
「その通りです」
私と夫は顔を見合わせた。結婚して十五年、もうあきらめかけている私たち。
「ご希望でしたら、お探ししますよ」
「お願いします!」
思わずハモった私たちの声に店主が優しく微笑む。

…それから一年後、私たちは男の子に恵まれた。
店主にお礼が言いたくて私と夫は再びあの町に行ったが、『男子宝石店』は跡形もなく消えていた。


おわり  (2022/11/28 作)

上記の『たらはかに』様の11/27-12/03のイベントに参加させていただきました☆
今回もまた、予想もできないお題…(;・∀・)
ちょっと反則技を使ってしまったかもしれません~。あはは

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