SS【定位置】♯毎週ショートショートnote
お題「助手席の異世界転生」
【定位置】(410文字)
助手席から見る景色があたりまえになって久しい。
結婚してからはまったく運転しなくなったから、もう四十年以上も助手席が定位置だ。
運転席の夫をチラリと盗み見る。痩せて肌が白く、まるで違う人みたい。今日は病院へ定期健診に行く。
私は顔を窓外に向ける。助手席からの景色が見られるのも、あとわずかだろうか。
窓からの陽射しに目を細めているうちに、私は眠くなる…
夢?を見た。
助手席で女の人に抱かれている赤ちゃんの私。
運転席には浅黒い肌の端正な男の人。お父さんなの?
若い頃の夫に似てる…。
女の人が私を抱き上げて外を見せてくれるけど、明るすぎて何も見えない。でも私はうれしくてキャッキャと笑う。
男の人の手が私の頭に置かれる。
「そろそろ着くぞ」
頭をポンと叩かれて私は目を覚ます。眠っていたのだ。でも胸にはうれしさが残っている。
助手席の異世界転生体験、もう少し続けばよかったのにな。
「次は私のお父さんになるのかしら」
なに寝ぼけてんだ、と夫が言う。
おわり
(2023/12/4 作)
たらはかに様の12/2~12/8のイベントに参加させていただきました☆
だんだんお題について行けなくなって、そろそろ撤退しようかと思いつつ…
(;・∀・)なんとか今週も。
異世界というよりは来世みたいでしたが…
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