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SS【双子】♯毎週ショートショートnote

お題「呪いの臭み」

【双子】(410文字)

「のろちゃん、おはよ」
「いわちゃん、おはよ」
 二人はなかよしの双子だが、のろちゃんには悩みがあった。
「ねぇ、いわちゃん。僕また臭くなっちゃった…」
「のろちゃんのせいじゃないよ。使う人が…」
「でもみんなぼくのせいにするんだ」

 その朝、のろちゃんはいつもより臭かったから、昨夜も誰かが彼らの詞(ことば)を使って邪な念を送ったのだろう。なにを送ったかは臭いでわかってしまう。呪いの臭みだ。

「いわちゃんはいいね…。いつもいい匂いだもの」
 いわちゃんは、のろちゃんを心からかわいそうに思った。同時にこんなにも臭いものを送らざるを得なかった誰かに対してもそう思った。
 いわちゃんがいい匂いなのは、誰かが優しい念を送るからだ。同じ詞(ことば)を使っても、呪は臭いが祝は芳しい。

 いわちゃんは、のろちゃんを抱きしめた。のろちゃんの臭いが、いわちゃんの匂いで消えていく。
「ぼく、もう使われたくない」
 のろちゃんが泣いている。傷ついている誰かのために。


おわり

(2023/9/18 作)

『たらはかに』様の9/17~9/23のイベントに参加させていただきました☆
誰だって臭くなるのはいやですよねぇ…。(;・∀・)

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