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嘘の素肌

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「何者でもない僕に付加価値を与えてくれるのは、いつだって好奇心旺盛な女性達でした。」 桧山茉莉、二十七歳。仕事や人間関係に不自由なく生きてきた"何者でもない男"を取り囲むのは、…
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#難病

嘘の素肌「第3話」

嘘の素肌「第3話」

 二軒目の大衆酒場で僕は麦の水割りを、和弥は引き続き日本酒を飲んでいる。腹は満たされているので、肴には枝豆とえいひれ炙りを注文した。

「なあ、瑠菜は元気か」

 和弥に訊ねられ、僕は頷く。

「そうかぁ。元気ならよかった」

「珍しいね、瑠菜の話なんて」

「まあ一応、兄貴だしな、俺」

 和弥が大学を卒業してから、彼の妹である瑠菜と僕の関係は以前よりも良好なものになった。僕らより四歳下の瑠菜が

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嘘の素肌「第36話」

嘘の素肌「第36話」

 村上にギャラリーの相談をすると思いのほか良いリアクションが返ってきた。

 かつて僕がどの店より贔屓にしていた橋本の馬肉居酒屋で村上と落ち合い、酒を酌み交わした八月上旬。連日茹だる様な灼熱続きに辟易していたが、渇いた喉にキンと冷えたビールを流す想像をすれば猛暑日さえも肯定することができた。馴染みのオーナーは四年ぶりの来店でも僕の顔を一目見た瞬間に思い出したようで、開口一番「いきなり来なくなったか

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嘘の素肌「第40話」

嘘の素肌「第40話」

 三十二歳になったばかりの僕は和弥の墓参へ赴くことにした。肌を刺すような、凍てつく風の冷たさに首を竦め、トレンチコートのポケットの中でキャビンレッドの箱を指先で撫ぜる。途中、ガーデニング好きな家の庭に咲いた紫のラナンキュラスに目を留めたりした。もうすぐ春が来る。桜を見上げる度に、桃色に染まったウルフヘアの彼女が僕の感情を操作する。そんな季節が迫っている。

 瑠菜の通い易さを優先して相模原市に用意

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