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僕らはいつだって、不平等で不確かな夜を越えて

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退屈なエッセイ集です。
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僕らはいつだって、不平等で不確かな夜を越えて「酒と耽溺」

僕らはいつだって、不平等で不確かな夜を越えて「酒と耽溺」

全部どうだっていいはずなのに、酒を呑むと全てが愛おしく思えてきてしまう。例をあげるなら、自作の小説や、彼女がくれた文庫本。来週行われる七夕祭りと泡銭。あるいは少女S、もしくは性女S。
雑多な居酒屋にて、茫漠、閑散とした水晶体に輝る猥褻な煌めき。グラスの中で氷が回れば自ずと僕の生命も廻る。こんなものは退廃思想の耽溺日記だと罵って読まないつもりかい。別にかまわないよ。僕は痛みだけを信じているんだ。ただ

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僕らはいつだって、不平等で不確かな夜を越えて 「幸せが溢れたら」

僕らはいつだって、不平等で不確かな夜を越えて 「幸せが溢れたら」

先日、僕の「半分」とも呼べる人が死んだ。

「半分」なんて言い方をし出したのは彼女の方だったけれど、確かに適切な名称もなかった僕らの関係に「半分」は悪くない表現だった。その朝、僕は「半分」を失って、いつもより身体が軽くなって、いつもより気分が重くなった。乳白色に包まれる爽やかな街の風に、始発電車の軋轢が痛いような朝だったことをよく覚えている。

「私は貴方を好きにならないと覚悟を決めて会いに来

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僕らはいつだって、不平等で不確かな夜を越えて「紫」

僕らはいつだって、不平等で不確かな夜を越えて「紫」

明日もきっと、僕は紫に依存しているのだろう。
僕にとって紫は、単に好きな色という意味で済まなくなってしまった。高貴で美しい色彩に惹かれている側面はあるが、服や小物は紫で揃えてばかりかと言われれば、言ってしまえば黒や臙脂の方が多い。「他人同士を結ぶ糸の色に望みを持つから、人間は絶望する生き物なんだよ」と僕に語った彼女の存在さえ無ければ、僕がここまで紫に縛られることもなかったのだろう。

昨年、学生

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僕らはいつだって、不平等で不確かな夜を越えて「茉莉花」

僕らはいつだって、不平等で不確かな夜を越えて「茉莉花」

数週間前、知人の勧めで香水を買った。 ZARAが発売しているELEGANTLY TOKYOのロールタイプ。特定の匂いに惚れ込んだりしない僕が、直感的に「これだ」と決めて会計へ向かった。珍しいと知人は瞳を丸くして僕の背を追ったに違いない。まさしく衝動買い。この胸騒ぎの正体をじっくり考察してみると、香水が「茉莉花(アラビアンジャスミン)」のエッセンスを含んでいることに由来した事実に気づき、ちょっぴり可

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