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海馬は寝ている間に働く【学習支援に使える記憶法】

一夜漬けしてテストを受けたはいいけど、寝たらきれいさっぱり忘れたという経験はありませんか。
実はそれは理にかなっているのです。

今回は記憶メカニズムや覚え方を知ることによって、学習支援をよりレベルアップしていこう、というテーマです。

【海馬は寝ている間に働く】

記憶に残るか残らないかは、感情の動きによって変化します。

楽しい記憶は覚えやすいですし、つらい苦しいといった嫌な記憶は忘れようとします。

というのも、記憶を司る海馬嫌な記憶を消し、楽しい記憶だけを残すよう作業するからです。

なぜなら、嫌な記憶が蓄積すると、人間の精神を破壊し、うつ病などの原因になるためです。

その作業を、海馬は人が寝ている間に行うわけです。

で、冒頭の例。
一夜漬けのテスト勉強は当然楽しくないですし、嫌々しているわけです。

寝ずに勉強をして、そのままテストを受ける、これは短期記憶で解答しているのです。

そして、帰宅してバタンキュー。ぐっすり睡眠をとります。

すると、そのテスト勉強の内容は、海馬が嫌な記憶として認識するため、記憶の奥に追いやります。なので、起きたら忘れているわけです。

つまり、嫌な記憶だとなかなか長期記憶にならないため、学習支援では可能な限り楽しい気持ちにさせ、いかに嫌な気持ちにさせずに記憶させられるかがポイントになります。

【そもそもどうやって記憶されるの?】

■記憶のメカニズム
記憶のメカニズムは3ステップです。

記銘:覚える(とりあえずの短期記憶)
保持:覚えたことを保つ(長期記憶)
想起:思い出す(年齢を重ねると難しくなる)
・再生:保持した記憶を自由に思い出すこと
・再認:覚えているいくつかの事柄の中から選択的に思い出すこと

年齢を重ねると記憶が出来なくなるのではなく、記憶したものを思い出すことが難しくなるのです。

脳をタンスで例えると、記憶すると脳の中にあるタンスの引き出しにしまわれます。

長生きすればするほど様々な物事を覚えていくため、脳の中のタンスがどんどん大きく、引き出しも増えていきます。

首元を触りながら「あ~ここまで出かかってるのにな~」となることありますよね。あれは、脳の中でこのタンスのこの列にあることはわかってるんだけど、どの引き出しに入っているかわからない、といった状態になっているんです。

つまり、覚えていない=記憶できないのではなく、思い出せない=想起できない状態なのです。

認知心理学上での記憶のメカニズム

感覚記憶: 目や耳などの感覚器官から入った1~2秒の記憶
短期記憶:15秒前後の記憶。ワーキングメモリー
長期記憶:数日間から数年間

いかに短期記憶を長期記憶に変換するかが大事になってきます。

【短期記憶を長期記憶にするには】

長期記憶には大きく2つの方法があります。

陳述的記憶頭で覚える記憶=意識して思い出す記憶

エピソード記憶:物語的に覚える。関連付ける。
(例)徒競走で1位をとった〇〇くん、お菓子が好きな▲▲ちゃん

意味記憶:cat=猫、のようにA=Bと意味で覚える。一番覚えにくく、想起しにくい。意識しないと覚えにくい。


手続き的記憶体が覚える記憶=自然に思い出される記憶

熟練技能:自転車の練習、楽器の演奏、PC操作など。
認知的技能:パズルの解き方など。
・条件反射:パブロフの犬的な覚え方。無意識のうちに反応する。

手続き的記憶反復により習熟するような技能で、行動に記憶が反映される特徴があります。

そのため、手続き的記憶で記憶されたものは、考えて思い出して行動するのではなく、その場になったら自然と体が動く記憶になります。

例えば、10年ぶりに自転車に乗っても運転が出来るように、久しぶりに行ったとしても体が覚えている状態です。

つまり、学習は本来「陳述的記憶」なのですが、覚えにくいことは何度も書いたり口に出したりして、体で覚える「手続き的記憶」で覚えると記憶しやすいとされています。

【ヒグビーの7つの理論】

記憶するには、ちょっとしたテクニックがあります。その一つがアメリカの心理学者であるケネス・ヒグビー氏が提唱した記憶に関する理論「ヒグビーの7つの理論」と呼ばれるものです。

①有意味化:意味を知ってから記憶する
②組織化:グループ化や系統立てて覚える
③連想:すでに覚えていることと結び付ける
④視覚化:映像化されたイメージを結び付ける
⑤注意:暗記することに注意を向けることで覚える
⑥興味:興味があるものは覚えやすい
⑦フィードバック:振り返ることで定着化させる

これらを有効に使うことで、学習支援を効率よく行うことができます。

有意味化:意味がないもの・分からないものは覚えにくいから、意味を知ってから暗記する

言葉をただ丸暗記するのではなく、意味を理解すると覚えやすくなります。先ほどのエピソード記憶に近いです。


組織化:繋がりのないバラバラな複数の情報を、整理し関連性があるグループに分けてから、まとめて覚える

英語の単語学習の際、動詞を覚える時は動詞だけ、名詞を覚える時は名詞だけをまとめて覚えませんでしたか。
そのように、それぞれにまとめて覚える、系統立てて覚えることも有効です。


連想:すでに覚えていることと、新しく覚えることを組み合わせて覚える

新しいことを覚える時、既に覚えていることと結び付けると覚えやすくなります。

「なんと(710)立派な平城京」など、年号の語呂合わせなどもココになります。

個人的には「いちごパンツ(1582)の本能寺の変」がお気に入り(余談)。


視覚化:暗記する時に文字情報だけでなく、写真映像など視覚イメージを思い浮かべると記憶に残りやすくなる

言葉や記号に映像化されたイメージを結び付けると覚えやすいので、漢字カードを付けるなど工夫をすると子どもは覚えやすくなります。

カードを作成するのは大変なので、パワーポイントなどを使用して教えるのもよい方法です。


注意:「暗記することに注意を向ける」というテクニック

「ココからココまで」と範囲をしぼると、注意を対象に向けることで集中力が高まり記憶しやすくなります。

興味:好きなものは覚えやすい

当たり前ですね。そのため、その子どもの興味のあることをまず知り、それをいかに学習に結び付けるかが、支援者の腕の見せ所となります。

フィードバック:は振り返りのことで、一度覚えた記憶をしっかり定着させるために有効

子どもたちの場合、復習だけでなく成果を褒められることによって「楽しい気持ち」になるので、長期記憶になりやすくなります。

【さいごに】

今回は記憶のメカニズムや理論、その方法についてまとめました。子どもたちの特性や特徴、環境に合わせて出来るだけ記憶しやすいように支援することを心がけていきたいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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