これはユメ。
けれどもカコ。
つまりは カコの回想。
とおい昔 幼いころ 眠り姫を よんだ
あのころは ねむったおひめさまがかぁいいな おひめさまとおようふくがすてき くらいにしか思っていなかった 話をよく知るには あまりにも幼かったから。
当時 から いま現在。
その眠り姫になって、はじめて。
『ああ、お姫様のユメは長いなあ』なんておもう。
死ぬ前 しんだ後 若くして亡くなった時。
あちこちなくなった身体を元に戻してくれて ついでにニキビも消してくれて それから肥満気味のからだも 綺麗にしてくれた。
その女の人は てんしでもあくまでもなく ただの一般のひと。
ほんの少し ほんのちょびっと 数センチ・・・
頭の狂った 神様の一般人だった。
わたしは蘇り、洋館にゆうへいされて、眠り姫ごっこをしている。
綺麗で質のたかそうなドレスを身にまとい、良く眠り、飢餓感もなく、排泄もなく、からだを小奇麗にする必要もなく、永遠にここにいる――
浅。麻。朝。
めが覚めて からだをゆっくり起こしてぼうっとする。
うご かなきゃ 動かないと、また、眠ってしまう。
からだを動かし、私が四人は入るような巨大なベットから起き上がり、ふらふらと豪華な部屋を出る。
木製のらせん階段をふらふらとおり、洋館の玄関へと近づく。
力の入らない手で、扉を押し、開かないことをさとった。まだ、だめなのね。
そうわかると、ふらふらあてもなく家中をさまよう。
今回は、お洋服を着替えよう。
もくてきが決まれば、行動は早くしなくちゃ。
住みなれて歩きなれてきた廊下を歩き、部屋に、部屋に入り、クローゼットを開ける。
それぞれがそれぞれに負けず劣らず、豪華なドレスたちが視界いっぱいに広がる。
いまの私には、どれもが似合う。
びじんになって細くなって。かみもよく伸びて。これじゃあ眠り姫じゃなく、ラプンチェル・・・ラプンツェル。
からだも、好きにできるし――おっぱい、おおきくして、この背中がおおきく開いた、セクシィなのがいいなあ。
あ――だめ。むだ話・・よくない。
そう思った矢先、めのまえがくらくなっていきて、てにとったどれすがゆかに――
わたしの時間はみじかい。
とけいのないこの洋館で 何もせずに 脈で時間を計ってみると五つ。大体、五分。
五分するとねむくなってきて 眠る。
場所をどんなに変えても めざめるときは必ずベッドの上。
それまでにしようとしていたことは全てできあがっている。
工作をしようとおもえば 目が覚めると出来上がっていたり。
掃除をしようとおもえば 目が覚めるとあたり一面がお皿のように綺麗だったり。
あんなふうに着替えをしようとおもえば――目が覚めればきっと 胸の大きいわたしが あのセクシィな黒のドレスを身にまとっておきているんだろう。
あんなこと 望まなくちゃよかった。
おっぱいは肩が重くて。
目が覚めたとき ちょっとだけだるい。
からだが、重い。
肩がとくに。
ああ、おっぱい・・・ついてる。
からだをおこして見やると、おっぱいがある。服も、あのセクシィなヤツ。
きがえよう。今度は淡くて黄色いかぁいいヤツ。
もそもそ動き出して服をはいで、はだかになって着替えた。
まだ、時間はある。動ける。じゃあ・・・なにをしよう。
そうだ、まだ時間がある。今ベッドに入ってみよう。
ねむくない。睡魔がおそってこない。しかいが暗転しない。
も、いいや。時間まで、何か考えよう。寝てる間は考えられないこと。
死因?こうなった原因?そもそも、わたしはいくつ?
え・・・・っと、死んだのは・・・・・火。炎。火事。こうなったのは・・・神様が、私に、言ってきて。うなずいた。ら、こうなった。
わたし死んだのは・・・お酒。タバコ。ない。まだ、未成年?
えっと・・・・他にも何か・・・考えなくちゃ。
ここから出るのは、無理。からだも貧弱で、ムキムキになりたいって思って、おきてムキムキになってても、ダメ。無理。不可能。扉は開かない。
部屋の何処も窓は閉まって・・・て、こわせな――ああ。きた。
もう こんな自堕落な生活ばかり。
でようって気もなくなってきた・・・も いいかな
またあの娘、出ようとしていたのね。
全く。オカミサマと契約したんだから無理だってのに。でもあのコ、かぁいいわねえ。あら、うつっちゃった。
でも。見てて飽きない。
ま、ワタシ好みにしたんだから、かわいくて当然か。
でも、前は五分の時間を必死に涙ぐましく生きてたのに、最近はふわんとして、どうでもよくなってきてるわ。
ますます好み。
出会った時は全身真っ黒で、治してあげたら凄い顔してたけど・・・ああいう自分に自信のない子、スキ。操りやすくって、優しい言葉に溺れやすくって。
ああやってあの子がどんどんワタシ好みになっていったら、その内、かわいくてだしちゃうかもね。
そしたら、どんな反応するかしら。
『閉じ込められているのは自分だけじゃない』って事実に、絶望したりして。うふふふふ・・・・。
・・・あーあ、そろそろ時間ね。また、眠ってしまうわ。
ワタシは五分じゃなくて一日だけど・・・ふわぁ・・・おやすみなさい。
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