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空気のなくなる日

/200930-30

秋風も吹き始め夜空を見上げる機会も多くなるこの頃。世に言う天体ブームというのはハレー彗星と共にやって来ると言われる。ハレー彗星の回帰は1986年でその話題っぷりはドラえもん33巻に登場する『ハリーのしっぽ』でも垣間見える。お祭り騒ぎのようなハリーの来訪もとんだ災難となった場合もあったようで前々回の1910年がまさしくそうだった。この時のハリーの接近は地球のかなり近くを通過すると予測され、最悪の場合は衝突すると予測した学者もいたほど。加えて彗星から放たれる炎からは猛毒のシアン化合物が含まれているとも発表され、人類史上最大の危機と煽られた。

そうしたある程度説得力を持った論から、隕石が衝突し海水が地上に流れ込んでくる、空気が5分間なくなるといったデマが出回るようになった。空気がなくなった際、耐え凌ぐため浮き輪といったゴムチューブを買い占める者もいたというエピソードがある。窒息しないためにはどうすべきかなど新聞にも掲載されていたようで人々はそれを信じるしかなかったと言える。それは現代の私たち、大量の情報に触れる機会があっても間違った情報を鵜呑みにしてしまうのに通ずるものがある。人は未知のこと、経験ないことに関しては基本太刀打ちできない。それを常識的な行動をしてくださいと、公共のデマ発信者が説教ぽく言うのはどこか腑に落ちない。失敗は許さないではなく、失敗を精査して繰り返さないことのほうが大事ではないだろうか。コロナ流言と重ね合わさった今から100年以上前の空気のなくなる日だった。

絹掛

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