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【映画批評】#22「箱男」 箱=誰もが逃れることのできない主観

作家・安部公房が1973年に発表した同名長編小説を「狂い咲きサンダーロード」「蜜のあわれ」などの鬼才・石井岳龍監督が映画化した「箱男」薄口批評!
箱男といえば電波少年のアレ!程度の教養なし男が触っていい映画なのかはさておき、本作にて彗星のごとく現れた白本彩奈激賞がメインの薄口批評を展開!正直よくわからん!!


鑑賞メモ

タイトル
 箱男(120分)

鑑賞日
 9月3日(火)18:25
映画館
 なんばパークスシネマ(なんば)
鑑賞料金
 実質0円(ムビチケエポスポイント購入)
事前準備
 特になし
体調
 すこぶる良し


点数(100点満点)& X短評

60点


あらすじ

『箱男』 ――それは人間が望む最終形態。
ヒーローか、アンチヒーローか

完全な孤立、完全な孤独を得て、社会の螺旋から外れた「本物」の存在。ダンボールを頭からすっぽりと被り、街中に存在し、一方的に世界を覗き見る『箱男』。カメラマンである“わたし”(永瀬正敏)は、偶然目にした箱男に心を奪われ、自らもダンボールをかぶり、遂に箱男としての一歩を踏み出すことに。しかし、本物の『箱男』になる道は険しく、数々の試練と危険が襲いかかる。存在を乗っ取ろうとするニセ箱男(浅野忠信)、完全犯罪に利用しようと企む軍医(佐藤浩市)、 “わたし”を誘惑する謎の女・葉子(白本彩奈)......。果たして“わたし”は本物の『箱男』になれるのか。そして、犯罪を目論むニセモノたちとの戦いの行方はー!?

小さな箱の中で王国を作り、守られた状態で世界を一方的に覗く姿は、不確実性の中で揺らぎながら、小さな端末(スマホ)を手に持ち、匿名の存在としてSNSで一方的に他者を眼差し、時に攻撃さえもする現代の私たちと「無関係」と言えるだろうか…。そして最も驚くのは、著書が発表された50年前に安部公房はすでに現代社会を予見していたということだ。

「箱男」公式HPより引用

ネタバレあり感想&考察

筋を通した高齢キャストに疑問符
それを吹き飛ばす白本彩奈、ド級の衝撃

よくわがんねぇ、というのが正直な感想。
なのであまり語ることがない。箱という安全圏ののぞき窓から観ているのはお前だ、というラストは今となっては凡庸ともいえる。とはいえ、原作は50年以上前だから当時の感覚ではセンセーショナルだったのかもしれない。今となってはわからない。

原作を読んでいないので臆せず虚心坦懐に言ってしまうと、箱という狭い世界の対となるこの世界の広がりがあまり描かれないことで映像表現として弱くなっていると感じた。
本作は冒頭こそ渋谷センター街での箱男の生息を描いているが、そこが終わると郊外で人気のないロケ地での撮影に終始しており、我々が生きている世界自体が狭く感じてしまう。

そもそも27年前に日独合作で製作されかかっていたが、クランクイン直前で頓挫したらしい。その当時のキャストそのままで製作されたのが本作とのこと。石井監督としては筋を通したキャストなのだろうが単純に27年も歳を食ったキャストをそのまま当てこむにはムリがある。それこそ永瀬正敏、佐藤浩市、浅野忠信の配役は若者でないと正直観てられない寸前のところまで来るぐらい、悪い意味で滑稽に映っていた。
ある種、若い女の取り合いをするにはあまりにもみっともないおじさんたちのくだらない諍いになっている側面は大いにある。

しかし前述した若い女、葉子役を演じた白本彩奈は衝撃だった。全く知らない女優さんだったので、その美しさと文字通り体を張った演技、そしてその存在感に釘付けになった。
映画館で初めて観た女優さんでここまで気持ちを持っていかれたのは記憶にない。正直ヘンテコすぎる映画だし、話のデキだけなら特にすすめることはないが、白本彩奈を観に行けの一点突破で一気にオススメできてしまう映画になっている。
おそらく10年、いや20年に1人の逸材かもしれない。

彼女との出会いに感謝!!
白本彩奈さん、もっと映画に出てください!!

箱の中からこんにちは
私という箱=主観からは逃れられない

公式が本作の箱をしきりにスマホと重ねている。
もちろんそう考えることもできるが、個人的にいまいちピンときていない。自分という存在を明かさずにのぞき窓からみているものは女性のふくらはぎ。白本彩奈の存在も合わせて、人間はかくも性的なものへの興味からは逃れられないことを示唆している。

原作は1973年の作品なので、スマホのようなものではなく、直接的な性から間接的な性体験に対する予見性を感じさせる。それこそエロ本ですら流通量が限られているような環境だったり、のぞき部屋のようなサービスもあるかないかぐらいだったであろう時代といえる。それこそAVもなかったような時代に、他人の性をのぞき見るようなことを予見していたように感じる。本作も結局は、箱と性を通じたおじさんたちの諍いが展開されるあたり、そんなに深いものが隠されているとは思えなかった。上記の通り、シンプルなものだと思う。

私が思うに、箱はその人自体の狭量な脳内で熟成される主観だと感じた。歳を重ねるにつれて、その箱は良い意味でも悪い意味でも、より狭く強固なものへと変貌する。どんな変遷を辿ろうとも逃れることのできない、その人自身の主観を指している。
誰もが箱男になる可能性を秘めているというよりは、誰もがもれなくすでに箱男なのだと受け取った。

箱を被っていては新たな知識や考えを吸収することは難しい。
だから箱を脱いで裏返して、それらを吸収できる器として箱を使いたいものですね。

なんかうまいこと言った風に締めてますが、難解すぎて批評から逃げただけです。
とりあえず白本彩奈を観に行こう!以上!


まとめ

THE 薄口!まあでもこんな感じになりますよ。
実際観に行った回では2組のカップルが途中退席でした。1組は開始15分で脱落でしたから、そもそもエンタメとしては万人に受ける映画では決してない。
テンションも高くなりづらいし、お話っちゃお話だけどう~んとなってしまう人も少なくない映画だと思うので、いろんな方の感想をこれから探して読んでみたいと思います。

感想を残すには、なかなか言語化が難しい映画です。
これを読んで本作を観たという方の感想をぜひ聞いてみたいです。

今回はこの程度かな。お疲れ様でした。


最後に

やっぱり箱男と言われると電波少年のトンデモ企画が思い出されます。平成の箱男ことダブルブッキング川元さんの半生を振り返るこの動画は本当に面白かった。

ダブルブッキングを売ることができなかったホリプロの罪は重いぜ〜。相方の黒田さんも変人すぎて面白いですよ。

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ご拝読、ありがとうございました。


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