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【iSTCの1年】"会社を作る"ということ

こんにちは、きのっぴです。
久しぶりの投稿になってしまいました。

i Smart Technologies株式会社にジョインしてから1年少々、様々なことをしてきた訳ですが、自分の中での整理も兼ねて振り返ってみたいと思います。

【そもそも】iSTCは何をしている会社か

初めての方もいらっしゃると思うので、i Smart Technologiesという会社についてざっくりとお話しします。

iSTCは製造業向けのIoTサービス「iXacs」を提供している会社で、母体となっているのは旭鉄工株式会社という自動車部品メーカーです。

旭鉄工で社内開発し、大きなコスト削減効果を出した製造ライン用IoTモニタリングシステムがiSTCのビジネスの原点となっています。
このバックグラウンドを武器として、ただIoTサービスを提供するだけでなく、その運用方法のアドバイスや所謂カイゼン活動のやり方まで、お客様の生産性向上をトータルでサポートしているのが弊社の特徴です。

そういう意味ではテクノロジードリブンなスタートアップ企業というよりは、製造メーカーが自社ノウハウの展開を目指した新規事業会社という風に捉えてもらった方が馴染むかもしれません。
(この点の意識は後々大きなポイントになってきました)

最近私は「iSTCはIoT屋ではなくカイゼン屋です」と言っているのですが、我ながらけっこーしっくり来ています。

そんな会社に自動車エンジニアという職を辞して入社したのが2019年の9月から、社長付という何でも屋ポジションに任命され(その後執行役員CSOに就任)、わちゃわちゃと色んなことをしてきた1年。制度・事業・文化という会社にとって重要な3つの要素からざっと振り返りたいと思います。

(1月に書いた下記noteから混乱っぷりが手を取る様に分かりますねw)

【制度】当たり前のことを、当たり前に

私が入社して最初に手を付けたのは、様々な「当たり前」を作る事でした。

・顧客情報を一元管理し、情報共有できるようにする
(クラウドストレージはあったものの、使い方が人それぞれだった)

・営業フローを定式化し、進捗管理をする
(全ての案件が個別対応という感じだった)

・社規定や法定の年金保険?を整備し、独自に人を雇用できるようにする
(iSTCは旭鉄工からの出向者のみで構成された会社だった)

・会計ソフトを導入し、社内で経理財務を管理できるようにする
(経理は税理士の先生に丸投げだった)

そんなこと?という感じかもしれませんが、とにかく目立ちながら早く売上げを上げたい創業初期の会社では、なかなかこうした部分に手が回らない面があります。

またiSTCの独特な事情として、母体である旭鉄工から出向という形で雇用を行うことで、様々な管理業務を行わずに会社運営ができるという面もありました。

しかしこれではリアルタイムでの財務分析、営業分析もできずに経営戦略も立てられない。業務拡大はままならない上に独自雇用もできない・・・ということで、まずはその辺りの環境構築をしたわけです。
といっても私も営業やバックオフィスの経験はほぼゼロでしたので、いろいろ調べながら、なんとか進めて行った形です。

事業面では1月にSalesforceを全社運用しはじめられたこと、バックオフィス面では4月にiSTCとして独自雇用を始められたことが大きなマイルストーンでした。
ちなみに最初に独自雇用にしたのはCTOの今井(@imaimai)と私自身、そして翌5月には初の外部からの新規採用にも成功しました。

もちろんこれらを実現するにあたり、様々な社内ITツールの導入も行いました。これについては過去にnoteを書いてるのでぜひご参照ください。

【事業】カスタマービジネスの概念を持ち込む

次に行ったのは「お客様に価値を提供し、対価として金銭を頂く」という基本的な顧客ビジネスの考え方を定着させることでした。

これまた「えっ?」と思うかもしれませんね。
(異論ある方もいるかもしれませんが)旭鉄工のような量産部品メーカーは常客からの大量受注、リピート受注でビジネスを回しており、顧客はコスト・納期・品質といったモノの観点でしか評価をしてくれません。また、ほとんどのiSTCへの出向社員は営業等の経験の無い製造現場の出身者でした。

もちろん、現場を知る人間が自らの経験を活かしてフロントに立つことこそ、iSTCの最大の強みです。
その一方で、モノを売るだけでなくコトとしてお客様に価値を提供するという意味においては、「客商売経験ゼロ」の会社と言えてしまう側面もありました。

私がかつてのiSTCに感じていた印象は「押しつけがましい会社」でした。
「旭鉄工で成果を上げたIoTとカイゼンです。あなたの会社でも同じようにやれば上手く行くので買いましょう」という感じ。
そこには顧客ニーズの聞き込みとそれに対する提案という当たり前の双方向コミュニケーションが欠如していました。

また一種のSaaSを売っている会社としては致命的なことに、顧客のオンボーディングやリテンションを全く行っていませんでした。
結果的にトライアル利用からの成約率は50%程度と低く、ChurnRateも非常に高い状況が続いていました。

この状況を打破するため、まずは新規顧客向けのトライアル内容を大きく見直し、工数度外視のオンボーディングを行うものへと変更しました。

また契約中のお客様に対しても利用状況などを把握しながらお声がけをし、活用のフォローアップや新たなご提案を行う機会を設けるようにしました。
ログイン画面から見れる説明書やQAなどのサポートページも充実させました。

結果的にコロナの影響はあったものの、トライアルからの成約率は70%以上になり、オンボーディングの品質も上がったことで、今年に入ってからご契約いただいたお客様の解約は1件もありません

そしてそれ以上に社内の意識変化は大きく、各メンバーがお客様との接点を積極的に持つようになり、結果として顧客理解の解像度が大幅に高くなったことを感じています。
今では「カスタマーサクセス」なんていう言葉が普通に使われるまでになりました。

【文化】埋まらぬカルチャーギャップと会社の姿

最後の要素は「文化」です。
企業にとってなぜ文化、カルチャーが重要かは大先輩方によって語り尽くされていると思うのでここでは触れません。企業文化、文化構築について知りたい人は、よろしければベン・ホロヴィッツの「WHO YOU ARE」を読んでみてください。

さて、i Smart Technologiesには大きく2つの文化グループが存在していました。1つは旭鉄工出身者のグループ、もう一方は外部出身者グループです。
といっても人数的には大多数が前者でした。後者に属していたのは私を含め数人で、スタートアップ企業としてのスピード感ある事業成長を渇望していました。

前述の制度面・事業面の整備も急成長を見越しての事だったことは言うまでもありませんし、それに伴い実際に企業活動もかなりスピードアップをしました。前述の一部社員の独自雇用など、旭鉄工からの独立を指向するような流れも発生しました。

私たちは旭鉄工出身者にもスタートアップらしいカルチャーを広め、会社へのコミットメントを上げることで一体感を出すことを目指していました。
一方で彼らの中では、「スピード感についていけない」「自分の将来はどうなるんだろうか?」といった不安を感じるメンバーが現れはじめます。

こうした中で新型コロナウイルスの流行がはじまります。
4月から導入した在宅勤務も様々なツールを工夫しながら使い、上手く進んでいる様に見えました。(その頃に書かれたCTO今井のnoteがこちら)

しかしながら、どんなにチャットツールやWeb会議ツールを活発に活用しても、コロナ以前の生のコミュニケーションに対して接点の希薄化は避けられませんでした。

結果として私もメンバーに不安が広がっていることを察知できず、流行が落ち着き出社勤務可としたところで問題が顕在化。
カルチャーギャップを起因とする社内の溝がかなり深くなっていることに気づかされたのです。

私も少し落ち込んでしまった時期があったのですが、こうした中であることに気が付きました。

「iSTCという会社が何であるか、という前提がズレている」

前述の通り、iSTCは自動車部品メーカーを母体とし、そこで生まれ育ったシステムと知見をサービス化した企業です。
序盤に書いた通り、背景やメンバーを考えると部品製造メーカーの新規事業部として捉えた方が自然ですし、内部のメンバーもそれに近いマインドで仕事をしています。

そこに現れスタートアップとしての急成長を目指す外部組は、いわば黒船のようなものだったのかもしれません。
スタートアップカルチャーに馴染む様に出向者の意識を「引き上げる」という考えも、今思えば非常におこがましいものだった様に思います。
「郷に入っては郷に従え」ではないですが、元々存在するカルチャーへのリスペクトが不足していたことは否めませんでした。

改めて「この会社は何なのか?」という根源的な問いをしたとき、何も派手な急成長をしてExitするだけが会社や事業の姿ではない、その企業の出自、事業、そして文化に合わせて多様な在り方があってもよいのではないか、という基本的なことに気づきました。

その後はこの点を社内ですり合わせながら、全てのメンバーが居心地よく仕事をできる環境を整え、改めて地に足を付けてiSTCが成長できるための準備をしてきています。

【つまり】会社を作るということ

ここまでの1年を振り返ったとき、自分がやってきたのは会社を作るということそのものだったという事に気づかされました。
もちろん少しのお金と事務手続きで紙の上の会社は作れますが、真の集団組織としての会社は制度・事業・文化の3つが揃って初めて機能します。

それぞれ非常に難しく複雑で、お互いに影響し合います。上手く行かないことばかりですが、これらに携わった1年は自分にとっても大きな成長の機会となり、会社にも少なくないステップをもたらす事が出来たのではないかと思っています。

私自身も未熟ですし、iSTCもまだまだこれからの会社ですが、この1年で今後のための土台はかなり構築できたと思っています!
引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします!

応援頂けると嬉しいです! よろしくお願い致します!