先週のkinologue【9/23-29】
先週も引き続き北欧旅日記。マルメ🇸🇪時々コペンハーゲン🇩🇰。後半は1週間ぶりのヘルシンキ🇫🇮にて映画祭参加。日記はダラダラ、どんどん長くなる。
<9/23, Maa>
朝から短編映画集のクローズド試写。デンマーク警察の青少年実践実習ドキュメンタリーとか甘言に乗じた過剰SEXにリベンジする・されるスウェーデン人カップルとか、朝から濃厚な時間。コントラバスを川に流す儀式を綴ったアイスランド映画が『YARN〜』のプロデューサーによるものと知って、すぐに「観たよー!」とメッセージ。「監督は日本でもライブをやっているミュージシャンなの」と返信あり。映画祭オススメのインド料理屋で久しぶりにカレーのランチのあと、短編上映をしている映画祭会場のひとつのローカル図書館Garagotへ。市立図書館とはちょっと違って、地元感のあるコージーな空間。サーミの漁業権をめぐって闘う姉妹の映画が面白い。学校終わりか高校生っぽいたちが集まってきて一緒に観た。
無事連絡が取れて『365日のシンプルライフ』のセールスエージェントとついに初対面!「オンラインで観たいんだけど」と初めて連絡をしたのが2013年だから足掛け11年。ちょうど今年契約更新で久しぶりに連絡を取り合ったばかりだったから良いタイミング。ドイツ人っぽくなく、かわいい感じのナイスガイだった。公園内のパビリオンで20分ずつのプロジェクト・ミーティングの休み時間にしか会えず、ゆっくり話せなかったが、新作の話も聞いて情報交換。初めての場所で知っている人に会えると思っていなかったから、何だかホッとしたし、これも10年やってきた故かなと。
その後、時間があったからたまたま観たノルウェー映画。若い観客でいっぱい。いわゆるエコ・アクティビストが気候変動に対策が不十分として石油会社や政府に抗議する過激な活動を記録している。逮捕されて裁判になって問題を表面化するのが狙い。終わってからのQ&Aで、突然隣の人とディスカッションしてくださいと言われ、隣の若い男子と話したら「この活動については知ってる」と言うのでよくよく聞いたらノルウェー人だった。ノルウェーは北欧一の金持ちで、それはもちろん石油によるもので、気候変動の元凶のひとつ。「深刻な問題なのはわかっているけど、簡単じゃないよね」というのは当事者のリアルか。もちろん世界的イシューだけれど、北欧の環境問題に対する活動はかなりアクティブだ。ヘルシンキでもデモをよく見る。
スクリーニングを1本スキップして、その代わり大好きなマルメ市立図書館にて、前日に見逃した映画をオンラインで観ることに。ピンポンでさまざまな人種が集まるコミュニティをつくるノルウェーのドキュメンタリー。じんわり良かった。隣りではヒジャブの女子が熱心に勉強中。
<9/24, Tii>
勝手に昨日で映画祭とはオサラバしてショートトリップの日。ステイ先のMariaがおすすめしてくれた海をぐるっとまわるコースで行くことに。マルメを電車で北上してルンドを通りヘルシンボリへ。そこからフェリーで20分、ヘルシンガー🇩🇰へ。天気が良かったらカントリーサイドの車窓を楽しんだり、港町を散策できたが、雨が結構降っていたので残念。電車を乗り継いで15分くらい、大きな家の多い住宅地を歩いて10分ちょっとでルイジアナ現代美術館に着く。大型バスが停まっていたから予想はしていたが、オープン直後からものすごい人の数。課外学習っぽい中高生?たちで溢れている。グループでずっと喋っているからホントうるさい。ま、こんなだったよね、課外学習って。たまに出てくる太陽を逃さず、外の彫刻を見たり海辺を歩いたり(うっかり出口から出てしまって戻れず焦ったが、裏の墓地も散策できて面白かった)、雨が降ってきたら館内の作品を楽しんだり。ゆっくりしようと思えばいくらでもできるところだった。ランチはカルダーを見ながら。
ヘルシンキに戻る前にコペンハーゲンに寄ろうと思ったが、出来るだけマルメに居たくなり、少し早めに予定を切り上げてデザインミュージアムへ。春画と男色と吉原をフューチャーした浮世絵展とか、偏り過ぎて正直あまり気分が良くない。未来のデザイン的展示もイマイチ面白くない。布のパターンに注目した展示でマリメッコを発見。脇坂さんデザインの布でのワンピース、かわいかったな。ウニッコないじゃん!と思ったら、少し先にあった。何と言っても椅子のコレクションが素晴らしいから、やはりこれは一番の見どころなのだろう。
ここでスマホの充電が切れそうになり、駅のカフェで充電しながら一息。今回の旅の最大の失敗は充電器を持ってこなかったこと。ヘルシンキではほぼ地図要らずなので、1日持ち歩いていても充電切れを起こすことがないからすっかり忘れていたが、マルメやコペンではずっとGoogleマップをチェックしていたので、すぐに切れてしまう。切れたら交通系アプリも使えなくなるし、残り20%を切るとドキドキした。とりあえず25%まで回復したので、雨だし日暮れているしの悪条件の中、デザイン界隈では有名なSuperkiren parkへ。もっと条件の良い日に来たら違ったと思うが、暗い中で見ていると、どのオブジェ(遊具)も落書きがすごいのが目立つ。作ったのが2012年というから、それだけ街に溶け込んでいるということか。地元にもある日本を代表する遊具としてタコの滑り台が黒くなって入口に鎮座しているのは、何とも誇らしかった。
<9/25, Kes>
今日はヘルシンキ🇫🇮への移動日。名残惜しくて2時間ほどマルメを散策。Mariaがオススメしてくれた公園に行き損ねたなぁとか港の方まで行きたかったなぁとか思いながら、行きたいところを残しておくと、きっとまた来られるといつもの願掛け。北欧雑貨の店をやっている地元の友人が「マルメ、いいんですよー!」と言っていたのを、この1週間で実感できた。フィンランドとはちょっと違って、人のスマイル加減が絶妙でかわいいし、人種もいろいろで多様性と寛容さをより感じる。突然の雨で(傘を忘れてきた!)避難した市立図書館がそれを象徴していた。雨が全然止まないので悩んだが、雨の中をスカーフをかぶってマルメ名物chokolatを買い求めに走った。イイ歳してバカだな〜と思いながら、とりあえずやり切って家に戻り、荷物を持って空港へ。慌てて出てしまったからMariaと写真を撮り忘れたのが残念すぎる。
ヘルシンキではFinnish Film Affairという映画祭関連の業界の集いが今日から始まっていて、空港で初めてウェルカムデスクを発見。センターまでの電車代を出してくれる。マルメに行く前は良い天気に恵まれていたが、ヘルシンキに着いたらここでも激しい雨の洗礼が。足を「川」に突っ込んでスニーカーが死んだ。気を取り直して、今回初めて(だと思う)市庁舎にて開催されたオープニングパーティーへ。見知った顔がいくつか、声をかけたり、かけられたり。去年アイスランドのプロデューサーに紹介されたフィンランド人が日本映画の配給を始めていて既に2本目。しかしいつも会っていたプロデューサーやセールスエージェントたちを見かけなかったのが気になった。
その後、荷物を預けていたLeenaの友人の家へ。地下のストレージを見せてもらう。「ヘルシンキの古い建物には大体こういうのがあるのよね。戦時の避難用でもあるし」と笑えない話も。マルメのお土産を渡し、ホント感謝!
<9/26, Tor>
9時から長い長いショーケースが始まる。昔は1時間以上かけて全員自己紹介をしていたのが懐かしい。今年からメインスタッフが変わり、企画が大幅リニューアル。業界向け試写の数が減ったのは残念(だからこそ、いっぱい試写できたNORDISK PANORAMAに行ったのは大正解!)だったが、いわゆる私を含めたオールドスタイルの配給よりもフィルムメーカーが自分で作品をどうやって世界に発信していくかに重きがおかれている。
会場のBio REXからネットワーキングランチ会場のホテルRaddison REDまで、晴れていたらそんなに距離を感じないけど、雨の中の2往復は疲れる。ランチの時間を待っている間にロビーで会った人が「実は明日が監督した映画のプレミアなの!」と興奮気味に話してくれた。鶴がシベリアから佐渡とかに渡ってくるのは知っていたが、イランにも渡っているとは初めて聞いた。彼女がつくったのは、長年その鶴の保護活動(ハンターが捕って食用で売られるらしい。ひー!)をしていたイラン在住のフィンランド女性のドラマティックなドキュメンタリー。「プレミアに鶴の柄の着物が着たかったんだけど、気づくのが遅かった〜」と嘆いていたので、何かの役に立つかもと、ホテルで紙を貰って折り鶴の折り方を伝授。久しぶりすぎて途中忘れていたけど、とりあえず出来てホッとした。
1 on 1ミーティングでいくつかのプロジェクトの話を聞く間に、ちょうど会場のホテルpresidenttiから近かったので、Arkadia international bookshopへ。今日はIanの誕生日だからおめでとうが言いたい!と思ったら、奥さんのLiisaが微笑んで迎えてくれた。「誕生日だからこそ、家で子どもたちとゆっくりできるように今日は私が店番なの〜」とイイ話。彼ららしいな。Ianの絵と22歳の若き詩人がコラボした初の出版本がラス1で買えたのが嬉しかった。コロナ中にIanの牛の絵を買った話をしたら、のんびりマイペースな牛ってイイよねー!という話でしばらく盛り上がった。ずっと忙しくしている寅なIanとは全然違うと笑う。
恒例のディナーパーティーはいつものオシャレサウナ、ロウリュで。サーモンスープとアップルタルトのしょっぱい・甘い組み合わせ。昔はこんなカフェみたいなメニューじゃなかったからここにも予算削減を感じる。ここで思いがけず、面白い活動をしているNPOの人に会って製作中の映画の話を聞く。「時間があったらオフィスに遊びにおいでよ」と言ってもらったので、帰国前に行ければ行きたい。ここでいつものようにピッチに対する授賞式。呼ばれたのに出てこないから待っていると、サウナからホカホカ出てきて笑う。NORDISK PANORAMAの授賞ニュースを見ていても思ったが、私が注目していた作品はほぼ外し、関心なかったプロジェクトばかり受賞していて苦笑い。きっと何かズレてるんだなぁ。帰りのバスでピッチをした監督と話していたら、去年行ったアキ・カウリスマキ経営の映画館Kino LaikaがあるKarkkilaに住んでいるとか。「日本人がツアーで来てたよね〜」ともちろん知っていた。水着が必要なロウリュではなく、ホテルのサウナへ。サウナの中でフランス人のTVディストリビューターに会い「ここは映画が中心でTVコンテンツが少なくて収穫なかったわ〜」などのトーク。彼女が出てから、ひとりで満喫。
<9/27, Per>
サウナのおかげでぐっすり寝られて、ゆっくりめでホテルの朝ごはん。午前中は、何年も1on1ミーティングのマッチングをしてくれていたMartaがモデレーターのパネルに参加。適確な進行に笑いもとれて、Martaさすがだわー。テーマはゲーム業界との協働やトランスメディアをどう展開していくか。ゲームも展開していると全然知らなかったが、上手くいっているケースとしてネトフリの「エミリー、パリへ行く」を挙げていた。マリオみたいなゲームから映画の大成功はかなり珍しいケース。やはり映画業界とゲーム業界は関心が異なってお互いのことがよくわかっていないので協業が難しい。しかし、お互いに足りないところを補える関係でもあるので、やり方はあるはず。その後のネットワーキング・ランチで会った人たちとも「ゲーム業界との関わりは考える必要はあるけど、やっぱりまだ具体的に見えてこないよね〜」といった話に。この時に会ったロンドン在住イタリア人バイヤー、エストニアの女優、スウェーデンのフィルムメーカーたちの話がそれぞれ面白すぎて(北欧の環境意識の高さに驚愕するイタリア人とか)、ダラダラとコーヒータイム。それから、ホテルから近い映画館で昨日会った監督の映画がやっていたので観に行った。初日を迎えた喜びはよくわかるので、分かち合いたいと思った。偶然にもその直後に監督から英語字幕のリンクが届き、不明だったところをフォローできた。美しくて本当に良い映画だったので、フィンランド人の友人たちにオススメした。
<9/28, Lau>
この10日くらい、ほぼ毎日「Nice to meet you! 」と言い続け、初対面の人としか会っていなかったので、ものすごく疲れた。今日は気心が知れたフィンランド人の友人とランチ、ヘルシンキ在住日本人の友人たちとディナーだったので、旅の報告も含め、存分に喋ってすっきり。日本語も久しぶりで頭が混乱したけど、ま、戻るのは早いもの。「何やってるんですか〜」とツッコミ入れられながらも、帰国前に話せる人たちがいるのはホントありがたい。
<9/29, Sun>
ヘルシンキに戻ってきてから、青空を見ていなかったが久しぶりに気持ちが良い天気。ただもう10-12℃くらいなので寒い!近所のフリマを見て回ったりしながら散歩して、1年ぶりにコロンビア人の友人一家と再会。双子ちゃんたちが一段と大きくなっていて、1年の成果を目の当たりにするとオソロシイ。お土産交換をしたら、日本語のサウナ本を貰ってびっくり。彼らの近所のUUSI SAUNAでわざわざ買ってくれたらしい。また今年も行き損ねたので、来年こそ!
今月ヘルシンキの工場跡地に新しい映画館Kino Konepajaが出来たので、映画祭最終日の今日、時間で選んで観に行った。アイルランド映画の "September Says"。今年のカンヌ「ある視点」リストにあったらしく、これまでずっと観てきた北欧の映画とは全く違うテイストで新鮮だった。カウリスマキっぽいカラーのロビーに、ビビットなブルーのソファーの座りごごちが良い場内。こういうタイプの映画館が増えているなぁ。ミニシアターなサイズだけれど、上映しているのはメジャー映画が多く、来週からは『JOKER』続編がメインのよう。
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