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フリーランス映画配給者として想うこと。

新卒から独立系配給会社などで20年以上働き続け、2013年にフリーランスの映画配給者となった。映画配給業界に長く身をおく者として、この2020年の新型コロナウィルス禍が業界にパラダイムシフトをもたらすことを、期待と不安をもって臨んでいく覚悟を決め、その記録としてnoteを始めることとする。

この週末、ミニシアターまわりに動きがあった。

3/30(月)にnoteに掲載された名古屋シネマスコーレさんの取材記事 から端を発した。

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4/3(金)報道ステーションで【文化の灯消える 名物映画館の現状】として報道された。どちらも自分のSNS映画関係者界隈ではバズっていた。そして、4/4(土)にアップリンク浅井さんが現状を訴えた「もう死ぬ」ツイートがバズった。

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これは自分のSNS映画関係者以外でもバズっていた。浅井さんが支援のひとつとして訴えたアップリンク・クラウドへのリンクを貼った投稿がSNSで散見された。私に「あれは支援した方がいいのか?」とリアルに問い合わせもあった。また、入江悠監督が「全国ミニシアターを応援したい/各劇場への支援方法」をブログに掲載した。各ミニシアターHP等へのリンクと募集内容が書かれていて、どのメディアよりも早く支援についてまとめて告知したのではないだろうか。

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さらに今日5日(日)、「ミニシアター支援のためのクラウドファンディングを準備してます」と、深田晃司監督・濱口亮介監督を発起人とするミニシアターエイドが立ち上がった。「映画の多様性を絶やしてはいけない」という発起人ふたりのステートメントは、ぐっとくる。作り手である監督たちが声を上げたところが意味深い。

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               ※「クランクイン!」4/13掲載より

このような動きに、私のような弱小フリーランス配給者の映画でも、いつも上映してくれるミニシアターの支配人や編成担当の人たちの顔が浮かんで、胸が熱くなる。しかし、その半面、複雑な気持ちにもなる。

映画館はいいな。支援を申し出てくれる人がいるんだから。

映画がどういう経緯で映画館で上映されているのか、恐らく知らない人の方が大多数だろう。映画は製作されたら、すぐにそのまま映画館で上映される訳ではない。その間には、必ず配給者がいる(製作者・配給者・興行者=映画館が同系列の会社であることもある。東宝・松竹・東映といった大手がそうだが、その中でも配給者はいる)。配給者は映画を買付/出資して、日本国内で配給する権利を取得し、映画を観客に届けるために「商品化」する。日本語字幕制作、ポスターや予告編制作、プレミア試写会等のイベント開催といった制作・宣伝をすることで、映画を「商品」にしていく。その費用は配給者と出資者が負担する。そして、映画が映画館で上映されると、観客が支払う鑑賞料金は興行収入となるが、映画館と配給者の興行収入の配分比率は多くの場合が半々である。つまり、現状のように映画館で興行収入があげられないとき、その痛みの半分は配給者が担っている。それは知られていない現実である。映画を観るとき、映画館のことは意識するが、配給者を意識することは殆どの場合、ないだろう。映画本編の前にちらりと映る配給者のロゴを気にかける人はどれだけいるか。それほど、配給者は観客から「見えづらい存在」なのである。

年に1本しか配給しない弱小配給者である私は、たまたま、この時期に配給する作品がなかった。しかし、まわりからは様々な声が聞こえてきている。

「直前に公開延期になった。いつ公開できるのか、全く決まってない」「監督や俳優の来日プロモーションがなくなった」「マスコミ試写会が中止になった」「公開はしたけど、初日の土曜から休館になった」「公開に合わせて宣伝費を使い切ったから、延期になったところでどう捻出するのか」「上映できる映画が少ないから、公開中の映画に映画館から上映依頼がたくさん来る。観客が少ないとわかっているのに、上映素材やパンフレットを送るのは切ない」

この出口の見えない不安を映画館と分かち合いながら、このまま配給者はどうすれば生き残っていけるのか。いつまでも「見えづらい存在」でいいのか。特に独立系の中小規模配給者は生き残る術を考え、迅速に行動していくしかない。何ができるのか、何をやるべきか。

#映画 #映画配給 #配給者 #フリーランス #映画館 #ミニシアター #公開延期 #新型コロナはパラダイムシフトを起こす  

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